子どもは遊びの天才

公開日:2019年08月20日

遠い日の思い出

夏の思い出限りなく

花やリボン、シナモンなどのスパイスを駆使して作られるブリオンフラワーの創作過程や、作品に込められた思いなどについてでんさんが紹介していきます。今回は少しブリオンから離れて、子供時代の思い出を語ります。

子どもは遊びの天才

山の中腹にある私達の村は17軒程が集まる小さな村でした。子どもは1歳上と1歳下に女の子が1人ずつと7人の男の子達。
1年で1番暑い8月は夏休み真最中。川遊び、蝉とり、蛍、線香花火……時間が足りないほど夢中で遊んでいました。

夏といえど朝は爽やかに涼しかったです、10時頃からじわじわと温度が上がるものの、30℃を越えることはまれでした。

「30℃を越えたら川遊びにいっていいよ」という母の言葉に、昼食後は温度計とにらめっこ。28℃から残り2℃がなかなか上がらず、息を吹き掛け30℃まで水銀を上げ「上がったー!」と喜んで飛び出して行きます。自己申告だったのでわざわざ30℃まで上げることもなかったのですが、そこは子どもですからねぇ……川まで子どもの足で数十分かけ山をかけ降ります。

当時すでにダム工事が始まっていて、砂利をすくった後の深い場所が所々にありました。

川遊びは魚釣り、石拾い、岩の上からの飛び込みが主なものでした。

魚釣りは篠に縫い糸をつけ、釣り針をつけた簡単な物で行います。ハヤ等が釣ました。川の中の石を持ち上げ、裏を返すとカワゲラ、カゲロウのような水性昆虫の幼虫がいて、この幼虫を餌に釣るのです。竿の動かしかたに一寸したコツがあり、川に糸を入れたら、竿を前後にゆっくり動かします。釣たら口から釣り針をはずし、川の端に石で堰を作り、その中で泳がせておきます。

あれ? あの魚達は家に持ち帰らなかったから、結局堰が崩れ川に戻ったのでしょう。男の子達は皆上手で、なかなか川から上がらず、唇が紫色になっても釣っていました。女の子はすぐ飽きて石拾いです。川の流れで丸くなったきれいな石が沢山あって、宝石を見つけるように楽しかったです。

岩の上からの飛び込みはスリル満点。下から見上げるとさほど高さを感じない岩も、いざ上に乗り飛び降りようと下を見ると、恐怖心がわきます。3m弱位の高さが、まるで屋根からでも飛び降りるような感覚。1度できたら何でもないことのように飛び降りられるのですが、最初の一歩がなかなか出ません。初めてのジャンプはとても長く感じられ息が止まるようでした。

遊び疲れると洋服を着替え、坂を登って帰ります。
今思うと、川はとても離れた場所にあるのに、大人が誰も付き添わず、しかもダム工事の後の深みまであるのに子ども達だけで遊びに行かせた、あの頃の生活とは、たいした怪我もせず幸いだったのか、皆逞しかったのか……ワイルドだったなぁと感心します。その川も今はダムの下で、静かに眠っています。

蝉とりは虫取網や虫かご等無い時代でしたから何でも手作りです。針金で丸い輪を作り元をねじって細い竹に刺します。朝早くの蜘蛛の糸を絡めとります(朝早くの蜘蛛の糸は粘りがあって蝉を捕まえるのに適しています)。ひしかごは麦わらで編みます。みんな父が作ってくれました。

キュウリをとりに畑に行けば、コオロギ、花にはアゲハチョウ、カブトムシ、クワガタ、カナブン、アブ、蜂、ヘビ、蜥蜴、蛍……蛍は蚊帳の中に入れますが、光を楽しむわけでもなくすぐ眠ってしまいます。蚊取り線香の香りを懐かしく思い出します。眠るまで祖母がうちわであおいでいてくれました。私達より祖母が蛍の光を楽しんでいたのかもしれません。

不思議な体験

そんなある夜ふと目が覚めると、襖にぼんやりとした静かな小さな丸いような光を見つけました。周りは雨戸がしまっていたので、暗闇の中、目を凝らしていると少しずつ部屋の様子もわかってきました。ぐるっと見渡しても光のもとは見つかりません。何だろうと思いながら見ていたのですが、いつの間にか眠ってしまいました。朝、目覚めた時にはもう光はありませんでした。

幾日かはまた光が見えるかと頑張って起きていたのですが、いつの間にか眠ってしまい、とうとう再びあの光を見ることはなかったです。

光のことはすっかり忘れていたある日、知人の死を知らされました。光の話を聞いて大人達は「きっと会いに来たのだね」といいました。私には解りませんが、その光は心細そうなか弱い光だと記憶しています。こんな話信じられますか? 私にもよく解らない、不思議な夢の中のような体験をした夏でした。

でん
でん

ドイツ、オーストリアで生まれた、永い時を経て作り続けられているブリオンフラワーと言う作品作りに夢中になっている、62歳の主婦です。製作材料の1つにハーブを使うので、香りに癒され、美しいブリオンの光に魅了され、可憐で、しかし難しく一筋縄ではいかない不思議な魅力をお伝えできればと思います。

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