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- 人生相談:元夫が自死、娘は不登校…楽に生きるには?
読者のお悩みに専門家が答えるQ&A連載。今回は52歳女性の「離婚後に元夫が自死、娘が不登校に…娘と二人、もっと生きやすく、楽に生きたい……」という相談に、仏教の教えをわかりやすく説いて「穏やかな心」へ導く、住職・名取芳彦さんが回答。
52歳女性の「もっと生きやすく、楽に生きたい」という相談
7年前に離婚し、今年高校を卒業した娘と二人暮らしです。一昨年の秋、ずっと養育費を滞納していた元夫が自害したと、義父母から連絡がありました。
その後、元夫の借金返済の放棄のための手続きなどの対応に追われ、気付けば娘は学校には行かず、円形脱毛症になっていました。娘は離婚後の私の態度などが原因で人間不信になり、自己肯定感も低くなり、今では私ともほぼほぼ口をきかなくなってしまい「学校を辞める!」の一点張りです。
私自身、両親との関係も悪く友達との付き合いも浅いので、いつも孤独感にさいなまれています。
どうしたら、もっと生きやすく、楽に生きられるのでしょうか……。
(52歳女性・なおさん)
名取さんの回答:お手本を見つけて真似することが第一歩
この10年ほどの間に、なおさんには想定外のことが次々に起こっていらっしゃるのですね。
仲のいい家族……二人三脚の幸せな結婚生活……そしてまた、あらたに幸せになるための離婚。加えて、健やかなお嬢さんの成長や仲良し母娘……なおさんが思い描いていた未来予想図は、過酷なまでの現実に揉みくちゃにされてしまっているかのようです。
そして今、「もっと生きやすく、楽に生きられる」予想図を描こうとしていらっしゃるのでしょう。
元夫の自死、そして彼の借金返済放棄手続きなどになおさんが翻弄されている間、人生経験が少ないお嬢さんは大きなストレスを抱えていらっしゃったようです。問題解決の知恵も発揮されないまま途方にくれ、自棄になっているのが今現在かもしれません。
そんなときお嬢さんに対して、もっとも身近にいるなおさんができるのは“いいお手本を見せてあげる”ことでしょう。そのお手本こそ、なおさんが書いている「生きやすく、楽に生きている」なおさんの姿だと思います。
まずやるべきことはお嬢さんへの謝罪「3ステップ」
「娘は離婚後の私の態度などが原因で……」とお書きなになっているくらいですから、お嬢さんを追いこんでしまったなおさんの態度について、心当たりがおありなのでしょう。
そうであれば、まず素直に謝ることをおすすめします。
失敗して他人に迷惑をかけたときに、やることはシンプルです。
- 謝る
- 「これから気を付けます」と宣言する
- それを態度で見せる
離婚後のなおさんの態度が原因でお嬢さんが今のようになってしまったと思うなら、なおさんがまず取り組むのはこの3つのステップしかないように思われます。
この3つをやればお嬢さんが心を開き、なおさんを許し、仲良し母娘になれるかどうかはわかりません。それはお嬢さん自身が解決すべき問題です。なおさんは、まずは行動を起こし、お嬢さんの反応を待ってみましょう。
私の好きな言葉に
私のことをわかってくれない……そう思っている私は、どれだけ他の人をわかろうとしているだろう
という言葉があります。
なおさんはなおさんなり、お嬢さんはお嬢さんなりに言い分があって「(こんなにつらい思いをしている)私のことをわかってくれない」と思っているかもしれません。
しかし、自分のことをわかってほしいと思うなら、自分が他の人のことをどれだけ理解しようとしているかを胸に問いたいものです。
「幸せな結婚が破綻し母子家庭になり、養育さえ払ってもらえず、あげくの果てに自ら命を絶った元夫についてどのように娘に伝えればいいのか……」など、悩みに悩んできたなおさんの心情を、人生経験の少ないお嬢さんが理解し、共感するのは難しいでしょう。
ここは、母親であるなおさんがお嬢さんの心情を深く理解しようと努力するのが先決です。それができたとき、「お母さんも大変だよね」とお嬢さんがなおさんに共感する心の余裕が生まれてくるのを期待したいと思います。
失敗したときにやった方がいい3つのステップと、お嬢さんの心情を理解しようとするのは、「もっと生きやすく、楽に生きられる」ための前提条件のような気がしてなりません。それがこの約10年間にお嬢さんに与えた精神的負担に対する代償かもしれません。
ご自身が「楽しく生きる」ために「人生の見本」を探して!
そこで、「もっと生きやすく、楽に生きられる」ために、なおさんがやった方がいいと思うのは“生きやすそうに、楽そうに生きている人を周囲に探す”ことです。
お嬢さんが、前向きで楽に生きられるようになったなおさんをお手本にして精神的な安定を取り戻すのと同じように、なおさんにとってのお手本を探して、その人の真似をするのです。
真似するときのポイントは3つ
- その人の考え方
- その人の行動
- その人の言葉
どんな考え方をすれば、お手本の人のような行動ができ、言葉を発せられるようになるのかをなおさん自身が考えて、その真似をしてみるのです。その真似ができたとき、なおさんも楽に生きられるようになります。
中国に「鵠(こく)を刻(こく)して鶩(あひる)に類(るい)す」ということわざがあります。鵠は白鳥のことで、これを彫刻しようとすれば間違ってもパンダにはなりません。鵠にはならなくてもアヒル(鶩)くらいのものはできるというのです。
なおさんも自分の心と体と言葉を使って、ステキな人をお手本にして楽に生きる人を目指してみてください。なれなくても、近づくことはできます。
楽(らく)という字は「楽しい」とも読みます。楽に生きられるようになったなおさんが、お嬢さんと楽しく旅行できる日が一日も早くやってくることをお祈りしています。
回答者プロフィール:名取芳彦さん
なとり・ほうげん 1958(昭和33)年、東京都生まれ。元結不動・密蔵院住職。真言宗豊山派布教研究所所長。豊山流大師講(ご詠歌)詠匠。写仏、ご詠歌、法話・読経、講演などを通し幅広い布教活動を行う。日常を仏教で“加減乗除”する切り口は好評。『感性をみがく練習』(幻冬舎刊)『心が晴れる智恵』(清流出版)『気にしない練習』(三笠書房)、『心がすっきりかるくなる般若心経』(永岡書店)など、著書多数。
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