公開日:2020/11/15
マンガ家・文筆家のYASCORN(やすこーん)さんが、気軽に行ける女性一人旅を紹介。今回は、Go Toトラベルキャンペーンを利用して、九州旅へ。人気の観光列車「ザ・レール・キッチン・チクゴ」の感想は?絶対に食べてほしい駅弁も登場します。
10月からようやく東京都民(私)もGo Toトラベルキャンペーンの対象になりました。
真っ先に行こうと思ったのは九州です。2020年7月の豪雨被害で熊本県を中心に大きな被害を受け、知り合いの人吉の駅弁立売の方も休業中。普段から駅弁を応援しているだけに各地の状況も気になります。そこで九州を縦断しながら「メシ鉄」することにしました。
まずは鹿児島空港へ。朝イチの飛行機に乗って、駅弁を買いに向かいます。目的の嘉例川駅は鹿児島空港から近く、バスで、約10分程度で行けます。1903年に営業開始した嘉例川駅は、木造駅舎の大変趣のある駅。来るたびにその佇まいに見入ってしまいます。
ここは無人駅なのですが、土・日・祝日のみ朝10時半頃から駅舎内で駅弁が販売されるのです。売られている「百年の旅物語 かれい川」弁当は、九州の駅弁ランキングで3年連続1位にもなった素晴らしいお弁当。以前、観光列車「はやとの風」車内で予約して食べたことはありますが、駅で直接駅弁を買う、というのは以前からの目標でもありました。
とはいえ念を入れて、駅弁は事前に予約しておきました。実は以前「メシ鉄!!!」という漫画でこちらのお弁当をテーマに描いたことがあります。その際は電話でのやりとりのみで、直接お会いするのはもちろん初めて。改めてご挨拶したところ、お弁当を作られているお母さんからの丁寧なお手紙をいただき、感激しました。
野菜のみで作られたこのお弁当、初めて食べたときはそのおいしさに大変驚きました。地元の有機野菜にこだわったおかず一つ一つが、すごく丁寧に作られていて、今まで食べたことがないようなお弁当だったのです。特に気に入ったのが、鹿児島の郷土料理でもあるガネと呼ばれるさつまいもの天ぷら。甘くてホクホク……だけでは表現しきれません。
駅弁を紹介する仕事の依頼には、必ずと言っていいほどこちらのお弁当をおすすめに入れています。
さて、お父さんに見送られつつ1時間後に来た列車に乗り、鹿児島中央駅に向かいます。車内で先程買ったお弁当をいただきました。嘉例川駅は列車の本数が大変少ないのでご注意を。お弁当を買いに来る人は全員車で来ていました。
鹿児島中央駅に到着して、ひとっ風呂。駅から歩いて行ける源泉かけ流しの温泉「みょうばんの湯」に来ました。丸いタイル張りの湯船が3つくっついた浴槽はとてもかわいらしく、懐かしい感じがします。泉質もよく、湯上がりは肌がつるつるになりました。
鹿児島中央駅では駅弁を一つ購入。こちらは夕飯に。
さて、新幹線に乗車して福岡県の大牟田駅に向かいます。途中乗り換えた熊本駅でも駅弁チェック。全国的にそうですが、駅弁は現在販売数や種類を減らしているようです。以前のようにずらりと並んだ駅弁から選ぶ楽しみは戻ってくるのでしょうか。
いよいよ大牟田駅からは、楽しみにしていた西日本鉄道(西鉄)の「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO(ザ・レール・キッチン・チクゴ)」に乗車します。テーブルクロスをイメージしたチェック柄のかわいい観光列車です。ここから西鉄福岡駅までの約2時間半、車内でコース料理を楽しみますよ。
車内はまるでレストランそのもの。天井の格子柄は福岡県八女市の竹を使った竹細工で動く車両とは思えない凝った作りです。3両編成で52席ありますが、現在はコロナ対策のため席数を減らしているとのこと。私の隣の席も空けられていました。
「チリリリリン」、優雅なベルの音とともに列車が発車しました。
まずはウェルカムドリンクから。口当たりのよい福岡のあまおうを使ったスパークリングワインに続いて「焼きバターナッツ南瓜(かぼちゃ)のスープ」。タイミングを見て1品ずつ運ばれ、お料理の説明もしてくれます。南瓜のスープ、濃厚でとてもおいしいです。
続いて旬野菜3品、「博多ナスの銀杏のペペロンチーノ」「柿と茗荷(みょうが)のサラダ」「里芋と木耳(きくらげ)の海苔バター」が1皿に盛られて運ばれてきました。八女市産ナスや筑前町産里芋、柳川市産生海苔、柿と木耳は久留米産。季節の地元の食材をふんだんに使った前菜は、どれもとても凝った味付け。これはお酒が必須ですね!
