温泉成分を医学や科学の力で分析すると

温泉豆知識[2]温泉の種類はいくつある?

公開日:2018.09.17

更新日:2018.09.25

日本人ほど温泉好きな国民はいませんね。 温泉を、病気の治療から健康増進、レジャー、療養にまで広く利用するのは、世界の中でも日本だけです。その種類はいったいいくつあるのでしょうか。

別府温泉
        別府温泉は、すぐ近くの源泉でも、含む物質によって色が異なる  写真:河崎貴一

温泉は法律によって10種類に分けられている

温泉の健康効果が、あらためて注目されています。

医学関係者を中心に構成する日本温泉気候物理医学会が、最新の医学的知見と科学的根拠に基づいて、温泉の適応症(効能)を環境省に提言し、2014年に新しい基準の温泉法に改正されました。それにともなって、温泉に掲示される泉質の種類を意味する「掲示用泉質」が変更されています。

日本の温泉は、温泉法によって、温度や含有成分によって分類されています。

温泉法によれば、温泉とは、「地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く)」で、源泉の温度が「摂氏25度以上」と決められています。源泉の温度が体温より低いものでも、25度以上であれば温泉と表示できるので、加温して温泉と名乗っても問題はありません。

ちなみに、25度より低く、傷や病気に効能がある成分を含む湧出泉は、「鉱泉」と呼んで、温泉とは区別しています。

一口に温泉と言っても、10種類もあります。従来の規定では、含有成分によって「塩化物泉」や「炭酸水素塩泉」「硫酸塩泉」「二酸化炭素泉」「含鉄泉」「酸性泉」「含よう素泉」「硫黄泉」「放射能泉」の9種類に分類されていましたが、先の基準の改訂で「単純温泉」が掲示用泉質に加わりました。

 

日本の温泉は3000か所を超える!

掲示用泉質は、源泉1キログラム中の含有成分によって、次の表のように定められています。

 この規定によれば、室町時代の禅僧・万里集九(ばんりしゅうく)が選んだ日本三名湯の泉質は、兵庫県・有馬温泉(含鉄塩化物泉、炭酸水素塩泉、放射能泉)、群馬県・草津温泉(酸性泉、硫黄泉)、岐阜県・下呂温泉(単純温泉)とバリエーションに富んでいるのがわかります。同様に、日本三古泉の泉質は、有馬温泉(前出)、愛媛県・道後温泉(単純温泉)、和歌山県・白浜温泉(塩化物泉、炭酸水素塩泉)です。

ひとつの温泉で複数の泉質があるのは、含有成分が掲示用泉質の複数の基準を満たしていたり、同じ温泉でも源泉によって含有物が違っていたりするからです。

大分県の長湯温泉(二酸化炭素泉)は、入浴して数分以内に二酸化炭素の気泡が肌につく  写真:河崎貴一

個人的におもしろいと感じた温泉は、北海道・音更(おとふけ)町の十勝川温泉でした。泉質は、塩化物泉と炭酸水素塩泉ですが、掲示用泉質には分類されないモール温泉と呼ばれています。「モール」とは、ドイツ語で泥炭の意味。この温泉は非火山性の温泉で、温泉が出るのは、木や草などの植物が堆積した泥炭層に含まれる水分が微生物の発酵作用で水温が上がるためとか、地球の表層部にある水分が地熱で温められるから、などの説があります。泥炭層を透過して湧出するので、植物起源のフミン酸などの有機物を含んで茶褐色をしているのが特徴です。

十勝川温泉の足湯。泥炭の有機物を含んで茶色をしている  写真:河崎貴一

 

十勝川温泉の地層に含まれるモール(泥炭)  写真:河崎貴一

日本の温泉地数は、環境省によれば約3040か所。泉質が異なれば、けがや病気などの適応症も変わります。自分の体調に適した泉質の温泉を選ぶと、温泉の利用の仕方も広がってきます。

次は、温泉の効能について解説します。


■温泉豆知識

[1]日本に温泉が多い理由とは

[3]温泉の効能は現代病もカバー

[4]温泉の正しい入浴法とは

[5]健康回復に役立つ足湯と手湯


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温泉の種類や効能など、知っておくとちょっぴり役に立つ豆知識

河﨑 貴一

日本文藝家協会、日本ペンクラブ会員。科学、医学、歴史、ネット、PC、食のルポルタージュを多く執筆。著書に『インターネット犯罪』『日本のすごい食材』(ともに文春新書)、パソコン・ガイドブック『とことん使いこなそう!』シリーズほか多数。

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