庭、それはもう一つのリビング

2024年11月21日

【春夏秋冬】花であふれる空間へ

庭、それはもう一つのリビング

自邸のガーデニングやセンスあふれるライフスタイルが人気のバラ愛好家・奥野多佳子さん。今回は総集編。春夏秋冬の庭の様子やDIY、ファブリックアートなど、多才な魅力を紹介します。

 

20年かけて作ってきたバラの庭

「バラに包まれたい!」

20年前に1本のバラを植えたことがきっかけで私の庭作りが始まりました。土を作り、レンガを積み、アーチを立て、芝を張る……体力勝負で本当に地道な作業の連続でしたが、試行錯誤を繰り返して、今ようやく目指す庭のアウトラインが見えてきたところです。

5月になると、私の思いに応えるようにバラはあふれるほど咲いてくれます。

がんばってよかったと思えるのですが、その庭作りで得たものは、心癒やされる場所だけでなく、庭が繋いでくれた多くの人との出会いがありました。それは私にとってかけがえのない経験でした。

また、庭からもらったエネルギーでタピストリー作品を制作することができて、「ガーデニング」というひと言では言い尽くせない、とても濃密な20年でした。

そんな私の庭を、1年を通してご紹介します。

庭は2つあります。門扉から玄関に続くボーダーガーデンの前庭と、リビングに接する裏庭。どちらもバラで囲まれた庭です。

春…庭が一番美しく輝く時

4月になるとバラの蕾も膨らんで、日ごと庭に色彩が増してきます。

門扉辺りはアメリカハナズオウ ハートオブゴールドのライムグリーンの新芽が鮮やかで、バラを引き立てます。

バラはジャスミーナ、クレマチスはマダム・ジュリア・コレボン

前庭は3つのアーチがバラであふれます

5月になると長さ25mある前庭は、3つのアーチがバラのトンネルになります。

白いバラはマダム・アルフレッド・キャリエールとつるアイスバーグ、左奥のピンクはアブラハム・ダービー

門を入ると甘い香りがあふれるので、この季節は玄関までゆっくり歩くようになります。

黄色のバラはゴールデン・セレブレーション、ピンクはスパニッシュビューティーとラジオタイムス、アブラハム・ダービー、赤はオデッセイア、白はつるアイスバーグ
右は白いドット模様のキャメロット、赤はオデッサィア

バラには農薬を撒かないので黒点病や虫の被害にも遭うのですが、最近は病気にかかりにくい品種のバラを選ぶようになりました。この2本もそうで、その丈夫さやたくましさには驚きます。

赤いバラはオデッセイア、ピンクはスパニッシュビューティー、薄いピンクはピエール・ド・ロンサール

晩秋に植えたジキタリスやカンパニュラ、種まきして育てたオルラヤやニゲラ、アマなど一年草もバラとよく合って美しい色彩が生まれます。

ピンクのバラは遅咲きのジャスミーナ

3つのアーチは、奥へ行くほど遅咲きのバラを植えているので6月初めまで楽しめます。

ジャスミーナは、見た目の可憐な雰囲気と違って、太いシュートが驚くほど旺盛に伸びてよく咲きます。香りもよく、枝垂れるように咲くのでアーチにはぴったりのバラです。

裏庭は360度バラに囲まれた空間です

はじめ裏庭は、芝生を張り四角くタイルを敷いていて、芝生のメンテナンスが大変でした。そこから大改造。

芝生は、張るのは簡単ですが剥すのは大変!タイルも重い!本当に体力勝負! でもそこから試行錯誤を繰り返せたのは、自分の庭(=自分の世界)を作りたいと夢中になっていたからです。

裏庭の最終形は、タイルを丸く敷いた中に芝を張って、その周りに植えたバラや花や木々に取り囲まれるようにしました。丸くタイルを置くのも芝を張るのも楽しかったです。

この面積だと芝生の管理もストレスなくできて、芝刈りの後に芝生用の除草剤 シバキープを使っています。芝生に立てば庭のすべてが見渡せます。

庭は年を追うごとに変化していきますが、バラに包まれたいという思いは変わらず、いつもバラのご機嫌を伺い、台風が来たときは枝が折れないようロープでくくったり、株元に木くずを見つけると大慌てでカミキリムシ対策をしたり、ずっと見守ってきました。

