息をのむ美しさ!中之条ガーデンズのバラ【前編】
2023.06.062024年05月10日
印象派の画家モネの世界を再現した庭園
美しすぎる!「北川村『モネの庭』マルモッタン」
高知県にある「北川村『モネの庭』マルモッタン」をご存じですか?印象派の画家モネが愛したフランス・ジヴェルニーの庭をモデルにつくられた庭園には、あの絵の世界が広がっています。人気ガーデナー・奥野多佳子さんの目を通してご紹介します。
一度訪れたかった「北川村 モネの庭 マルモッタン」
10年以上前から訪ねたい庭がありました。それは高知県北川村にある「北川村 モネの庭 マルモッタン」。高知市内から車で1時間半ほどの山の中にあります。そこへ、2023年5月やっと訪れることができました。
それほどまで行きたかったのは、世界で唯一「モネの庭」と名乗ることを、フランスのジヴェルニー庭園を管理するモネ財団から認められた庭だと知って、とても興味が湧いたからです。どんな庭なんでしょう……。
フランスのジヴェルニーのモネの庭には20年ほど前に行きましたが、そのときの感激は今でも覚えています。ジヴェルニーに降り立ったときに感じた透き通るような光、クリアな空気感、鮮やかな色彩に驚いたことも。
モネが見ていた光は日本のそれとは全く違っていたんだと、そのとき思ったことも覚えています。
「北川村 モネの庭 マルモッタン」が誕生するにはドラマがありました。
過疎化が進む北川村は、工業団地の誘致や特産の「ゆず」のワイナリー事業の誘致など地方創生を検討していました。しかし、いろいろなことからまとまらず、観光と文化の拠点づくりのための庭園を造る構想が持ち上がりました。
柚子とワインの発想からフランスのモネの庭へとたどりつき、さっそく担当の方がフランスのモネの庭を訪れたそうです。最初はモネの庭の関係者に会ってもらうことも叶わなかったのですが、熱意は奇跡を生むのですね、モネ財団から門外不出の「モネの庭」を名乗る許可を得ることができたのです。
そこから庭づくりが始まります。そして構想から4年後の2000年、さまざまなハードルを乗り越えてやっと開園にこぎつけました。
色彩豊かなモネの庭の再現……でもジヴェルニーと高知とでは気候も土壌も光も違うから大変なことだったと想像できます。
「モネの庭」というブランドを得るまでも、そして得てからも、試行錯誤を繰り返し努力が続いたといいます。2~3年に1度来園される、本家モネの庭の庭園責任者からのアドバイスは、今も続いているそうです。
四国の小さな村が「モネ」という大きな名前を受けるのはとても誇らしいことだと思いました。そこには大変な努力があり、村をあげての事業をたくさんの方のチームワークで乗り越え、多くのドラマが生まれ、この庭が出来上がったのです。それを知り大変感激しました。
「北川村 モネの庭 マルモッタン」は3ヘクタールもの広さを誇る庭園。その中にある3つの庭、「水の庭」「花の庭」「ボルディゲラの庭」をご紹介します。
※画像は複数あります。Yahoo等でご覧の方は、画像をスライドして確認ください
モネが愛した「水の庭」
フランスの画家クロード・モネは、終の棲家としてジヴェルニーに移り住んだ際、自分でデザインして庭をつくったといいます。家の前には色とりどりの花が咲き乱れる「花の庭」を、そして道を隔てて「水の庭」をつくりました。
「水の庭」には池をつくり、スイレンを植え、日本の浮世絵で見た太鼓橋を架け、柳や藤を植えました。モネはジャポニズムに影響を受けた画家で日本びいきだったことはよく知られています。ジヴェルニーのモネの家にも浮世絵のコレクション(もちろんレプリカですが)がたくさん掛けられていたのを覚えています。
この北川村でも池に太鼓橋を架け、モネの池を再現しています。藤が咲くときれいでしょうね。想像するだけでうれしくなってきます。
優しい色合いのスイレンが水面に姿を映しながら、丸い葉に身を寄せるようにしながら凛として咲いています。
スイレンは午前中に咲くといいますが、この池のスイレンのほとんどがジヴェルニーのモネの庭から株分けされたのだそうです。水面は鏡となって空と木々と草花を映し、そして揺らめく……いい雰囲気!
