世界文化遺産、

初海外の母が大満足!スリランカの魅力を詰め込んだ旅

公開日:2019.12.11

東洋の真珠と呼ばれるスリランカの魅力を、現地在住の日本人フォトグラファー石野明子さんがお伝えします。2019年4月に起きた凄惨なテロ事件後、平和を取り戻したスリランカに親子で旅をした旅行記です。初の海外の母親も大満足だった旅の内容とは?

スリランカで起きたテロとその後

スリランカ

2019年4月、悲惨なテロがスリランカを襲いました。

多くの被害者を出し、観光立国のスリランカが受けた影響は本当に甚大でした。もともとは、テロの気配など感じられない平和な国。世界的に有名なガイドブック「ロンリープラネット」が選ぶ「2019年行くべき国」の第1位にも輝いた、その矢先でした。

フォトグラファーである私はテロの後、カメラを持って街をよく歩きました。理由は、ニュースでは怖いことばかりが流れるけれど、実際はどうなのか知りたかったからです。ひどい事件の後もスリランカの人々は日常を取り戻そうと、そして取り戻さないと生活していけないからと、テロに屈することなく前を向いていることがわかりました。そしてカメラを向けるととても素敵な笑顔を見せてくれたのです。

テロ後は空港、ホテル、観光名所でもセキュリティーレベルが上がりました。荷物検査等の手間は増えたものの、安心して利用できるようになりました。日本の外務省も、6月には危険レベルを下げ、私たちは「ぜひスリランカに来てください」と言えるようになりました。

「スリランカはもう大丈夫」。そう思った私は、テロから半年たった2019年10月に、一時帰国していた日本からスリランカに戻る際、ふと「一緒にスリランカに行かない?」と70代の母を誘ってみました。

10年ほど前に、「全部旅費を出すから台湾に行こう」と誘ったら「疲れそうだし、めんどくさそうだから行かない」と言っていた母なので、まぁ断られるだろうと思っていました。が。「行こうかな」という返事が! 誘っておいてびっくりしました。

なんせ母は海外旅行が初めて! 行きの便は私が一緒ですが、帰りは直行便といえども1人で国際線に乗ることになります。そしてすべての手続きが、初体験。緊張しながら、初のパスポートを取得しました。パスポート用の写真は私が撮影したのですが、「老けて見える!」とこちらの腕を疑ってくるので、「真実です」と返しました(笑)。

決まった毎日を送る彼女にとって旅の準備すらも、とても刺激的だったように思います。

そしていよいよ出発の日。モルディブ経由の10時間ほどのフライト(2019年10月からは直行便となりました)では、映画を見ながら機内食やビールを楽しみ、とてもリラックスしていました。スリランカ航空のCAさんの制服である、サリー姿にも惚れ惚れしていました(華やかな顔で腰位置が高い!)。

コロンボ国際空港に到着後は、我が家に数日滞在し、一緒にスリランカを回る旅に出発しました。

スリランカ親子旅初日は、ビーチリゾートへ

東海岸トリンコマリーのビーチ

東海岸トリンコマリーのビーチ

初日は、朝4時半に出発。スリランカ空軍が経営する国内線で、私たちが住む西海岸コロンボから東海岸へひとっ飛び。車では7時間かかるところが、1時間ほどで行けてしまいます。

スリランカの内陸地にある大自然を飛び越えると、青い海が広がります。ここ東海岸「トリンコマリー」は白い砂浜、青い海で有名です。トリンコマリーではビーチリゾートに2泊しました。コロンボ市内で、ノースリーブのワンピースと水着を購入していた母。ホテルのプールで泳ぎ、シャワーを浴びて軽やかなワンピースでディナー前にバーで私と一杯。日本では気後れしてできないようなことにも、すんなり挑戦していました。ちなみに母は、軽い口当たりのスリランカビール「LION BEER」が、お気に召したようです。

昭和20年代、地方生まれの母にとっては、自分のことよりもまずは家族、そして世間体が大事であって、自身を癒やす旅なんて考えたこともなかったのかもしれません。「こんなに、ぜいたくしていいのかな?」と、旅の途中に何度も言っていました。

スリランカカレーにもトライ。でも食べる前にスケッチ。

スリランカカレーにもトライ。でも食べる前にスケッチ。

ビーチに面した海風が吹き抜けるメインレストランで、ビュッフェを楽しみます。母は食に抵抗はない方ですが、スリランカカレーも楽しみたい反面、食べ慣れた西洋料理もある方が安心なようでした。外国人観光客が泊まるようなスリランカのホテルでは、ビュッフェ形式のところがあるところがほとんどです。

