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- 人生相談:傲慢な後輩…人間関係が原因で仕事が嫌いに
読者のお悩みに専門家が答えるQ&A連載。今回は71歳女性の「職場に傍若無人な振る舞いをする後輩が原因で、好きだった仕事が嫌いになってきた」というに悩みに、仏教の教えをわかりやすく説いて「穏やかな心」へ導く、住職・名取芳彦さんが回答します。
71歳女性の「職場での人間関係」の相談
私は71歳ですが、まだ現役で働いています。その職場で、傍若無人な振る舞いをする後輩に困っています。
その後輩は、いつでも自分のやり方が正しく、他の人のやり方を認めようとしません。誤解や思い込みの中傷が多いのですが、語気が強いので、こちらの言い分を主張する気力も無くなってしまいます。
できるだけ、その後輩と接触しないようにしているのですが、私自身を含め、周りの人に対するその後輩の態度が原因で、好きだったはずの仕事も嫌になってきてしまいました。
その後輩と、どのように折り合いをつけて付き合っていけばいいのか……。どうしたら心が乱されないようになるのか……。ぜひ教えていただきたいです。
(71歳女性・T・Yさん)
名取さんの回答:「それぞれの正攻法」があることを説明してあげて
まず最初に、後輩の困った振る舞いについて考えてみましょう。単に“傲慢(ごうまん)な人”として、済ませてしまってはもったいないと思うのです。
職場で長い経験のあるT・Yさんは「こういうこときはこうするとうまくいく」「こんなときはこうしてはダメ」など、物事に対するご自分のやり方があるでしょう。それらは、ご自身や他人の失敗から学んだり、自ら試行錯誤したりしてたどり着いた、間違いのない、いわばT・Yさんの“正攻法”です。
年齢を重ねると、人はそれぞれ自分の正攻法を身につけます。そして、自分の正攻法と違うやり方を目の前でされると「そうじゃなくて」と、つい言いたくなります。自分と違うやり方でもうまくいくかもしれないのですが、少なくとも自分が失敗したことのない確実な方法を提案したくなるのです。
こうして、世に言う「いちいちうるさい人」があちこちで誕生することになります。
後輩は(語気が強いことも含めて)自分の正攻法を貫こうとしているのです。うまくいくかもしれない他のやり方を自分で試してみたり、人にさせてあげたりする心の余裕がないのでしょう。
こうした「それぞれの正攻法」について、後輩にタイミングよく説明してあげると、「違うやり方でもいいのかもしれない」と少しは思い、反省して、語気も和らぐかもしれません。
いい人間関係を築くための最終手段は3つ!
現在はその後輩と接触しないようにしていらっしゃるとのこと。とても賢明な判断だと思います。物理的に距離を取ったり、精神的にも最低限の会話だけをしたりすることで、T・Yさんが受けるストレスは少なくて済みます。
しかし、それでは気の毒だとお思いなら、後輩のいいところを褒めて差し上げてください。後輩の傍若無人な振る舞いは、過去のトラウマや私生活でのうっぷんが原因かもしれません。褒めたり、感謝したりする言葉が、後輩の固く閉じた心を開く可能性があります。
それでも後輩のやり方、生き方が変わらないようなら、残る手段は3つです。
- 上司に直訴して、後輩に態度をあらためてもらうか、部署を変えてもらうか、辞めてもらう
- T・Yさんが別の部署に変えてもらうか、辞める
- 現在の関係性のまま、後輩を「かわいそうな人だ」と憐れむ
3つ目の方法は、T・Yさんが人格的に後輩より上に立つようなものですから、自分が傲慢になったようで嫌かもしれません。しかし、嫌な相手、苦手な相手を許容する手段として許される対応だと思います。私も過去に一度使ったことがある奥の手です。
どうぞ、後輩を反面教師として、いい人間関係を築いて現役生活を充実させてください。そして、そんなT・Yさんの後ろ姿を、職場の若い人たちに見せて、真似してもらってください。
回答者プロフィール:名取芳彦さん
なとり・ほうげん 1958(昭和33)年、東京都生まれ。元結不動・密蔵院住職。真言宗豊山派布教研究所所長。豊山流大師講(ご詠歌)詠匠。写仏、ご詠歌、法話・読経、講演などを通し幅広い布教活動を行う。日常を仏教で“加減乗除”する切り口は好評。『感性をみがく練習』(幻冬舎刊)『心が晴れる智恵』(清流出版)『気にしない練習』(三笠書房)、『心がすっきりかるくなる般若心経』(永岡書店)など、著書多数。
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