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- 雪の青森旅!ストーブ列車でスルメ片手に太宰を読む
大の鉄道好きマンガ家・文筆家のYASCORN(やすこーん)さんが、食べて食べて、また食べる鉄道旅の楽しさをご紹介します。青森の魅力たっぷりの1泊2日旅の2日目は、青森駅ののっけ丼からスタート。太宰治の小説を片手にストーブ列車に乗り込みます。
朝ごはんは旬の魚をお好みで選べる「のっけ丼」
まだ前編を読んでいない方はこちら「雪の奥入瀬とストーブ列車・冬の青森旅(前編)」
「ね、なぜ旅に出るの?」
「苦しいからさ」
これは太宰治の小説『津軽』の書き出しです。太宰治は青森県五所川原市出身の作家。今回の旅は『津軽』を読んでから巡ると、より一層楽しめること請け合いです。
朝、まずはJR青森駅の駅前から歩いて5分の場所にある「古川市場」へ向かいます。こちらでは有名な「のっけ丼」がいただけます。のっけ丼とは、市場内を回って、好きな具材をご飯の上にのせていき、オリジナルの海鮮丼を作ることです。
市場入り口の案内所で、チケットを買います。チケットは1,300円分と650円分の2種。私は1,300円分買いました。足りない分は現金でも支払えます。
まずは市場内をぐるりと一周。好きな具材にあたりをつけておきます。最初にご飯を買ったら、あとはチケットと好きな具材を選んで引き換えていくだけ。最後におみそ汁分のチケットを1枚残しておくといいですよ。
場内には食べる場所が数か所あります。お醤油などはテーブルにありますし、お茶は無料でいただけます。のっけ丼は青森名物・ホタテの刺身をはじめ、カンパチ、イカなど。みそ汁は数種類のうち十三湖のしじみのみそ汁を選びました。揚げたての「イカメンチ」も現金で購入。旬の魚はとても脂がのっていて、特に今の時期ならではの昆布〆のタラが美味でした。
列車を上手に乗り継いで、慎吾列車を見学
今日はJR五所川原駅まで行って、隣接する津軽五所川原駅から津軽鉄道のストーブ列車に乗車します。JR五所川原駅まではJR奥羽本線とJR五能線を経由して向かうのですが、懸念されるのは、五能線が風による遅延や運行中止が多い路線だということ。(記事最後の地図を参照してください)
前日までは吹雪いていたそうで心配でしたが、ほぼ時刻通りに到着できました。
到着が遅れるのを見越して早めに出発しましたが、もしかしたらその前に出発する列車に間に合うかもしれない、という考えが頭をかすめました。ストーブ列車は昼近くに乗る予定で、それまで時間に余裕があります。到着したJRホームから急いで津軽鉄道ホームに向かい、普通車両に乗り込みました。きっぷを買っていない場合、料金は車掌さんに自己申告して支払います。
急いで普通列車に乗り込んだのには、訳があります。実は嘉瀬駅の引込み線にある慎吾列車「夢のキャンパス号」に会いたかったのです。これは1997年に香取慎吾さんがテレビ番組で津軽鉄道の車両に地元の子ども達とペイントした車両です。そして20年後の2017年に再び香取慎吾さんが、その時の子ども達と塗り直したのです。それぞれの番組をリアルタイムで観て、感動したあの列車が目の前にありました。
ストーブ列車では金木駅まで行くつもりですが、嘉瀬駅はその1つ手前。列車本数の少ない津軽鉄道では、次の列車まで1時間半くらい間が空くことも。先ほどの下り列車で嘉瀬駅に行けば、15分後に反対方向から来る上りの普通列車ですぐ津軽五所川原駅に戻ることができると気付いたのでした。待合室にはメッセージが書き込めるノートが置いてありました。私もSMAPファン、そしてNAKAMAとして一言書き残してきました。
ストーブ列車で、酒のつまみにするめを焼こう!
