専門家監修│更年期女性は注意したい手指の痛み

指がズキズキ痛い原因は?病気・ケガ一覧と対処法

森大祐
監修者
京都下鴨病院
森大祐

公開日:2022.07.07

更新日:2023.07.13

更年期以降の女性は特に注意したい、手指の病気やケガ。ちょっと痛むかも……を放置していませんか? 手指の酷使が原因となった一時的な痛みではないかもしれません。ズキズキ痛の原因と考えられる病気やケガ、注意点や対処法を専門家監修のもと解説します。

監修者プロフィール:森大祐さん

森大祐さん

日本整形外科学会認定整形外科専門医。関西医科大学卒業後、京都大学整形外科に入局。脊椎、上肢疾患の臨床研究をおこない、脊椎、手関節、肘、肩関節に精通する。その後米国トーマスジェファーソン大学で人工肩関節の臨床研究を主な目的に留学。京都下鴨病院で肩関節外来を担当し、脊椎機能の重要性を唱えている。

手指の構造と痛みが生じる仕組み

手は27個の骨と、腱、腱鞘、神経などが複雑に入り組み構成されています。骨と筋肉を結ぶ腱が引っ張られることで、骨や関節が動く仕組みです。そして、腱が骨から離れないように腱鞘が覆っています。

手指を使い過ぎると、腱と腱鞘がこすれて炎症が起こって痛みを生じたり、親指の付け根の筋肉が細く痩せたり、神経が圧迫されて痺れが出ることがあります。

また、関節リウマチを発症すると、指の関節に痛みやこわばりが起こることがあります。

手指に痛みはないものの、痺れだけがある場合は脳卒中や糖尿病、頸椎症や頸椎症性神経根症など首の病気の場合もあるため、注意が必要です。

指がズキズキ痛い!原因となる病気やケガ

指がズキズキ痛い!原因となる病気やケガ

指がズキズキと痛む場合、手指の酷使が原因となった一時的な痛みではなく、病気やケガの可能性も考えられます。

ここからは、指がズキズキ痛む場合に考えられる病気やケガについてご紹介します。

腱鞘炎(ばね指)

腱鞘炎とは、腱鞘に炎症が起こる病気のことです。指のつけ根に発症する腱鞘炎を「ばね指」、手首に発症する腱鞘炎を「ドケルバン病」といいます。

ばね指では、指の付け根にじんじんとした痛みが生じたり、腫れや熱感が起こります。

指に痛みや腫れがあり、指を伸ばそうとしたときに引っかかって「カクン」と跳ね返るようになる場合は、ばね指の可能性があるでしょう。進行すると、自力で指を伸ばせなくなってしまう可能性があります。

基本的には安静にして治療しますが、我慢できない痛みがある場合は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を使用することもあります。

変形性関節症

変形性関節症とは、指と指の間の軟骨がすり減ったことが原因で起きる病気のこと。50歳以降の女性に多く見られ、頻度の多い疾患です。

指の第一関節の変形性関節症はヘバーデン結節、第二関節の変形性関節症はブシャール結節と呼ばれます。

ヘバーデン結節・ブシャール結節

ヘバーデン結節とは、手指の第一関節の骨と骨の間の軟骨がすり減って、痛みや腫れ、変形が起こる疾患です。年齢が高いほどヘバーデン結節にかかる人が多くなり、推定患者数は3000万人ともいわれています。

ヘバーデン結節になるのは基本的に人差し指、中指、薬指、小指で、親指が一番頻度は低いです。

ヘバーデン結節のような症状が手指の第二関節に起こる疾患を、ブシャール結節といいます。ヘバーデン結節・ブシャール結節では、骨の変形が進むと爪側に粘液嚢腫(ミューカスシスト)と呼ばれる出っ張りができることがあります。

ヘバーデン結節・ブシャール結節ができる原因は不明といわれているものの、一般的には40歳以上の女性に多く見られ、近年では女性ホルモンとの関連性が注目されています。

遺伝性についてはっきりとはわかっていませんが、母や祖母がヘバーデン結節・ブシャール結節の場合、同じような体質になる可能性も考え、気になる場合は早めに病院に足を運んで検査するといいでしょう。

