スリランカのポヤデー

2020年05月22日

スリランカで、特別な体験をしたいなら

スリランカを旅するなら、仏教の祝日「ポヤデー」に!

スリランカの魅力を、現地在住の日本人フォトグラファー石野明子さんがお伝えします。今回は、観光客でも楽しめるスリランカの祝祭日「ポヤデー」について解説。仏教が深く根付いた国だからこそ味わえる、特別な体験があるんです。

スリランカは、仏教徒が多い国

 

ごった返すポヤデーの寺院  
ごった返すポヤデーの寺院  

スリランカのバンダラナイケ国際空港に降り立つと、どどーんと迎えてくれるのが大きなブッダ像です。お祈りしている現地の人も、時折見掛けます。スリランカを旅すると、スリランカの日常は仏教とともにあることを、きっと肌で感じられるのではないでしょうか。

スリランカは島国ですが、多宗教国家でキリスト教徒やヒンドゥー教徒、ムスリム教徒もいます。しかし、仏教徒の数は全体の7割を占めるほど圧倒的なのです。スリランカは、仏教発祥の地であるインドの右下に位置しているということもあり、仏教の源流をそのまま引き継いでいるといわれています。スリランカは上座部仏教、日本は大乗仏教です。個人が修行し悟りを開くことが目的とされている上座部仏教の方が、戒律が多い印象です。

  宗派がわかる車の内装
 宗派がわかる車の内装

日本では自身の信仰を尋ねる、尋ねられるということはほとんどないと思いますが、スリランカではとてもよく聞かれる質問です。ちなみにスリランカ人ドライバーの車やトゥクトゥクにはほぼ100%、自身が信仰する宗教の内装が施されているのでとてもわかりやすいです。 

寺院内のいたる所で祈りが捧げられる。腕にはピリットが巻かれている
寺院内のいたる所で祈りが捧げられる。腕にはピリットが巻かれている

また腕に白い糸を巻いている人がいたら、その人は仏教徒です。ファッションの一部ではなく、お寺でお坊さんに巻いてもらった「ピリット」というお守りなのです。幸運を呼び、災いから守ってくれるといわれています。ツーリストでも、お寺でお願いすれば巻いてもらえますよ。ミサンガのように自然に切れるまで、そのままにしておくものだそう。

スリランカの人々は、子どもの頃から仏教の教えを学校で習います。日曜日にはサンデークラスといって、白い民族衣装を着てお寺に通い仏教の基礎知識を学んだり、お坊さんの説法を聞いたりします。地元の保育園に通う4歳の娘は、すでにシンハラ語でお祈りの歌が歌えるようになっています! 毎日、みんなでお祈りの歌を歌ってから1日が始まるそうです。 

月に一度の「ポヤデー」は、仏教徒にとって特別な日


 

お供えに並ぶ参拝者の列
お供えに並ぶ参拝者の列

月に一度、仏教徒にとってとても大切な日があります。満月の日を「ポヤデー」と呼び、この日は一切の不浄の活動は禁止とされています。

不浄とは肉を食べること、飲酒、経済活動、性欲を満たすことなどが当てはまります。その反動か、いつもポヤデーの前夜は、酒屋の前は黒い人だかりでいっぱいになりますが(笑)。ツーリストであっても、仏教徒でなくとも、ポヤデーに人前で飲酒すると法的に罰せられてしまいます。お酒の販売をしても処罰の対象です。そのためポヤデーの日はレストランやホテルで、お酒の提供はありません。

ポヤデーには学校や会社も休みになるのですが、何をするかというとお寺へ行って祈りを捧げます。ポヤデーでなくともお祈りは日常的なことなのですが、ポヤデーのお寺の賑わいは想像を絶します。今回は、コロンボの郊外にある大きな有名寺院「ケラニヤ寺院」でのポヤデーの様子をご紹介します。

スリランカの有名な寺「ケラニヤ寺」のポヤデーをレポート!

 

 次々と参拝に訪れる人々
次々と参拝に訪れる人々

ブッダはその生涯で三度スリランカを訪れたと言われていますが、三度目がこのケラニヤ寺院とされています。スリランカの仏教徒にとって、まさに聖地であるこのお寺。お寺の周囲100mは渋滞でごった返し、なかなか近付けません。
 

ケラニヤ寺の、寺院を飾るレリーフも見どころ
ケラニヤ寺の、寺院を飾るレリーフも見どころ


 

美しい壁画は圧巻(Conch Tour提供)
美しい壁画は圧巻(Conch Tour提供)
仏陀の生涯が描かれている(Conch Tour提供)
仏陀の生涯が描かれている(Conch Tour提供)

