育てて縫って愛おしむ ガーデンダイアリー

バラは大変?育てる中で、一番大切なことは

公開日:2019.09.25

バラ栽培のコツや花に囲まれた暮らしを発信するブログが人気のバラ愛好家・奥野多佳子さん。庭に咲く四季折々の花の写真とともに庭づくりのポイントをご紹介します。今回は「バラは育てるのは大変?」というよくある質問に答えます。

バラを育てるのって難しい?

9月の作品は「虫の町」

9月の作品は「虫の町」です。
最近水やりをすると、草の間からピョンピョン虫が飛び出してきます。庭の草むらの中で虫たちは何してるんだろ~……。毎年見かけるカマキリの赤ちゃんが大きくなり、そして晩秋になると姿が見えなくなる……。でも春になるとまた3cmほどの赤ちゃんに出会えます。自然の中で小さな生き物が生まれては子孫を残していく姿に感動しますが、それが我が家の庭で繰り返されていることがとてもうれしいのです。

9月の作品は「虫の町」

「てんとう虫さん、何か困って泣いてるの……?」出来上がったばかりの作品を見て孫の2歳のKちゃんがつぶやきました。子どもは庭の虫たちが大好きです。

「バラはきれいで見るのは好きだけれど、育てるのは大変!虫もくるし病気にもなるし……」。5月になると、私のバラの庭に毎年50人ほどの友人が来てくれますが、その多くが「バラは難しい」と言います。「バラは育つ力があるから強いの。大丈夫!」と私は言うのですが、実際1年のうち11か月お世話して、花を楽しめるのはほぼ1か月(私の庭は一季咲きが多いので)……。

ガーデニングは本当に地味な作業なので、暑い夏も寒い冬もコツコツ作業することを考えれば大変なことかもしれません。でも、それなのにどうしてバラを育てるガーデナーがこれほどたくさんいるんでしょう……。あの美しさに魅了され、香りの虜になり、11か月かけて育てることで、バラはかけがえのないものになっていくのでしょうか……

バラを育てるって、本当に難しいのでしょうか?

う~~ん……ちょっとしたことに気を付ければ、そんなことないのです。

土作りが大切……バラのHomeを作ろう!

バラを育てる中で一番大切なことは……と聞かれれば 私は迷うことなく「土作り」と答えます。地上部分はいつも目に見えていて、病気になったり害虫が来たりすると対処できますが、地下部分は、一度植えてしまえば見ることはできないのです。

バラは根っこから水分や養分、酸素を吸収し葉っぱを茂らせ、その養分と葉の光合成で得たエネルギーをもらって花を咲かせます。一番大事な根っこを育てる「土」が良くなければ、いくら立派な苗を買ってきても大きく育たないことは多くのガーデナーが経験済みです。

バラを育てるといっても、苗の植え方からその後の管理、肥料のことなどいろいろありますが 今回は「土」と「病気や害虫対策」についてお話ししたいと思います。

バラを植える土にはいろいろあります。
(1)ホームセンターなどで売っている培養土
(2)市販のバラ専用培養土
(3)バラ専門店やナーセリーのオリジナル培養土
(4)自分で配合した土
私は(4)ですが 土にはほんの少しお金をかけて(2)か(3)で試してみていただきたいな、と思います。

バーグ堆肥:ピートモス:土(真砂土)=3:2:5 の割合で混ぜています

 

  • バーグ堆肥:ピートモス:土(真砂土)=3:2:5 の割合で混ぜています。
    土は赤玉土を使っていましたが 何年かすると粘土質になって排水性が悪くなるようなので、真砂土を使っています。ホームセンターなどで売っている真砂土ではなく、バラのナーサリーで販売されているペーハー処理(土の酸性・アルカリ性を、植物が育ちやすく調整)されたものです。もちろん赤玉土でもOKです
  • 牛ふん(コガネムシの幼虫が発生しやすくなるので最近は少し控えています)
  • 切炭 (くん炭を使っていましたが 粉末よりほんの少し固形の方がいいので切炭を砕いています)
  • パーライト
  • ゼオライト
  • カニガラ

植えつけるときに元肥を加えますが、あまり肥料分が多いと根が伸びないので少な目に。土の中にはいろんな微生物がいるので それらの餌になる堆肥を混ぜ込んで、ミミズや微生物を活発に活動させてバラがしっかり根を張って成長できる環境作りをします。しっかりとしたいい根を作るのは肥料ではなく、この微生物たちです。微生物の多いいい土は病虫害の発生も抑えてくれるので 体力のある株に育ちます。  