突き指

突き指とは、物で指を突いたときに起こる外傷の総称です。単に突き指といっても程度はさまざまで、軽い捻挫から関節が外れかかった亜脱臼、靭帯の損傷までが含まれます。

「突き指は引っ張れば大丈夫」というのは俗説であり、下手に刺激せず、慎重に経過を見ることが大切です。

突き指の中でも、第一関節が曲がり、自力で伸ばせない状態のことを槌指(ついし、つちゆび)といいます。

脱臼

指の関節も脱臼することがあり、一度脱臼したことのある人は、再度繰り返す可能性があります。指に痛みがあり、普通では考えられない方向に曲がっている場合は、脱臼や骨折の可能性があるでしょう。

脱臼は、病院でずれた骨を正常な位置に戻す処置(整復)を行えば痛みが引くことが多いです。

骨折

指に衝撃が加わり、その後で指がズキズキ痛み腫れが見られる場合は、骨折の可能性が考えられます。骨が折れるだけではなく、ヒビや一部の欠け、骨のへこみも骨折に分類されます。

骨折の痛みに対しては抗炎症作用のある痛み止めが有効ですが、病院で適切な治療や処置を受ける必要があります。

骨折の可能性がある場合は、骨折した部分を箸や添え木などで固定して、病院を受診しましょう。

ガングリオン

ガングリオンとは、関節の周辺に良性の腫瘤(しゅりゅう)ができる疾患のこと。手を酷使すると腫瘤が大きくなることがあり、米粒ほどの大きさのものもあれば、ピンポン玉ほど大きくなることもあります。

多くの場合、強い痛みは起こらないものの、神経が圧迫されると痛みが起こることがあります。

爪周囲炎

爪周囲炎とは、爪の周囲に起こる感染症のことです。爪が伸びるときに皮膚を傷つけたり、深爪やささくれ、爪を噛む癖でできた傷から細菌が感染することで、炎症が起こります。

爪の周囲がズキズキ、チクチク痛んだり、腫れや発赤が起こることが特徴で、進行すると膿がたまることがあります。酷くなると、痛みで眠れなくなってしまうことも。

鎮痛剤を飲めば一時的に痛みが治まるものの、根本的な治療とはならないため早めに病院を受診することが大切です。

パルボウイルス関節炎

パルボウイルス関節炎とは、子どもがかかる「リンゴ病」と同じウイルスが原因で起こる感染症です。小さい子どもがいる母親がかかることが多い病気で、子どもの場合は発熱や頬がリンゴのように赤くなる症状が知られていますが、大人の場合は関節痛だけが現れます。

パルボウイルス関節炎の場合は、数週間ほどで自然に治癒します。

手根管症候群

手根管症候群は、手首の掌側(手のひら側)の中央で末梢神経(正中神経)が圧迫されることで、親指や人差し指、中指を中心として痛みや痺れが起きる病気です。痺れは薬指に出ることがあります。

原因は明らかになっていないものの、仕事やスポーツで日常的に手指を酷使している人や、更年期の女性に多く見られる疾患です。

関節リウマチ

関節リウマチは、免疫に異常が起こる自己免疫疾患の一つです。更年期頃の女性に多く、関節の痛みや腫れの他、朝の手指のこわばりの症状が見られます。

手指は関節リウマチで最初に痛みが出ることが多い部分です。何もしなくても痛い、2週間など痛みがずっと持続する、1本の指だけではなく複数の指が痛い、指の内部からズキズキする痛みを感じる場合は、病院で検査を受けるといいでしょう。

痛風

痛風は、関節にたまった尿酸が結晶化することで激しい痛みや腎機能障害を引き起こす病気です。足の親指の付け根に発症することが多いですが、手指や膝関節に起こることもあります。

神経障害(主に糖尿病性神経障害)