モネは池を手入れする庭師を雇って、朝早いうちに小さなボートで水草やスイレンの古い葉などを除いたり花びらの上のほこりを取ったり水面をきれいにしていたそうです。大変なこだわりです。
モネにとって池はキャンバス、毎朝絵を描くようにスイレンを整えていたんでしょうね。モネが描こうとした水面は、モネ自身がつくり上げたものでした。
その思いを受け継いで、モネの庭でも週に一度、火曜日に、スイレンのお手入れをして水面をきれいにしているそうです。
私が訪れた日はちょうどその日で、古い葉や池の底などをお掃除されていました。タイミングよく見ることができてよかった!
スイレンは池に植えるだけでは秩序なく広がるので、古い葉を取り除き スイレンの葉が散らばらないように丸い形に集めるよう気を配っているそうです。
淡いピンクや白のスイレンが多かったのですが、実はモネはどうしてもブルーのスイレンを咲かせたかったそうです。
気温の低いジヴェルニーでは夢が叶わなかったのですが、この高知で咲かせることに成功したそうです。それにはフランスにある水生植物園から苗を持ち返り大切に育てたということでした。
私が行ったときは青いスイレンは見られなかったので残念でしたが、6月下旬から10月頃まで見ることができるそうです。
丁寧なお手入れのおかげで水面に映り込む景色……素敵です。
池の周りをぐるっと回ると、小径が交差するところに4つのアーチがあって赤いランブラーのバラが咲いていました。ここが一番人気の場所でした。
両サイドから伸びたキングとエクセルサが華やかです。
池の水面のすぐそばまで行けるので気持ちがよくて、見るとメダカがいっぱい泳いでいます。人気の緑のベンチは、さっきまで子どもたちが座って写生をしていました。
そして所々にこの場所の風景を描いたモネの絵が置かれています。いいですね、モネが見ていたのと同じような風景が見れるって!
水面は光や見る角度でずいぶん色が変わります。
深い色合いは、モネが絵にした色そっくり。
池の周りにはバラ、ポピー、ジキタリス、ユリなどさまざまな花が自然な雰囲気で咲いていました。モネが愛した「水の庭」、こだわり満載でした。
色彩あふれる「花の庭」
楽しみにしていた花の庭! 5連のアーチは大迫力です。バラはランブラーが多いのか蕾(つぼみ)がいっぱいでまだ満開には早かったようです(2023年5月17日来園)。
フランス・ジヴェルニーの庭もアーチの下草は黄色やオレンジでしたが、ここはナスタチュームが満開、ピンクのバラたちとふんわり柔らかな雰囲気です。
このアーチを階段の上から眺めると、深い山に囲まれた庭だということがわかってちょっと新鮮な感覚でした。
花の種類や数はどれほどでしょう……びっくりするほどのボリューム感! 緑の中に筆でトントンとさまざまな絵の具を置くように、鮮やかな色彩であふれています。
花の色合わせもグラデーションがついていて、とてもきれいです。
花壇ごとに花色が変わっていたり、どの花も光を燦燦と浴びて生き生きしています。
小さなアーチのバラは満開!かわいい色合いです。
左の少し濃いバラはピンクグルーテンドルスト。右はツクシイバラ。ツクシイバラはたくさん植えられていて、訪れた日は満開でした。
バラもいろんな種類があって、蕾も多かったのでこれからどんどん咲いていきますね。
画像の左上から右回りに、ムタビリス、ニュードーン、モーテマサックラー、シンデレラ。
ムタビリスは初めて見ましたが、咲き始めはアプリコットで濃いピンクに色変するバラです。一重なのでクルンクルンと動きがあってすごく魅力的でした。
フローラルホールのバラ、ポールズヒマラヤンムスクも満開!
