翻訳家・食野雅子さんが魅力をリポート

ターシャ・テューダーゆかりの地を訪ねる旅

公開日:2019.08.02

更新日:2022.08.18

絵本作家やガーデナーとして活躍し、没後10年以上たった今もなお、世界中で愛され続けるターシャ・テューダー。ターシャと親交の深かった翻訳家・食野雅子さんが、アメリカ・バーモント州のターシャの家を訪れた様子をリポートしてくださいました。

紅葉で真っ赤に染まったアメリカ・バーモント州の風景
紅葉で真っ赤に染まったアメリカ・バーモント州の風景

世界中で愛され続けるターシャ・テューダーとは?

日本にも多くのファンを持つ、絵本作家のターシャ・テューダー。アメリカ・バーモント州の山中で美しい庭をたった一人でつくり上げ、自給自足の生活を送る姿が本やテレビなどで特集されると、その前向きな生き方に日本でも多くの人が心を動かされ、彼女のファンは一層広がっていきました。

2008年、92歳でターシャはこの世を去りますが、愛犬のコーギと美しい花畑を歩くターシャの姿が今でもはっきりと思い出されるという人は、少なくないのではないでしょうか。

そんなターシャの言葉を翻訳し、日本に伝えたのが食野雅子さんです。

食野さんはターシャだけではなく彼女の家族とも親交を深め、現在は山梨県にある「ターシャ・テューダー ミュージアム ジャパン」をブックデザイナーの出原速夫氏とともに運営しています。

ターシャ・テューダー ミュージアム ジャパン
ターシャ・テューダー ミュージアム ジャパン

そして、雑誌「ハルメク」では、ターシャとの思い出や彼女の魅力について綴ったコラム「ターシャ・テューダー 喜びの見つけ方」を連載しています。

今回は、そんなターシャの魅力を知り尽くした食野さんが案内する、アメリカ・バーモント州へのツアー(2019年6月に開催)の思い出を、写真とともに特別にご紹介。

ターシャのファンと交流を深めながら彼女のゆかりの地を巡った今回の旅は、食野さんにとってどんなひとときだったのでしょうか? さっそく、ツアーレポートをご紹介します。

「ターシャを身近に感じられる旅」を食野さんがリポート

クラブツーリズム主催の「食野雅子と行くターシャの庭と愛した世界」ツアーに、参加してきました。ちゃんと観光もしながら、アメリカの歴史やターシャの先祖についても学び、「ターシャがぐっと身近になった」と、喜んでいただきました。

今回は、バーモントのターシャの家だけでなく、生まれ育ったボストンや、先祖と関わりのあったコンコード、ターシャが大好きだった1830年代のアメリカの暮らしを再現している歴史村なども訪ねました。

1830年代の暮らしを再現しているオールド・スターブリッジ・ビレッジ
1830年代の暮らしを再現しているオールド・スターブリッジ・ビレッジ

ターシャの先祖は、父方も母方も、イギリスからの移民で、植民地時代のボストンで地歩を築き、アメリカの独立とその後の発展に貢献した名家でした。ボストンでは、その痕跡を訪ね、「子ども時代のターシャも、お母さんになってからも、ここを歩いていたのだわ」と想像しながら、当時のまま残るレンガの歩道を歩きました。

『若草物語』を書いたルイーザ・メイ・オールコットの一家は、ボストンで、ターシャの曽祖父母とご近所でした。その後一家はコンコードに引っ越します。その家が、「オーチャードハウス」、ターシャも挿絵を描いた『若草物語』の舞台です。今回は、ターシャの家を訪ねた後で見学しましたが、当時のままに残されており、タイムスリップしたようでした。

いよいよターシャの庭へ。この山々も、秋には紅葉で真っ赤に染まります
いよいよターシャの庭へ。この山々も、秋には紅葉で真っ赤に染まります

ターシャの庭は今も健在

このツアーのハイライトはもちろん、「ターシャの家と庭」の見学です。私は、「帰ってきた」という懐かしさとともに、「ターシャはもういない」というさみしさで、思わず涙がこぼれました(年齢と共に涙腺がゆるくなりまして)。

