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- エッセー作品「俺、やばいかも」上道弘美さん
「家族」をテーマにしたエッセーの書き方を、エッセイストの青木奈緖さんに教わるハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から青木さんが選んだエッセーをご紹介します。上道弘美さんの作品「俺、やばいかも」と青木さんの講評です。
「俺、やばいかも」
「俺、やばいかも……」
「えっ、何だったの? コロナ?」
「ちがう、もっと悪い」
「肺炎?」
「もっと悪い」
「えっ! 何?」
咳が続いていたパートナーから、「肺がんかも」と電話で告げられました。
「ウォッホン、ウォッホン」と吠えるような咳が気になり、かかりつけ医への受診を勧めたのは私です。
仕事の都合をつけて早めの受診をしてくれたのは良かったけど、彼にとってもまさかの検査結果だったようです。
動転した様子もみせず、いつもの声色で報告してきた彼の心中はいかばかりか……。
胸が締めつけられる思いで、「ウソでしょ」と返すのが精一杯でした。
かかりつけ医がすぐに紹介状を書き、近くの総合病院に受診の予約を入れてくれたそうです。
さまざまな検査の後、肺腺がんステージⅣだと告知を受けた彼は、かすれた声で「俺、レベル4(フォー)だから」とポツリと一言。
ゲーム好きの彼らしい報告でした。
私と彼は14年の付き合いになりますが、彼の意向で入籍していません。
しかし、生涯のパートナーと約束しているから、お互いに体調を気遣ってきました。
タバコをやめてと懇願したこともあります。
彼は私より14歳年下の49歳です。
がんを患うには、まだ若い。
私が代わりになれば良かったのにと、思わずにはいられません。
若いだけに、彼のがんは進行が早いのです。
昨年5月に受けた健康診断では、レントゲンに異常はなかったと言います。
それから8ヵ月。CT画像で右肺上葉に認めた腫瘍は11センチと大きいものでした。
もちろん、腫瘍マーカーも高値を示していたそうです。
初診日から1ヵ月を経た2月22日にようやく入院。
24日から抗がん剤治療が始まりました。
併用する免疫チェックポイント阻害剤共に、効果を発揮してくれますように。
この先不安だらけですが、彼をがんに奪われてなるものかと、闘志むき出しで闘病生活を支えていく覚悟です。
青木奈緖さんからひとこと
落ち着いてエッセーなど書いていられないご心境でしょうに、よくぞこれだけ完成度の高い作品をお書きくださいました。パートナーの病気は誰の身にも起き得ることですから、きっと多くの方に共感して頂けるのではないかと思います。
この作品には多くの「伝聞」表現があり、重複しないようにうまく工夫されています。必ずしも必要でない箇所は、いっそ省略してしまうのも一案です。
ハルメクの通信制エッセー講座とは?
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回家族の思い出をエッセーに書き、講師で随筆家の青木奈緖さんから添削やアドバイスを受けます。講座の受講期間は半年間。
ハルメク365では、青木先生が選んだ作品と解説動画をどなたでもご覧になってお楽しみいただけます(毎月25日更新予定)。
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