「花の庭」は鮮やかな色彩で満たされていました。
「花の庭」や「水の庭」からポピーが一面に咲く丘を越えると「ボルディゲラの庭」があります。
モネが旅した「ボルディゲラの庭」
モネは43歳のとき、ルノワールと地中海の街ボルディゲラを旅しています。美しい空と海、そして光にあふれた風景をモネは気に入って何度か訪れ、30点以上の作品を描きました。フランス北部のジヴェルニーとは違う地中海地方の空気感や暖かさに、モネは刺激を受けたのでしょうか。
そんな創作活動の重要なポイントにもなったボルディゲラを、モネの作品から発想して庭にしようと、スタッフの方が現地を視察して再び新しい庭づくりが始まります。
瀬戸内から運んだ数千トンの石を積み高低差をつけ、アガべなどの乾燥に強い植物が多いため土壌改良をし、北川村の気候や地形も生かしてボルディゲラの庭は開園20周年の記念として2020年に完成しました。
オリーブはスペインから取り寄せたそうですが、ヤシの木は廃校となった小学校や北川村の周辺から集められ、そして柚子の木なども植えられています。
石積みの中にも明るい花がたくさん咲いています。赤いランブラーエクセルサがポイントに。
赤いセントランサスや、いろいろなところで咲いていた黄色いレダマ。
そしてアガベやユッカがいっぱい。地中海の乾いた空気感が生まれて、「花の庭」や「水の庭」とは全く違った世界観があります。
小径を登ると小高い丘に建つ小屋が見えます。
カフェ「リヴィエラの小屋」ここでひと休みです!
モネが描いた風景をモデルに植栽されていて、小屋からは太平洋が眺められます。
ピンクのワトソニアもたくさん咲いていました。これだけの数のリュウゼツランやヤシがのびのび植栽されている地中海風の庭はあまりお目にかかれないので、面白くてなんだかワクワクしました。楽しかった!
北川村のおいしい「食」を楽しむ
3つの庭を見る楽しみの他に、北川村の食を楽しむことができます。
「花の庭」エリアにある大きなハウスには、レストランやギャラリーがあります。
「カフェ モネの家」でランチをしました。ここでは北川村の食材を生かしたメニューがたくさんありました。
私はモネのヴィーガンプレート、ちらし寿司 1600円(税込み、※2023年5月のメニュー)
お肉やお魚を使っていなくて北川村の新鮮なお野菜などを使った田舎風ちらし寿司でした。旦那さんは米ヶ岡鶏のソテー、柚子ソース 1500円(税込み、※2023年5月のメニュー)
どちらもとってもおいしかったし、量もたっぷりだったのでお腹いっぱいになりました。ヴィーガンプレートには高知県産の和紅茶がセットされていて、それもおいしかったです。
カフェの横にはパン工房もあります。柚子の入ったパンやシフォンケーキがあって ほんのり柚子の香りですごくおいしい! 柚子、大好きなんです。
さわやかな柚子果汁とハチミツの甘さがミックスした柚子ドリンク、実は今だにお取り寄せしています。あっさりとしておいしい!
ギャラリーの1Fにはショップもありました。
エントランスや駐車場前にあるチケット売り場はおしゃれで素敵!思わず近づいてしまいました。
こだわり満載のお庭でした。アクセスのあまりよくない場所に、こんなにこだわりのある庭園があるなんて、びっくりでした。
モネは自然を愛し、庭やキャンバスの上に鮮やかな色彩の世界を創りました。昔からモネは大好きな画家でしたが、いくら展覧会を見ても異国の遠い存在でした。
でもモネが苦労してつくり出した庭がこの北川村で再現されて、モネが見た同じような視線で時を越えて見ることができ、楽しむことができる……。そんな思いで過ごせるのがうれしくて、少しモネを近くに感じることができたかもしれません。
また違う季節に、モネが見た同じような景色を見に来たいですね。
「北川村 モネの庭 マルモッタン」情報
住所:〒781-6441 高知県安芸郡北川村野友甲1100番地
開園時間:9時~17時(最終入園時間は16時30分)
休園日:6月~10月の第1水曜日、12月1日~2月末日
入場料:一般1000円(税込み)
※最新の情報はホームページでお確かめください
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