「ルカリー」と呼ばれる、事務所兼ショップの建物で荷物を預け、ターシャの住まいへ。「森を抜けると突然視界が開け、わかっているのに、毎回感動します」と、私がいつもお話する「ワイルドフラワーガーデン」には、案の定、皆さんから一斉に歓声が。「ね? 感動するでしょう?」と、私。

雑誌「ハルメク」の連載でもご紹介したワイルドフラワーガーデン
雑誌「ハルメク」の連載でもご紹介したワイルドフラワーガーデン
 

ターシャの家は、数人ずつのグループに分かれ、ターシャの息子のセスと奥さんのマージョリーが分担して案内してくれました。

セスに案内してもらったグループは、セスの日本語での説明に驚いたり、感心したり。家の中は、ターシャがいた頃のまま残してあり、大型の織機や、寝室の外に作られたドールハウス、大きな暖炉や薪ストーブを目の当たりにすると、本の世界に入ったようです。

庭の案内は、孫のウィンズローが担当。今年は寒さが長引き、バラもつぼみがたくさんついていましたが、開花はまだ先。ちょっと残念でしたが、ウィンズローが「祖母は、よくこうしていました」などと説明してくれるので、庭の世話をしているターシャがまぶたに浮かびました。

皆さんのターシャに対する思いに、勇気づけられました

再びワイルドフラワーガーデンを通って「ルカリー」に戻ると、家族が準備してくれた昼食が待っていました。ちょうど雨が降り出し、外のテントでもよかったのですが、ウィンズローの奥さんのエイミーが建物の中にテーブルと椅子を用意してくれたので、全員、家の中で、サンドイッチや果物、料理名人のウィンズローが焼いてくれたクッキーをいただきました。

ウィンズロー夫婦の娘(ターシャのひ孫)エリーとケイティ―もお手伝い。ふたりは、家で教育するホームスクーリングで育てられています。そのことに話が及ぶと、エイミーは、「個性を大事したいので」と、自分たちの思いを語ってくれました。

旅の間に、みんなで集まって、ターシャについての思いを語り合いました。皆さん、それぞれ、何らかのターシャのイメージを持っておられましたが、みんなで語り合ううちに、自分が知らなかったターシャの側面を知ったり、誤解していたことに気づいたり。「ターシャがますます好きになった」という皆さんのお声に、私は大いに励まされました。

こうしてターシャの庭を訪れることは頻繁には叶わないものですが、ターシャの生き方を紹介するイベントなど、これからもみなさんと一緒にターシャについて語らうのを楽しみにしております。

食野雅子(めしの・まさこ)さんのプロフィール

食野雅子(めしの・まさこ)
食野雅子(めしの・まさこ)さん 写真/安部まゆみ

翻訳家。『ターシャ・テューダー 手作りの世界 暖炉の火のそばで』(KADOKAWA刊)を翻訳したことからターシャを出会い、ターシャやその家族と親交を深め、日本でのターシャの本を多数翻訳。現在は山梨県北杜市で「ターシャ・テューダー ミュージアム ジャパン」をブックデザイナーの出原速夫氏とともに運営している。ハルメク本誌で「ターシャ・テューダー 喜びの見つけ方」を好評連載中。

ターシャ・テューダー ミュージアム ジャパン

〒409-1501
山梨県北杜市大泉町西井出8240-4579
アクセス/小海線「甲斐大泉駅」から徒歩7分 中央自動車道「長坂インター」から車で20分

【2022年度の開館スケジュール】

  • 4月22日(金)~11月14日(月)
  • 休館日/火・水・木曜日 ★祭日・8月は無休
  • 開館時間/10:00~17:00
  • 入館料/大人 800円 小学生~中学生400円/団体(10名以上)大人750円 小学生~中学生350円

ハルメク365編集部

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