根を張って成長できる環境作り

植えるときは、地植えだと深さ50~60cmが目標ですが、場所によっては掘れないところもあるので、その場所が粘土質なら別ですが、そうでなければ私は無理しないで30cmほどでも植えます。たいてい大きなショベルの金属の部分が長さ30㎝ほどなので それを立てて目安にしています。

これでフカフカのバラのHomeが出来上がります。
  
でも……自分でブレンドした土作りなんて面倒で難し過ぎると思われる方……大丈夫です。私も忙しいときは時間をかけずに「バラの土」を買ってきます。でもバラの土にはたいてい肥料分が多く含まれているので 30~50%は再生土(一度使った土を天日干しなどして再生した土)や赤玉土を混ぜて使います。肥料分が多いと根は伸びなくても餌にあり付けるので根張りが悪くなります
 

害虫や病気から守ろう!

バラにはいろんな病気があって その予防対策には薬剤散布が必要と言われています。でも、薬剤散布というと 私は苦手でいつも逃げ出したくなります。そこで バラを育ててる友人たちはどんなふうにしているのか興味があってアンケートを行ってみました。私の花友さんたちにアンケートをお願いして、41名の方から回答をいただきました。

お答えいただいた方たちは ほぼ私と同じ阪神間にお住まいで 初めてバラを植えた方から200本以上も栽培されている方、ベランダで育ててられる方、5月になると観光バスが家の前に横づけされる庭をお持ちの方など……バラへの取り組み方は様々です。まずその結果をお知らせします。

こんなに集まるとは思っていなくて……みなさん真夏の暑い時期、お忙しい中アンケートにお答えいただいて本当にありがとうございました
こんなに集まるとは思っていなくて……みなさん真夏の暑い時期、お忙しい中アンケートにお答えいただいて本当にありがとうございました


【Q1】病虫害対策で薬剤散布されていますか? 

圧倒的に散布されている方が多いのにびっくりしました。

散布されない理由は……犬を飼っているから、ご近所トラブルになるから、薬剤にアレルギーがあるから、てんとう虫やバッタなどの庭の生き物のために、薬剤の知識がないので、など

【Q2】1年に何回散布しますか?

散布する時期

回数は1年に1回から43回まで様々で、ほぼ3月から6月までが多く、また3月から9月まで2週間に1回の割合で散布する方もいらっしゃいました。

【Q3】薬剤は何を使われていますか?

殺虫剤


 



【Q4】今まで一番困った病気や害虫は何ですか?

今まで困った病気や害虫


【Q5】その対策はどうしていますか?
黒星病とカミキリムシについては次の章にまとめました。  

■ハダニ
・殺ダニ剤は卵・幼虫・成虫それぞれ効く薬が違うので注意している。
・見つけ次第葉裏を水で洗い流したり、葉裏にシャワーを毎晩やれば夏の終わりには回復する。
・2月にダコニールを散布のち3月からはカリグリーン入りのハッパ乳剤をスプレー散布する。
・ハダニが大繁殖した時は、光合成できるくらいの葉を残し、ひどい部分を取る方が薬剤を掛けるより回復が早い。

■コガネムシ・鉢底にコガネガードプラスを敷く。
・カルホス粉剤、ダイアジノン粒剤を撒く。

【Q6】薬剤散布での失敗や注意されていることは?
・濃度を間違えて葉っぱがチリチリになった。
・ご近所への迷惑を考え、また薬害が出ないよう早朝撒いている。
・同じ薬剤を続けて使用しないでローテーションを組みながら散布している。
・バラの新芽が伸びるころ、よく観察して薄めの薬剤を散布したり免疫強化スプレーも使っている。

この結果を見て 本当にみなさんよく勉強されていて、きちんとバラと向き合ってらっしゃって頭が下がります。特に使われている薬剤の種類が多く、耐性が出ないようローテーションされていることがわかります。薬剤には予防剤と治療剤がありますし、どれが効くのかはそれぞれ庭の条件も違うので一概には言えないようです。なので、アンケートにお答えいただいたすべての薬剤の名前を「その他の薬剤」として書いています。今使っているものが効き目が悪いと感じた時、一度試してみる価値はあると思います。

黒星病とカミキリムシの対策

黒星病やカミキリムシにはガーデナーのほとんどの方が頭を悩ませていますね。
1. 黒星病

黒星病

黒点病とも言われていて かび(菌)によって伝染する病気で、葉っぱに黒い斑点が出て広がり、やがて黄変して落葉していきます。その落ち葉に雨や水が当って跳ね返って伝染していくのですが、黒い斑点が見えた時は最終段階で、見た目に変化のない時にすでに感染しているというやっかいな病気です。我が庭では夏が過ぎた時には裸ん坊になるバラもたくさんあります。