せっかくなので地元の日本酒呑み比べセットを注文。お酒は別料金です。ところで西鉄は通勤・通学で利用する方が多く、沿線は決して景色がよいわけではありません。なのに、すぐ予約が埋まってしまう理由はこのお料理と味、サービスにありました。私も出てくる料理を楽しむのに夢中で、全く景色は気になりませんでした。
そして肉料理「裸のサルシッチャグリル・きのこのグリル」。うきは市産「耳納いっーとん」というブランド豚の粗挽き肉のグリルは、お肉が甘く、食べごたえがあります。添えられているハーブの香りもいいですねぇ。さらにお酒も進みまして、白ワインを追加。
この列車のメイン、「れんこんと甘唐辛子のピザ」。焼きたての生地にシャキシャキしたれんこんと甘唐辛子の食感がたまりません。そしてこの味が一級品!街中でこのピザを出してくれるお店があったら、毎週通いたいくらいにおいしい。なんとこのピザ、この列車内で焼かれているのです。
「ザ・レール・キッチン・チクゴ」2号車の厨房でピザを作っているところを見せていただきました。「車内ではガスは使えませんので、こちらの釜は電気で温度を500度設定にしています。ピザの生地を寝かせ、丸く成形するところから始めます。それを伸ばし、ソースを塗り、沿線の野菜を載せて電気窯で焼いています」とご説明くださったのは西鉄の観光・レジャー事業部の安徳さん。
温度や湿度によって生地の状態が変わるので、それによって焼き加減も変えているそうです。車内でここまで調理できるとは、驚きです!みなさまもぜひ一度、このピザを食べてほしいです。
デザートはフードラボラトリーヤナガワの焼き菓子3種。ナッツとコーヒーのビスコッティ、メレンゲ、いちじくバターサンドクッキー。飲み物はハーブティー3種から選べます。私は一番人気だという「ほうじ茶+レモングラス」にしました。香りに癒やされ、味に癒やされる。ふう、大満足です。
一つ向こうの席で「お誕生日をお祝いしましょう」というクルーの声が聞こえ、拍手が起こりました。座っていらしたご夫婦にお話を聞くと、西鉄で運転士をしている息子さんからの、突然のプレゼントとのこと。なんて素敵な息子さんでしょう……!
こういう対応もしていただけるのですね。車内があたたかい空気に包まれました。
おいしいものは人を笑顔にします。終点の西鉄福岡駅で、クルーのみなさまと記念写真。マスクをしていても、笑顔は伝わりますよね。
これはまた絶対に季節を変えて乗りにこなくては。地元の方々に人気なのもわかります。食事メニューは3か月ごとに変わるそうです。
「ザ・レール・キッチン・チクゴ」の予約は西鉄の専用HPからできますが、私は今回、往復の飛行機とホテル2泊分を日本旅行のツアーで申し込んでいました。そのオプションとして、こちらの「ザ・レール・キッチン・チクゴ」を組み込み、全体で旅行代金の35%が割引になるGoToトラベルキャンペーンの対象になるようにしてもらったのです。
宿泊は最初、1泊分で考えていましたが、1泊につき最大1万4000円のGo Toトラベル給付金がもらえるので、2泊にした方がかえって安くなりました。ただし、オプションにするのが可能な旅行会社とそうでないところがあるようなので、適宜ご確認ください。
今回は飛行機往復とホテル2泊と南九州きっぷ(日本旅行のフリーパス切符)、西鉄「ザ・レール・キッチン・チクゴ」のディナー8800円分を加えてから、割引の2万8000円分が引かれて、合計でおおよそ5万2000円ほどでした。
そうそう、車内では飲み物にGo Toトラベルキャンペーンの「地域共通クーポン券」が使えるので、お酒などはそれで支払いをしました。なんだかとってもお得です。地域共通クーポン券は、基本、発行した県とその隣接県で使えます(券の左下に使える地域が書いてあります)。紙クーポンか、電子クーポンのどちらかで交付されるのですが、電子クーポンは使えるお店は少ないのでご注意ください。
旅行会社で直接手配したら、紙の地域共通クーポン券は旅立つ前に手元に郵送などされますが、個人的にホテルを予約した場合の地域共通クーポン券は、ホテルにチェックインした際でないと渡してもらえないことがほとんどなので注意です。
西鉄福岡駅から、近くに取ったホテルに移動。地域共通クーポン券で、お酒や飲み物を買い出しついでに、中洲まで散歩しました。10年ぶりに訪れましたが、ずいぶんお店が少なくなったように思えます。
週末のため、お店は賑わっていました。空いていれば以前、何度か行った餃子屋さんをのぞいてみようかと思ったのですが……おとなしくコンビニに寄って、ホテルに戻り、鹿児島で買った駅弁をいただきました。コンビニで地域共通クーポン券が使えるのは助かります。
こちらのお弁当も、地域共通クーポン券が使えるお店で買いましたが、そのときは使える券を持っていませんでした。えびめしは松栄軒で一番好きな駅弁。パッケージの形もかわいいです。明日の移動は少なめ。でも大いに食べて飲んで乗ろう!と思います。
☆本記事に記載されている写真や本文の無断使用・ 無断転載を禁じます。また掲載情報は取材時点のものであり、最新の情報は施設等へお問い合わせください。
■もっと知りたい■
この記事をマイページに保存