再び津軽五所川原駅に戻ります。一度改札外に出て、窓口できっぷを買いました。ストーブ列車は乗車券以外にストーブ列車券も必要です。ストーブ列車の車両は2両、1両目が個人客用、2両目が団体用。そしてストーブ券のいらない普通車両の3両編成です。座席はいずれも指定ではなく、自由席です。
いよいよ乗車。レトロな木の床や網棚、そしてストーブの匂いに懐かしさを感じます。寒い外とは裏腹に、ストーブの横は熱いくらいです。火の勢いが弱まると、車掌さんが石炭を入れにきてくれます。目の前で石炭がくべられるのを見て、北国にいるんだなあ、という実感が湧いてきました。
この日はかなり混んでいました。なんとかストーブ横の座席を確保し、スルメとお酒を購入。スルメは自分で焼くのではなく、アテンダントさんに渡すとストーブの上に乗せて手でギュウギュウと押して焼いてくれます。軍手をしているとはいえ、熱くないのか心配になりますが、慣れているので大丈夫だそうです。
実はストーブ弁当も予約していました。3日前までの予約で2個から注文できるとの規定ですが、その日に他の予約が入っていれば、1個でも受けてくれるそうです。竹カゴに入ったお弁当は地元の食材がふんだんに使われた、お酒のつまみにもぴったりな内容でした。
金木駅までは30分足らず。お弁当を食べて、スルメとお酒を……となるとちょっと慌ただしいです。列車メインで楽しみたいのであれば、終点の津軽中里まで行き、再びストーブ列車で戻るのがよいかもしれません。
下車したら先頭車両へ。この駅では今となっては全国でも珍しくなった「タブレット交換」が見られます。タブレット交換とは列車が単線区間でスムーズにすれ違うための通行許可証みたいなもの。これを手前の駅でやりとりすることにより、衝突事故が防げます。
太宰ゆかりの地を巡り、思いをはせる
金木駅から歩いて7分の「斜陽館」へ。こちらが太宰治(本名・津島修治)の生家です。国の重要文化財にも指定された建物は、庭など含め約680坪の大豪邸。1歩入ると、まず土間の広さに驚きます。
1階は11室の和室。仏間を含む4つの座敷の襖を外せば63畳の大広間になるそう。襖絵や装飾など、1つ1つ見ていくと、結構時間がかかります。一番奥の蔵には、太宰の直筆原稿や執筆用具、着用していたマントなども展示されています。
2階は和洋折衷の作り。津島家が手放し、その後旅館「斜陽館」として使われていました。その頃は、襖に「斜陽」の文字が書かれている部屋が1番人気だったとか。1度泊まってみたかったです。
最後に自撮りして、斜陽館から移動。目の前の敷地を抜けた右手に「雲祥寺」という、やはり太宰ゆかりのお寺があります。作品『思ひ出』の中に書かれていますが、こちらには太宰が幼少の頃に見て泣き出したという7枚の「地獄絵図」の掛け軸が展示されています。特に恐ろしいものが描かれているのは下側部分に集中していて、まだ小さい太宰は尚更怖かっただろうと想像しました。
斜陽館から歩いて5分ほどのところに、「太宰治疎開の家」(旧津島家新座敷)があります。こちらもぜひ見ておきたいところ。もともと斜陽館とつながった離れとして作られましたが、津島家が手放したあと、離れの部分のみ移設されました。かつて太宰はこちらの家で作品のほとんどを書いたそうです。
金木駅に戻り、再び津軽五所川原駅までのきっぷを買います。車内でも清算できますが、津軽鉄道のきっぷは硬券なので、せっかくなら買って記念に持っておきたいですね。乗車券は、「太宰治生誕110年記念乗車券」の絵柄を選びました。
帰りの新幹線では、もちろん駅弁をいただきます!
帰りの新幹線では青森駅で買った駅弁「帆立釜めし」をいただきます。茶飯の上に錦糸卵や小ぶりの帆立煮がぎっしりと。帆立は柔らかくて数も多く、十分食べ応えがありました。つがるリンゴシードルとの相性もよかったです。
太宰治の小説『津軽』の中には、リンゴ酒や貝の味噌焼きも出てきます。余裕があれば『思ひ出』もぜひ読んでおきたいところ。五能線や津軽鉄道に乗って、小説の世界を旅してみてください。
次回は「水戸の梅まつりとおさかな天国の癒やし旅(前編)」です!
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