<予防と対策>

  1. 葉っぱに雨が当らないように 鉢バラなら軒下などに移動する。
  2. 雨の後、バラを揺すって水滴を落とすだけでも効果がある。
  3. 薬剤を散布する。
    本気で予防するなら1週間に1度の割合で撒く必要があるようですが、それは大変なことなので、新芽に蔓延しないように2~3週間に1度撒く方がいいようです。薬は耐性ができるのでローテーションで違う薬剤を撒く必要があります。薬剤はいろいろ系統に分かれていて 同じ系統を続けて撒いてはいけないのです。例えば、住友化学の薬剤だと系統によって赤、青、緑のシールが貼ってあるので、同じ色を続けて使わないようにすればいいので便利です。葉っぱの裏側7割、表側3割で散布します。最近はハンドスプレータイプの薬剤がいろいろあるので手軽に使えそうです。
  4. 落ち葉を掃除して、菌の蔓延を防ぐために常に株元をきれいにする。もちろん菌に負けない体力を付けてあげることが一番なんですけどね……

薬剤

実は私は 黒星病に関しては予防も対策もあまりしていません。

薬剤は写真のように最小限揃えていますが 毎年1月バラの剪定するときに石灰硫黄合剤を撒くだけで それも今年からは小さな子どもも庭で遊ぶことになったので撒きませんでした。木酢液やニームを撒くことはありますが 薬剤を噴霧器で撒くということはありません。早朝に撒くという時間を取れないこともありますが 自分が薬剤を浴びたくないことや庭の生き物を残したい……という理由もあります。

美しい見る庭より、家族が楽しめる庭作りが原点だからですが、てんとう虫やバッタや蜂たちがいてこそ庭が生きているように思えます。その小さな生き物がいることで、また鳥たちも庭にやってきます。

2. カミキリムシ

 カミキリムシ

カミキリムシは「テッポウムシ」とも言われていて 枝や幹に産み付けられた卵が幼虫になって、枝を食害しながら3年ほどで成虫になって穴をあけて出ていきます。私はこのカミキリムシにどれだけ泣かされたでしょう。

カミキリムシの幼虫が茎に入ったサイン

こんなふうに、株元に木くずが落ちていると、それはカミキリムシの幼虫が茎に入ったサインです。写真の状態はあまりにひどくて、気付くのが遅過ぎますが……??

黒星病でバラが枯れることはあまりありませんが この木くずに気づかないと、突然葉っぱが茶変してカリカリになって大きなつるバラでも枯れてしまいます。その予防や対策……いろいろ試してみました。

<予防>

  1. 殺虫剤を株元に撒く。
    カミキリムシが卵を産み付ける6~10月ごろ 月1~2回オルトランを株元に撒く。
  2. アルミホイルや銅のタワシを巻く


カミキリムシは光るものや、体に金属が触れるのを嫌がるみたいなので、アルミホイルや銅タワシを巻いてみました。銅のタワシは細い針金で留めています。花後5月末に巻きますが、木くずが出ていたりすでに幼虫が中に入っているときには逆効果なので注意が必要です。

どちらもこれだ!というはっきりとした効果はわかりませんが、予防は、信じて試すことが一番です。ダメならまた違う方法を見つければいいのですから……。

<対策>

私はカミキリムシ対策5点セット(写真左)を作っています。

  1. くずが出ている茎の小さな穴を見つける。茎の裏側を探す時手鏡が役に立ちます。穴を見つけた時の喜びは大きい!
  2. 穴に針金を入れて、そこで幼虫に刺さればOK。でも、そんなことはほとんどなく、その穴にスポイドで(注射器の方が効果大です)殺虫剤を注入し、丸箸を差し込んで穴を塞ぎます。穴が上の方ならキンチョールE(写真右)が使えます。3方向に殺虫剤が噴射されるので効果大です。
  3. その穴から木くずが出てこなければOKですが もしまた木屑が落ちていれば(1)(2)を繰り返します。
  4. 穴が見つからず枝が枯れてきたら、その枝を地際から切ってほかの枝に被害が出ないようにします。

白くて小さな、ちょっと気持ちの悪いカミキリムシの幼虫との遭遇はたびたびです。でも気持ちが悪いとは言ってられないのです。 

これはもう……カミキリムシとの果てしない戦いです!

 

それでもバラが好き!

