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- 人生相談:認知症の父…今後の両親のお金の管理が心配
読者のお悩みに専門家が答えるQ&A連載。今回は57歳女性の「一人っ子で独り身、親や自分の老後資金の管理方法について、今からできることを知りたい」という相談にファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんが回答します。
57歳女性の「両親の今後のお金の管理」についての相談
両親はかなり高齢で、父は認知症、母が父の介護をしている状況です。
母も父同様に認知症になってしまった場合のお金の管理や、これから必要な両親のためのお金のこと(介護費用や亡くなったときなど)を考えると不安しかありません。
私は独り身で、一人っ子なので、親のことも、自分のこともすべて一人でやらなければなりません。今からできるお金の準備について教えてください。
(57歳女性・マミさん)
畠中さんの回答:お母様の認知症に備えて「家族カード」の作成を
マミさんのように兄弟姉妹がいらっしゃらない場合は、ご両親の介護や亡き後の問題を一人で解決しなければならず、不安が尽きないことと思います。
お父様は認知症の診断を受けていらっしゃるとのことですので、お父様の預金を動かすためには、家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立てて、後見人の力を借りる必要があります。ですが、このあたりの情報は書かれていないので、マミさんがお父様の預金をどのように管理されているのかはわかりません。
そのため今回は、今後もし、お母様が認知症になられた場合に備える方法をご紹介します。
認知症を発症すると、本来は家族でも預金の引き出しができなくなります。キャッシュカードの暗証番号を知っているからと、家族が年金を引き出し続けるケースもありますが、本来はNGな行為です。そこでおすすめなのは、「家族カード」の作成です。
認知症になる前、つまり今のお母様であれば、マミさんと一緒に金融機関に出向き、家族カードの作成ができます。家族カードを作成しておくと、万が一、認知症を発症したとしても、マミさんがお母様の預金を引き出すことができます。
ただし家族カードは、すべての金融機関で発行しているわけではないので、利用している金融機関に「作成できるか」の確認をしてから出向いてください。
お母様の認知症に備えて「家族信託」の利用も検討
日々の生活費は家族カードで何とかなるとしても、万が一お母様が認知症になった後、家の売却などが必要になった場合は、家庭裁判所に申し立てをして、成年後見人を選任してもらう必要があります。
ただし、マミさん自身がお母様の後見人になろうとしても、一定額以上(おおむね1000万~1500万円程度以上、裁判所によっても異なる)の資産をお母様がお持ちだと、家族は後見人になれないのが一般的です。実際のところ、現在7~8割程度は、家族以外が後見人に選任されていると言われています。
家庭裁判所が家族以外を後見人に選任すると、その方に後見費用を支払うことになります。ちなみに家族が後見人になれた場合でも、裁判所に選任された成年後見監督人が付きますので、監督人に対する費用は発生します。
お母様が認知症を発症された場合は家を売却して、その資金を活用して施設などに住み替えてもらおうと考えるなら、「家族信託」を利用して、お母様が元気なうちに家の名義をマミさんに変更する方法があります。
成年後見人は、いったん選任すると、人を変えることはできても、やめることはできずに一生費用がかかり続けます。一方の家族信託は、契約を結ぶ際や家の売却時などに費用がかかるものの、一生かかり続けるわけではありません。
家族信託の仕組みにについては、ここで説明すると、とても長い説明になりますので、ネットで検索してみてください。たくさんの情報が、簡単に見つかるはずです。
自分の身元保証や死後事務委任は民間会社へ依頼
お母様に関係する手続きはマミさんが行うとして、マミさん自身が病気になったり、介護が必要になった場合の手続きについては、どのようにお考えでしょうか。
最近では、「おひとりさま」のために、入院時や施設入居時に保証人の役割を担ってくれたり、亡くなった後に発生するさまざまな手続きを引き受けてくれる会社が増えています。生きているあいだの「生前契約」と、亡くなった後の「死後事務」の契約を、民間会社と結ぶという方法です。
そのような会社を、ここでは「身元保証会社」と呼ぶことにしますが、身元保証会社では、入院時などの保証人の代わりになってくれるだけでなく、通院や買い物、旅行などの付き添い、施設の見学同行、手術時の病状説明の同席など、生活のさまざまな面でサポートしてくれます。
また生前にお葬式代を預けることで、お葬式の手配もしてくれます。甥御さんや姪御さんがいらっしゃらないことを考えますと、マミさんは生前契約だけではなく、死後事務に関しても、契約を結ぶことを検討されてはいかがでしょうか。
預り金の保管方法はしつこいくらい確認を
身元保証会社にかかる費用は、会社ごとにまちまちですが、申し込み後は、月々、あるいは年会費がかかるのが一般的です。身元保証会社を利用する際に重要なのは、お葬式代も含めると100万円を超えるお金を預けるため、預かり金をどのように保管・管理しているかのチェックです。
預り金の保管方法は、会社の経営とは分別した第三者機関を作って管理にしていたり、信託銀行に預けていたり、弁護士や司法書士などの専門家が別会社を作って管理していたりと、身元保証会社ごとにさまざまです。
少し前、日本最大級の身元保証会社が経営破綻し、預かり金の返還に問題が発生したことがあります。万が一、契約を結んだ後に経営が傾いたり、預かり金を会社運営に使われては大変です。
身元保証会社を選ぶ際は、それぞれのサービスにかかる費用を比べるとともに、預かり金の保管方法についても、しつこいくらいに説明を求めることをおすすめします。
回答者プロフィール:畠中雅子さん
はたなか・まさこ 1963(昭和38)年生まれ。ファイナンシャル・プランナー、CFP(R)。『お金のプロに相談してみた!息子、娘が中高年ひきこもりでもどうにかなるって本当ですか?』(時事通信社)他、著書は70冊以上。また「ミニチュアワールドと観光列車」に造詣が深くブログを開設している。
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