でも20年も経つバラは病気や虫の被害にも遭いやすく、元気に育てるのは大変です。一本一本大事に剪定しています。私の庭作りに付き合ってくれたバラたちに感謝! 大切な仲間たちです。

ホスタやヒューケラなどを組み合わせるとき、好きな色合いは何年経っても変わらないですね

裏庭もほとんどがつるバラで目線が上に向きますが、この三角形の花壇をフォーカルポイントにして毎年変化をつけるようにしています。

白いバラは群星、黄色はグラハム・トーマス、ピンクはコンスタンス・スプライ
ピンクのバラはラベンダードリーム
白いバラはウエディング・デイ、ピンクはピエール・ド・ロンサール、赤はアルテシモ

ホスタやヒューケラ、グラス類が好きなので、日陰になる場所ではカラーリーフの色合わせを楽しんでいます。

私が庭作りに夢中になれたのは、家族が応援してくれたり、共感できる友人がいてくれたからです。友人たちと「きれいね!」と庭を眺める……ただただ一緒に共感してくれることがうれしいのです。

長くオープンガーデンを続けられたのも、そんな時間がとても大切と思えたからでした。

夏…白とブルーの世界

バラが終わり初夏になると、庭は華やかな色合いから白とブルーの世界に変化します。そんな中で目を引く美しいカラーリーフがカンナです。

左の黄緑色がべンガルタイガー、右の銅葉がダーバンで、2つともスジが入った葉で芸術的な色合い!と感心してしまいます。2つを並べて植えると、色合いの対比で庭が引き締まりブルーや白の花を引き立ててくれます。

2つのカンナの花はオレンジ色で晩秋まで咲いてくれます。もう20年のお付き合い……大事にしています。

カンナの向かいに植えている大好きなカラー。黄色いクラスぺディア、白いオルラヤ、銅葉のヒューケラの組み合わせもいい雰囲気です。

紫のクレマチス スパーバもよく咲いてくれます

そして初夏はべリーの季節です。

これはブラックベリーを丸く誘引した鉢植えですが、イチゴや木苺も育ててジャムを作るのが楽しみでした。

ジューンベリーの実が黒くなってくると、ヒヨドリと競争しながら収穫です(笑)

種を取るのが少し面倒ですが、ジャムにすると甘酸っぱくておいしい! 一度食べると毎年作らずにはいられません。

夏はバラが枝を伸ばすので、庭はジャングルのようになります。

秋…黄金に色づく庭

秋には一年草の種まきをして球根を植え付けます。来春の庭を、どんな景色にしようか思い描きながらの楽しい作業!

デッキのブドウの葉が黄金に輝き、カサカサッと音を立てながら散り始めると、庭は一気に色づいてきます。

裏庭の中央の銅葉のアメリカハナズオウ フォレストパンジーや、左端のコハウチワカエデ、それにホスタたちもみんな黄金色に輝いて1年を終えます。庭は落ち葉でいっぱいになり、宿根草たちを冬の間暖かく包みます。

前庭のアメリカハナズオウ ハートオブゴールド。黄金色の大きな葉が冷たい風に運ばれて黒い枝が見えると、もう冬です。

冬…春を待ちわびて眠りにつきます

クリスマスが近づくと、色づいたバラの実で毎年作るリース。コニファーのブルーヘブンを剪定してアルテシモの大きなオレンジの実を挿して門扉に飾ります。

冬の間も 剪定するまでバラは咲き続けます。ザ・ダークレディーとアブラハム・ダービーですが、5月とは違って、凍える夜の冷たさに染まるように濃い色になります。剪定のときに見つけたバレリーナのローズヒップもかわいい!

庭仕事が一番忙しいのは1月と2月です。どんなに北風が吹いても、バラの誘引をほどいて剪定を続けます。そして、5月にはどんなふうに咲かせようかと思い描きながら誘引をしていきます。私はこの20年間で、すっかり寒さに強くなりました(笑)

