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- 認知症になっても使える、注目の「キャッシュレス」
高齢者に特化したキャッシュレスサービスが、今注目を集めています。使い過ぎないチャージ式、買い忘れ防止機能もついているので、認知機能が低下した方でも安心して使用することができるんだとか! 気になるシステムや使い方をお聞きしました。
高齢者向けキャッシュレスサービス
もしも家族や自分が認知症になっても、お買い物はなるべく大切にしたい楽しみのひとつです。おいしそうな商品が並ぶ売り場にはワクワクするし、欲しいものが買えると満たされた気分になりますよね。
とはいえ認知機能が低下すると、小銭の区別がつかなくなって支払いができなくなったり、何度も同じものを買ってしまったりと、トラブルが増えてきます。2022年5月に本格スタートした「KAERU(以下、カエル)」は、認知機能に不安がある高齢者に向けたキャッシュレスサービス。「老眼鏡や杖のように、高齢者の苦手に寄り添えたら」と話す、KAERU株式会社の代表取締役、岡田 知拓さんにサービスの詳細を教えてもらいました。
認知症の方やその家族の意見をもとに開発
スマホのアプリと事前チャージ式のプリペイドカードを使って、使い過ぎを心配せずにキャッシュレス生活が始められるのが「カエル」。国際ブランドのMastercard(マスターカード)対応なので、スーパーやコンビニなど多くの店舗やネットショップに使えます。
「超高齢社会を迎えるのに、日本にはまだ高齢者に特化したキャッシュレスサービスがありませんでした。認知症の方やその家族、介護士にヒアリングを重ね、開発したのがカエルです。お買い物は貴重な社会との接点、奪われることがないように支援できるサービスでありたいと思っています」と、岡田さん。
使い過ぎないチャージ式、買い忘れ防止機能も
1円玉と100円玉の区別がつかない、お釣りの計算ができない、お財布を何度もなくしてしまう、さらには買い忘れや何度も同じものを買ってしまうなどの“困った”を減らすために、「カエル」にはさまざまなお役立ち機能があります。
プリペイドカードは1日に使いたい金額を決めておくと、前日に使った分だけを自動でチャージ。計画的な利用が心配な方でも、クレジットカードのようにお買い物ができるようになるので、お釣りに悩まされることのないキャッシュレス生活ができます。カードを失くしたときも、窓口に電話したりなどせずにスマホのアプリからワンタッチでカードを止められます。
買い忘れを防止する機能もあり、事前にアプリでリストを作成しておき、買い物をしながらチェックし終えると「完了」を通知。また、スマホの位置情報を利用し、目的のお店に到着すると買い物リストを表示して知らせてくれます。
家族が利用者を見守れる、さまざまな安心機能
「カエル」にはパートナー機能があり、申し込みや初期設定、紛失時の対応などを家族や介護者が引き受けることができます。いつ、どんな買い物をしたかという履歴を確認して、本人にトラブルがないかを知ることができるのも安心です。
一方で、岡田さんがサービスを設計する際に気を付けたのは、「認知症当事者の方だからといっても、ご本人の意思や尊厳を守る」こと。心配だからとはいえ、子どもにプライベートを把握されたり、管理されるのは不快な人は多いでしょう。そのため「カエル」では買い物の履歴は見せないけれど、利用金額の設定は任せるなど、機能ごとの権限管理ができるようになっています。
「カエル」を使いたい、どうすれば?
「カエル」の利用を始めるにはスマホに専用のアプリをインストールする必要があります。申し込みから5~7日でプリペイドカードが到着。指定の銀行口座にお金を振り込んでおくと、毎日使いたい額だけ、プリペイドカードにチャージされます。もし限度額を超えてしまったら、「カードが使えません」というエラーが表示され、パートナー機能を利用している家族にも通知されます。
利用料は基本的に無料で、一部のオプション機能のみ有料。すべての機能が無料で使えるキャンペーンを実施中です(2023年7月現在。ただし、銀行への振込手数料やカード紛失時の再発行手数料はかかります)。
なお、KAERUは利用者ご本人のスマホからアプリをダウンロードしカードを申し込む必要があります。家族が申し込む際、家族のスマホから代理でカード発行はできず、本人のスマホから直接申し込まなくてはなりませんので、ご注意を。
高齢者にこそ便利なキャッシュレス
MCI(軽度認知障害)と診断を受け、KAERUを現在利用しているユーザーからは、「アプリで、買うべきもの・買ったものメモが残せる買い物リスト管理機能が特に便利です。買いものをした際には実際に何にどれくらいお金を使っているのか通知がくるので、買いすぎの防止にもなります」とのこと。「KAERUによって買いものが楽になるだけではなく、お金を支払うことをうっかり忘れて品物を持って帰ってしまう、未払い行動を防げる点もありがたいです」。
2022年5月からは兵庫県加古川市・加古川市社会福祉協議会と協力して、成年後見制度及び日常的な金銭管理の支援での「カエル」を利用してもらう実証実験もしているのだそう。「現金を用意しなくてもよいなど職員の業務量が減り、また利用者の購買データ等を活用して、手厚い支援活動ができるようにすることを目指しています」と岡田さん。
お買い物は、五感が刺激されるので認知症のリハビリとしても有効とされています。最新キャッシュレスサービスの見守り機能などをうまく使って、なるべく長く、自立した幸せな暮らしが送れるようにしたいですね。
※この記事は2022年9月の記事を再編集をして掲載しています。
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