糖尿病などが原因となり、細い血管の血流が悪くなると、神経がダメージを受けることで、手の指先や脚の指先からビリビリ、ジンジンするような痛みを感じることがあります。

このような痛みは神経障害性疼痛と呼ばれ、専門的な治療が必要です。

乾癬性関節炎

乾癬性関節炎とは、乾癬と呼ばれる皮膚疾患に合併する病気で、乾癬を発症した人の10~15%に見られるといわれています。

関節炎が生じて痛みがでたり、関節が変形していく他、肘や頭、お尻などがカサカサする、湿疹が起こる、爪が黄色くボロボロになるなどの症状が見られた場合、乾癬性関節炎の可能性が考えられるでしょう。

強皮症

強皮症は皮膚が硬くなる病気の総称で、初期症状としては指の関節の痛み、むくみ、こわばり、レイノー現象(指先や紫色や白色に変わる減少)が見られます。

指先や足先など末端から皮膚が硬くなり始め、その後、体の中心に向かって硬くなっていくことが多いです。

病院に行く目安は?指がズキズキ痛む場合は何科がいい?

病院に行く目安は?指がズキズキ痛む場合は何科がいい?

病院を受診するかどうかは、痛みの強さや症状を繰り返すかどうかを目安に判断するといいでしょう。

  • すぐに病院を受診した方がいいケース
    指を動かすのが困難なほど痛む場合。突き指やケガなど、原因がはっきりわかっており痛みが強い場合など
  • 病院の診療時間に受診するといいケース
    日常生活に支障はないものの慢性的な痛みがある、指を動かすと引っかかったような感じがする、痛む指が腫れている、指を動かしたときに痛みが強くなる場合など
  • 様子を見つつ、場合によっては受診した方がいいケース
    一時的な痛みで、その後繰り返すこともない場合

軽い打撲や腱の損傷の場合、2〜3日ほどで痛みが引いてくるのがほとんどです。痛み止めを長期間服用しなければいけないほど痛む場合は何らかの病気の可能性もあるため、なるべく早めに病院を受診する必要があります。

何科を受診したらいいか?ということについてですが、指が傷む場合はまず整形外科を受診するといいでしょう。もしも関節リウマチや糖尿病性神経障害の可能性が考えられる場合も、紹介状を書いてもらえます。

また、手の病気やケガに関連する病気を診療する「手外科(てげか)」もあります。手外科を専門的に学んだ手外科専門医も存在するため、なかなか手指の痛みや変形などの症状がよくならない場合は、手外科専門医を受診してみてもいいかもしれません。

手外科専門医を探したい場合は、一般社団法人 日本手外科学会のホームページに全国の手外科専門医の氏名と勤務先が掲載されているため、ここから近くの手外科専門医を探すといいでしょう。

指が痛いときの日常生活での注意点と対処法

指が痛いときの日常生活での注意点と対処法

ここからは、指がズキズキ痛いときの日常生活での注意点と対処法をご紹介します。

指を使わずに安静にする

指を使い過ぎると、腱や筋肉が疲労や損傷を起こし、痛みが生じます。治療せずそのまま使い続けると、痛みが悪化したり、腱鞘炎などの病気を発症する可能性も。

タイピングなどのキーボード操作や、指先を使う職業など、仕事でどうしても手指を使わなければいけない場合は、医師に相談してみましょう。

スマートフォンの持ち方を見直す

スマートフォンを持つときに、小指を使って支えているという人は多いようです。この持ち方をしていると小指に負荷がかかり続け、痛みや小指の変形、痺れが起こることがあります。

スマートフォンの持ち方が影響していると考えられる場合、手のひら全体でスマートフォンを支えるような持ち方に変えてみましょう。

ズキズキ痛む指、つらい場合は早めに病院で検査を

指がズキズキ痛む原因には、指の使い過ぎの他、病気やケガが考えられます。

病気ではない場合も、痛みを放置すると悪化して腱鞘炎など関節の病気につながることがあるため、注意が必要です。

更年期以降の女性は、手指に痛みや変形が起こる病気が多く見られます。気になる症状があれば早めに病院を受診すると、悪化を防ぎ、早い段階で適切な治療を受けられるでしょう。

※この記事は2022年7月の記事を再編集をして掲載しています。


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