冬の間 5種類ほどの鳥たちが庭に飛んできます。メジロはいつもつがいでやって来て、挿したミカンを仲良く食べる姿を見るとほっこりします。

関西で雪が積もるのは珍しいので、そんな日は朝から大慌てです。息子が作ってくれた巣箱には、ジョウビタキやシジュウカラが飛んできて、ひと休みしています。

冷たい冬、庭は静まり返って春を待ちます。

早春…目覚める庭

早春。庭の目覚めは早く、クリスマスローズがまだ冷たい空気の中咲き始めます。

クリスマスローズのリースはかわいいので毎年作ります

ミモザが満開になり、春の主役・チューリップが咲き出すと、庭は一気に春色に染まり1年が始まります。

チューリップや種まきっ子の花が咲くとほっとひと安心

ホスタたちも目覚め庭はエンジン全開! バラが咲く景色とはまた違って、新芽の鮮やかさに心惹かれる季節です。

デッキ…DIYで作る私の部屋

我が家の敷地には家が2軒建っていて、その間をデッキで繋いで行き来できるようにしています。最初、デッキは狭くてやっとテーブルが置けるほどでしたが、この空間は私の部屋!

DIYで棚を作って雑貨を置いたり、陶芸教室で作った素焼きを飾ったり、フェイクのドアをつけたり、自分の好きなものを一つずつ作っていったので思い入れがありました。

この小さな空間で、どれだけたくさんの人たちとおしゃべりできたでしょう! 幸せを感じられる庭の部屋です。

そして息子が家を新築したのを機にデッキも広くしました。

大工さんに屋根だけ作ってもらった後は 自分でDIY! ブルーのペンキを塗った板を壁に張り、白いペンキを塗った材木で棚を作り、いろいろな雑貨や好きなものを集めて飾り……それはそれは楽しいDIY!

今は雨が降ってもランチでき、寄せ植えや種まきもここでしています。家族が集まるBBQも、雨でもできるようになりました。庭に屋根のある部屋があるととっても便利です。

友人たちとランチしたり、お茶したり 一人で本を読んだり……気持ちのいい空間です

作品が生まれる場所

20代の頃から作り続けているファブリックアートのタピストリー作品。毎日庭にいる時間が長くなるにつれて、そこで感じたことを表現したくなります。

これは、庭をテーマに始めて作った作品『風が生まれる』(147cm×92cm)です。庭にいて目に映る緑のグラデーションや吹き渡る風の香り、土の感触、その気持ちよさが作品作りのエネルギーになります。

タピストリー作品は染めた布で絵を描くように制作していきます。

図案を書き、染め布を切って縫い、刺繍したりビーズをつけたり。庭の作業とは真逆のように見えますが、私にとってはどちらも思い描く景色を作ることに変わりはありません。

普段は樹脂製の染料を使いますが、この『Shade』(170cm×100cm)では油絵の具を使いました。

植物の鮮やかな色合いを表現したくて、布にホスタやニューサイランなどを油絵具で描いて使いました

これは『風の会話』(170cm×100cm)庭を吹き渡る風の気持ちよさ、植物たちは揺れながらおしゃべりしているよう……。

染め布やオーガンジー、刺繍糸、ビーズなどいろんな素材を使っています

2017年兵庫県展に入賞、佳作をいただいたお気に入りの作品です。

陶芸教室で作ったハウスも庭に置いています。

庭はもう一つのリビング!

夕方 日が西に沈む頃の庭が大好きです。お日さまに照らされた喧騒も落ち着いて、し~んと静まり返った植物のエネルギーを感じます。風が渡り本当にいい気持ち……ふぅ~と深呼吸! これで一日の疲れがどこかへ飛んでいく気がします。

家族の集まる場所

「どうして一番日当たりのいい場所にお花を植えないの?」と不思議そうに、裏庭を見た友人によく言われます。そう、一番日当たりがいい場所を芝生にしているのは、家族が集まる場所にしたかったからです。

毎年庭でBBQするのが恒例になり……

ナイトBBQも……。

テントでお昼寝も、夏のプールも……。家族で楽しむ庭!

バラに包まれ、そして家族や友人が自然と集まる場所。それは、もう一つのリビングです。

年齢とともに庭も変化していきますが、リラックスできて笑顔があふれるリビングのような庭作りを続けていきたいと思います。

■もっと知りたい■

 

 

奥野多佳子
奥野多佳子

1952(昭和27)年、兵庫県生まれ、大阪府在住のバラ愛好家。82年にタペストリー制作を始め、2000年に陶芸、04年に庭づくりを始める。豊中市美術協会会員。兵庫県立美術館で解説ボランティアに参加。ブログ「Soleilの庭あそび…布あそび♪」は人気です。

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