旅用のワンピースを着た母と朝日を見にビーチへ

旅用のワンピースを着た母と朝日を見にビーチへ

朝、一緒に早起きをして、白い砂浜から朝日を見ました。同じような写真を何枚も携帯で撮っていた母。それは、この景色に感動してのことなのだろうとうれしくなりました。

リゾートホテルの朝食、まずはスターターから

リゾートホテルの朝食、まずはスターターから

2泊目のリゾートホテルでは、朝もコース料理で始まります。「朝から食べ過ぎちゃう!」と言いつつも満足気です。料理も片付けも人任せなのが最高にうれしいのだそうです。

スリランカの自然と歴史を感じる世界遺産

孤独な王が造った岩の宮殿
孤独な王が作ったシギリアロック


東海岸からは、ツーリストカー(※1)をチャーターし、旅を続けました。スリランカでは、交通インフラが整っていない分、こうしたツーリストカーを気軽に、そして低料金で頼むことができます。日本語を話すドライバー兼ガイドもいるので、スリランカを深く知りたいときにはとてもおすすめです。

※1ツーリストカー=日数や距離によって料金が決まります。臨機応変に希望に応えてくれるところもツーリストカーのいいところ

ドライブ中に道端のキングココナツジュースを試す。スリランカでは定番のジュース。
ドライブ中に道端のキングココナツジュースを試す。スリランカでは定番のジュース。

ドライバーさんに「ここは水牛ヨーグルトの産地ですよ」「ここはスリランカ最古の貯水池があるところです」と説明を聞きながら、有名な世界遺産「シギリヤロック(※2)」のあるシギリヤへ向かいます。
※2シギリヤロック=実父を殺し王位に就いたカーシャパ王が弟の復讐を恐れて200m以上ある大きな岩の上に作った宮殿。世界的に有名な世界遺産です。

 

自然とともにある最高のホテル、ヘリタンスカンダラマ

シギリヤロックは登らずとも眺めて楽しめる(ホテル アリヤ リゾート&スパ)

シギリヤロックは登らずとも眺めて楽しめる(ホテル アリヤ リゾート&スパ)

母はリウマチを患っているのでシギリヤロックに登るのは諦め、趣味の水彩画でホテルから望むシギリヤロックを描いていました。

ここではスリランカが生んだ天才建築家ジェフェリー・バワの最高傑作とも言われる、「ヘリタンス・カンダラマ」に泊まりました。自然との融合を目指したエコホテルで、スリランカの自然を愛したバワらしいデザインに満ちたホテルです。

ジャングルに埋もれるように造られたヘリタンスカンダラマ

ジャングルに埋もれるように造られたヘリタンスカンダラマ

ホテルの全長は1km、自然を壊すことなく建てられたためホテルの壁から大きな岩が飛び出したりしています。創業から25年がたつものの、デザインが古びることは一切なく、むしろとても刺激を与えてくれるホテルです。

岩も植物もホテルの一部(ヘリタンスカンダラマ)

岩も植物もホテルの一部(ヘリタンスカンダラマ)

カンダラマの客室のテラス、猿が訪れる(ヘリタンスカンダラマ)

カンダラマの客室のテラス、猿が訪れる(ヘリタンスカンダラマ)

スリランカの自然の豊かさ、美しさを知るのには、絶好のホテルです。母も水彩画の道具を携えて、ホテル内を散歩、ホテルのカフェでフレッシュジュースで一息ついていました(南国スリランカのフレッシュフルーツジュースは絶対飲んでくださいね)。ここでは、のんびりと一日ホテルで過ごしてほしいと思います。

旅の途中に2回ほどアーユルヴェーダも体験、旅の疲れを癒しました

旅の途中に2回ほどアーユルヴェーダも体験、旅の疲れを癒しました

古都キャンディは、仏教徒の聖地

シギリヤを出て、次は古都キャンディへ。仏教徒の聖地、ブッダの歯が祀られた仏歯寺があるところです。

早朝の仏歯寺

早朝の仏歯寺

1日に3回プージャと呼ばれる礼拝の時間があります。私たちは5時半から始まるプージャに合わせて朝早く参拝に行きました。

装飾が美しい仏歯寺内部

装飾が美しい仏歯寺内部

仏歯寺は信仰心厚いスリランカの人々を垣間見るだけでも、とても感慨深いものがあります。そして建築、装飾も素晴らしく私の大好きな場所でもあります。

熱心に祈る人々(仏歯寺にて)

熱心に祈る人々(仏歯寺にて)

宿泊は、仏歯寺の目の前にある、160年以上の歴史を持つクイーンズホテルに。ブリティッシュコロニアルスタイルで、スリランカを代表する歴史的ホテルの1つです。

宿泊したクイーンズホテルの前で馬に乗った警官が交通整理

宿泊したクイーンズホテルの前で馬に乗った警官が交通整理

スリランカの鉄道に乗って、紅茶の産地へ!