バラを育てるのはいろいろ大変なこともありますが、今は耐病性のある強健種のバラがいろいろ作り出されているようです。私が耐病性のバラで、これから育ててみたいと思うものをご紹介します。

※写真は、バラ苗専門店「バラの家」様よりお借りしました。

左:メルヘン・ツァウバー(コルデス)フロリバンダ系 四季咲き性 アプリコットで中大輪のロゼット咲き 右:シャリマー(木村 卓功) コンパクトシュラブ、四季咲き性 ピンクの中輪ロゼット咲き 黒星病に驚くほど強い品種のようです 

左:メルヘン・ツァウバー(コルデス)フロリバンダ系 四季咲き性 アプリコットで中大輪のロゼット咲き
右:シャリマー(木村 卓功) コンパクトシュラブ、四季咲き性 ピンクの中輪ロゼット咲き 黒星病に驚くほど強い品種のようです      

バラ

左:クリスティアーナ(コルデス)つるバラ 四季咲き性 淡いピンクのカップ咲き 
右:ラリッサ・バルコニア(コルデス) フロリバンダ系 四季咲き性 ピンクの中輪ロゼット咲き

大きくてきれいでしっかりと咲いています。

今回アンケートにお答えいただいた友人のお一人は、フルタイムでお仕事されているので週末ガーデナーですが200本以上のバラを育てられていて、2週間に1回薬剤散布をされています。ご主人とお二人で1時間半もかかるそうです。すごいことです。 

5月に伺った時にはそれはそれは見事なバラにあふれていました。ほとんどが鉢植えですが、大きくてきれいでしっかりと咲いています。そしてもちろん葉っぱもきれいで元気。どうしたらこんなに美しくたくましく咲くんだろう……と感心していましたが、今回それがわかりました。とても勉強家で知識が豊富、そのうえで庭に合った「自分なりの育て方」を、時間をかけて見つけられているのです。とても努力されていることがわかりました。「地道にお世話すればバラが答えてくれるようになってきました」と書かれていました。

ピンクのバラ

薬剤散布は、バラの専門家にお聞きすると必ず撒いた方がいいと言われます。でも反面、薬剤を掛けなくても……黒星病で夏に裸ん坊になっても……翌年にはちゃんと花を咲かせてくれるバラを見ると、それでも育ってくれてることを感じます。

もし薬剤散布が何かの理由でストレスになるなら 撒かないことも選択肢の一つだと思います。その代り、バラたちが見苦しい姿になっても我慢することと、やはり秋バラがあまり咲かないことをわかっていれば。薬事散布の代わりに、少しでも病気が蔓延しないようにお掃除を心がけることです。

私は無農薬派ではありませんが 薬剤で庭から害虫を完全になくすことは無理だと思っています。少しでも減らしたいとは思いますが、例えばてんとう虫の幼虫がアブラムシを食べるという自然の営みも大切だと思っています。

ピンクのバラ

あまり難しく考えるより、私は楽しんでバラを育てたいと、いつも思っています。もちろんバラの解説書に書かれていることは目標ですが、バラの育て方って子どもの育て方と同じで正解ってないんですね……。まず自分の庭を知ることが一番大事です。庭の光の射し方や風や湿度や土や……それに水の撒き方もみなさんそれぞれ違うはず……。基本をわかって自分なりの育て方を、試行錯誤しながら時間をかけて探していけばいいのだと思うのです。それにはもちろん、知識を得ることもTRYすることも必要だと思います。

バラは手を掛ければ掛けただけ、いえ、それ以上に美しい花を咲かせてくれます。
その喜びを一度経験すると もうバラの虜になってしまうのです。
     
私は昨年 また新しい庭作りを始めました。家を建て直すことで15年かけて作った庭の最終形を壊してしまった……と思っていましたが、実は庭には最終形はないのだと気づきました。 その時その時家族の形が変わるように、庭の形も変わっていくのだと……それだけ庭は人の生活に密着したものだと思います。

バラを育て庭を作ることはとても楽しくワクワクすることです。
難しいと思い込まずに、まず好きな色、好きな香りのバラ……自分のバラを見つけて育ててみてくださいね。

 

■奥野さんの第1回連載はこちら

奥野さんのブログ「Soleilの庭あそび…布あそび♪」はこちら

奥野多佳子

1952(昭和27)年、兵庫県生まれ、大阪府在住のバラ愛好家。82年にタペストリー制作を始め、2000年に陶芸、04年に庭づくりを始める。豊中市美術協会会員。兵庫県立美術館で解説ボランティアに参加。ブログ「Soleilの庭あそび…布あそび♪」は人気です。

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