お寺近辺では警察官が交通整理に駆り出されています。仏教関連の出店もあれば、おもちゃや日用品の屋台もあったりして、まさに縁日といった様子。

ごった返す寺院内
ごった返す寺院内

参拝するときは白い服で行くのがよしとされており、聖地であるケラニヤ寺では白い服を着ていないととても目立ちます。白い服でなければダメということはありませんが、肌の露出が多い服(ノースリーブやひざが出るもの)では入場を断られます。 

 

お寺に近づくにつれて出店も増える
お寺に近づくにつれて出店も増える

不謹慎な言い方かもしれませんが、大人気の野外ライブに来たような感じです。みんなゴザや、携帯式の小さないすを持って参戦です。ポヤデーのお寺はすごいよ、とは聞いていたのでピーク時の朝と夜は避けたのですが……。夫と娘と、はぐれないようにしなくては!と心配になるほどの混雑ぶり。

縁日のような寺の参道と真剣に祈りを捧げる人々

 

「お花はいかが!」
「お花はいかが!」

お寺の入り口ではお供え物としてのお花が、市場の魚屋さんのような景気のよい掛け声とともに売られています。そして男性店員が、恋人にブーケを差し出すように渡しているのがなんだかおかしいです。

 

手慣れた手つきで束を作っていく   
手慣れた手つきで束を作っていく  

 

花屋の肝っ玉母ちゃん
花屋の肝っ玉母ちゃん

 

 静かに説法を聞く人たち
静かに説法を聞く人たち

寺院は広く、屋内でお坊さんの説法を聞いている人々、お供え物を奉納する列、オイルランプを灯す人々といたる所で、というか寺院内のすべての場所で祈りが捧げられています。

 

優しい表情のブッダ像  
優しい表情のブッダ像
白く大きな仏塔、一周しながらお祈りを捧げる
白く大きな仏塔、一周しながらお祈りを捧げる

 

一人静かに祈りに来る人もいる
一人静かに祈りに来る人もいる

歌うように祈る人や、じっと手を合わせて仏塔を見つめる人。こんなにも仏教が、スリランカの人々の心のよりどころになっているのだと知り、驚きの気持ちです。

 

かご盛りのお花、参拝の際そのまま置いたり少しずつ並べる
かご盛りのお花、参拝の際そのまま置いたり少しずつ並べる

ちなみにブッダに捧げるお花の香りはブッダのためのものなので、嗅いではいけません。そしてお花を捧げるのは理由があって、時がたてば枯れてしまう花は、永遠ではない若さ、命を忘れるなということだそうです。

 

 オイルランプの場所は熱気がすごく近づくのに少し躊躇してしまう
オイルランプの場所は熱気がすごく近づくのに少し躊躇してしまう

オイルランプの火も、同じ理由で灯すのだと教えてもらいました。ケラニア寺院のオイルランプの場所は、一つ一つが小さい炎でも多くの人が参拝に来ているので、近寄るだけで炎の熱気にたじろぐほどです。でもこの熱気もスリランカの人々が、今その「生」を燃やしているからなんだと思うと感慨深くもありました。

祈る姿はとても清らか
祈る姿はとても清らか


日頃、陽気でのんびりでちょっと適当なところもあるスリランカの人々。でも、この祈る姿は真剣そのもので、近寄りがたいほど清らかです。旅行に訪れた際には、こんなスリランカの人々の一面をぜひ垣間見てもらえたら。

参拝を終えて帰る人々の足取りは心なしか軽やか

 

祈りの後はお腹がすく!
祈りの後はお腹がすく!
夜に向けて活気が増していく花屋
夜に向けて活気が増していく花屋
子どもたちの楽しみは参拝後にあり
子どもたちの楽しみは参拝後にあり

 

スリランカを旅するなら、ポヤデーの日を選ぼう

 

たくさんのお祈りがあることが花の数でわかる
たくさんのお祈りがあることが花の数でわかる

ポヤデーは、国が定める祝祭日として発表されていますので、インターネットで「スリランカ 2020 ポヤデー」と調べれば日程がわかります。仏教にまつわる祝祭日ですが、宗教に関わらずスリランカの国民の休日です。

新型コロナウイルスの影響が世界的に深刻になっています。そんな中、スリランカに住む友人が聞いた街宣車のスピーチ。「コロナウイルスから身を守るために、みんなで一緒にお寺で祈ろう!」。もちろん行政から止められたそうですが、何ともスリランカらしい話なのでした(笑)。

 

もっと知りたい■

石野 明子
石野 明子

フォトグラファー。大学で写真を学んだ後、新聞社の契約フォトグラファーを経て2006年から女性誌やwebで撮影するフリーランスに。16年スリランカ・コロンボに移住し、写真館「STUDIO FORT」をオープン。著書に『五感でたのしむ! 輝きの島スリランカへ 』イカロス出版 

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