列車の旅もまた楽しい、途中のナヌ・オヤ駅にて

列車の旅もまた楽しい、途中のナヌ・オヤ駅にて

次は、鉄道に乗って紅茶産地へ向かいます。

高原地帯をドライブ中に高原野菜の屋台で寄り道

高原地帯をドライブ中に高原野菜の屋台で寄り道

大きな荷物はツーリストカーに乗せ、降車予定の駅へ向かってもらいます。

私たちはおやつを買って、一等車に乗り込みました。キャンディから高原地帯ヌワラエリヤに近いハットンという駅まで3時間の列車の旅です。窓の外には茶畑が広がり茶摘みの女性や有名な滝も見ることができます。乗り合わせたスリランカ人の家族に、自家製おやつをもらったりとコミュニケーションが楽しめるところも列車旅のよさです。母は昼寝をしたり、旅でのメモをまとめたりしていました。

ホテルでアフターヌーンティーを楽しむ

一番下のトレイには自家製ジャムとスコーン(ジェットウィング セント アンドリュース)

一番下のトレイには自家製ジャムとスコーン(ジェットウィング セント アンドリュース)

お昼過ぎにハットン駅に着きホテルへチェックイン後、紅茶がおいしいホテルで、アフタヌーンティーをランチ代わりに楽しみました。クラシックな3段のトレイスタイルで小さなフィンガーフードと、おいしい紅茶をイギリス式庭園を見ながらゆっくり楽しみます。

美味しい紅茶が飲めるジェットウィング セント アンドリュース

美味しい紅茶が飲めるジェットウィング セント アンドリュース

紅茶は、希望の産地(※3)のものをいれてもらうことができます。宿泊したここのホテルではティーマイスターがおり、紅茶のテイスティング教室に参加することも可能です。そしていよいよ、スリランカの旅も終わりに近づきます。

※3紅茶の産地=スリランカは標高の差によって様々な産地の紅茶を楽しむことができます。ウバ、ダンブッラ、キャンディ、ヌワラエリヤなど7つの産地があります。

紅茶がおいしいホテル

洋館をホテルに改築していて重厚で上品な造り(ジェットウィング セント アンドリュース)

スリランカは、どんな年代の方も楽しめる!

旅の最終日、私たちが経営する写真館で民族衣装を着て記念写真。左はヘアメイク担当ス タッフ。

旅の最終日、私たちが経営する写真館で民族衣装を着て記念写真。左はヘアメイク担当スタッフ

母の最初で最後の海外旅行になるだろうと、スリランカの魅力をぎゅっと詰め込んだ旅にしました。

母もスリランカにはこんなにもさまざまな表情があることに驚いていました。そして人のよさにも。

母がスリランカを訪れているとき、日本では台風19号が猛威をふるい、被害の様子がニュースで流れていました。私たちが日本人と知ると、スリランカの人々は「台風は大丈夫でしたか?ご家族は?友人は?」といつも気にかけてくれました。

国立公園にジープに乗ってサファリにも出かけた

国立公園にジープに乗ってサファリにも出かけた

私の3歳の娘(母にとって孫)も同行していたのですが、人々の子どもに対する優しさにもびっくりしていました。ぐずってもあやしてくれたり、レストランでは特別メニューを作ってくれたり。そんなことも、母の旅に色を添えてくれました。

「最初で最後の旅」。だったはずだけれど、母は「また来たい」と言って日本に帰って行きました。とてもうれしい言葉でした。

母は数年前からリウマチを患っています。それでも、途中で体調を崩すこともなくスリランカ旅行を楽しむことができました。日本ではスリランカの情報はとても限られていますが、私はどんな年代の人も楽しめる国なのではないかと思っています。

1つだけ反省点……。もう30代後半にもなるのに、親子で旅行をしていると、ついつい母に対して言葉がきつくなってしまう私、まだまだ甘えている証拠だと思います。母は「はいはい」とやり過ごしてくれました。でも何歳になってもやはり母が大好きな私、一緒に旅ができたことは最高の思い出です。

 

石野明子さんのプロフィール

石野明子


石野明子
2003年、大学卒業後、新聞社の契約フォトグラファーを経て06年からフリーに。13年~文化服装学院にて非常勤講師。17年2月、スリランカ、コロンボに移住して、写真館STUDIO FORTをオープン。大好きなスリランカの発展に貢献したいと、その魅力を伝える活動を続けている。著書に「五感でたのしむ! 輝きの島スリランカへ」(イカロス出版)。

2021年1月14日午後10時30分~NHK総合「世界はほしいモノにあふれてる」で、スリランカが登場します。著者の石野明子さんも撮影に関わっている番組です。ぜひご覧ください。


 


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スリランカガイドブック

『五感でたのしむ! 輝きの島スリランカへ(旅のヒントBOOK)』1760円 イカロス出版刊

著者の石野明子さんが手がけたスリランカのガイドブックが発売中! 基本からローカルな情報まで、スリランカの魅力がたっぷり詰まったガイドブックです。
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石野 明子

フォトグラファー。大学で写真を学んだ後、新聞社の契約フォトグラファーを経て2006年から女性誌やwebで撮影するフリーランスに。16年スリランカ・コロンボに移住し、写真館「STUDIO FORT」をオープン。著書に『五感でたのしむ! 輝きの島スリランカへ 』イカロス出版 

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