小さい頃からいつも本がそばに

学生時代に帰ったかのような錯覚を感じるほどの楽しさ

公開日:2018.11.03

幼少の頃から読書が大好きで、定期的に行っている読書会についてや、文学にちなんだ場所巡り、おすすめの本について紹介。今回は、読書会の様子をご紹介。家庭の枠を出て自分の言葉で語れるこの場が、とても楽しい時間となりました。

初めての読書会の中で

読書会として4人が初めて顔を合わせたのは1980年5月のさわやかな1日でした。課題図書は「モッキングバードのいる町」、作品は、アメリカの田舎町に住む中年にさしかかった日本人妻の望郷の想いがテーマです(前回参照)。

ヒロイン圭子と違って、私たちは日本に暮らしているから置かれている境遇は雲泥の差があります。けれど、異邦人の妻として「失われていく時間」に対して持つ圭子の焦りの気持ちは主婦としての年月を費やしてきた私たちにも共通する心情がありました。また圭子の望郷の想いは日本にいながら出郷の民となっている私たちにも、程度の差はあれ一つの身近な問題でもありました。そんな点で作品の中に入ってゆきやすく、会話が盛り上がり初回とも思えない快い刺激に満たされた集まりとなりました。

4人がそれぞれに来月もよろしく、楽しみやね、と言いながら帰途につきました。

本は一人でも読めるものです。けれども、同じ本を読んで集まり話し合ってみると、一人では読み切れない世界に目が開かれます。

会を始めるときに、先生をお招きしないで、課題図書の中から得た各自の感動―好きなところ、嫌いなところなど、どんな感想でもよいから自分の言葉で話しましょう。とまず決めました。全く違う意見が出るときもあり、人ってそれぞれ違うのやなぁと思ったものです。

 

あかね会の最低の決まりごと

1番年長の方が本を読むときのリーダー、というか、案内人の役をしてくださっていたが、一人の人に負担をかけるのも大変だと、いつの頃からか当番を決めて課題図書に関するレジメを作ることとなり、しばらく続きました。

レジメは当番さんの一任で好きなように作ればよく、作家の年表を作って説明をされる人、作品が賞をもらった時のエピソードを調べる人と様々でした。私はいつも読後感を書こうとしましたが、なかなか難しかったです。でもこの当番の時読んだ本は今でも覚えています。何度も何度も読みました。今はインターネットでなんでも調べられるけれど、昔は図書館へ行って調べたものでした。

1年交代で2人の当番さんを決めて会計(と言っても月500円の会費)を集めていたのかなぁ。会場費の支払いと小さなお茶菓子を毎月買っていきました。レジメを作ることと、会計、それと年間で読んだ本のまとめが当番さんの仕事でした。

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家庭の枠を出て、自分の言葉で語る

家庭という枠の外で一個人に戻り、自分の言葉で自分の想いを話し合えるという雰囲気はまるで学生時代に帰ったかのような錯覚を感じるほど楽しいものでした。

回を重ねるほどに会員が増えて1年目の終わりには8名となりました。昭和1桁の人が1人に、あとは2桁と言っても10年代の人たちです。現在では初めのころからのメンバーは3名しか残っていません。

基本的に課題図書は文庫になっている本の中から選びましょうと一応決めていました。各自が読みたい本を1冊ずつ出して、話し合いの中から来月の課題図書を決めていました。

下記は1980年5月の第1回の読書会から、その1年に読んだ本です。

・モッキングバードのいる町     森 禮子

・斜陽               太宰 治

・雪国               川端康成

・木精               北 杜夫

・正妻               大原冨枝

・仮面の告白            三島由紀夫

・越前竹人形            水上 勉

・海と毒薬             遠藤周作

 

この表を見ながら、この本は会員の中の誰が提案した本なのかわかります。長い年月なかで時々思ったものです、この本ならば、彼女だったらどんな読み方をするのだろうかとかこの本はあの彼女がきっと好きだろうなぁと。

そして、あかね会発足から1年を迎えた頃、記念として文集を作りましょうとの意見が出されました。次は文集1号の誕生のいきさつを書いてみたく思います。

 

久田かえこ

好きなことは読書。本は小さい頃からいつもわたしのそばにありました。引っ込み思案な点がありますが、裏を返せば奥ゆかしさにつながるのでしょうか。4人姉妹の長女で、和歌山の実家で母を見てくれていた一回り下の妹が60歳で他界、その時の寂しさを紛らわせてくれたのは数々の本とそれを通して出会った仲間たちです。

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