新しくなった特急踊り子号で、伊豆の温泉巡りへ!
2020.04.152024年04月25日
YASCORN 鉄道食べすぎひとり旅(前編)
3歩進んで2歩下がる!天浜線で静岡ローカル満喫旅
大の鉄道好きマンガ家・文筆家のYASCORN(やすこーん)さんが、気軽に行ける1泊2日の女性ひとり旅をご紹介。今回は、1日乗り放題きっぷで、走行区間を行ったり来たりする旅。初日は、天竜浜名湖鉄道で静岡ののどかな景色とグルメを楽しみます。
静岡県に向けて出発!「幸せの左富士」を発見
「3歩進んで2歩下がる」
このフレーズ、メロディ付きで頭に浮かぶ方も多いのではないでしょうか。
ご存じの通り、水前寺清子さんの歌「365歩のマーチ」の一節です。
水前寺清子さんの出身地で芸名の由来となった、熊本市にある水前寺公園(水前寺成趣園)の近くに小学生の時に住んでいたこともあり、この歌は私にとって馴染み深いものとなりました。今回は3歩進んで2歩下がる、行ったり来たりの旅をしてみたいと思います。
朝食の駅弁を食べつつ、東京駅から東海道新幹線「こだま」に乗り、掛川駅で下車します。
窓からは富士山がくっきり。通常、東京からの下りでは、右側に富士山が見えます。しかし私が座っていたのは進行方向左、海側の座席です。
実は静岡駅を過ぎ、安倍川の鉄橋を渡って線路がカーブするあたりで、一瞬富士山が左側後方に現れるのです。見られたらラッキーな「幸せの左富士」とも呼ばれています。今日は何かラッキーなことがあるかもしれません。
JR掛川駅(北口)は三角屋根が印象的な黒い木造の駅舎。1940(昭和15)年、当時の外観を復元しつつ、2014年に建て替えられました。そして少し離れた右隣に天竜浜名湖線の掛川駅があります。こちらも三角屋根のかわいい駅舎です。
天浜線掛川駅窓口で、1日フリーきっぷを買って出発です。天浜線の駅舎には、数多くの飲食店が併設されています。グルメガイドには全ての情報が掲載されているわけではないので、行きたいお店がある場合は、前もって調べておきましょう。
天浜線の見どころは、国の登録有形文化財
天浜線は、静岡県の第三セクターで、単線のローカル線。その前身は国鉄二俣線でした。沿線は、のんびりとした風景が続きます。無人駅も多く、ワンマン運転なので、降りる際は車両前方から、運転士さんにきっぷを見せて降ります。座席は基本、ボックスシート。以前乗った時は、景色を眺めながら駅弁を楽しみました。
国の登録有形文化財に登録されている駅舎や橋梁が数多くあるのも、天浜線の見どころです。天浜線の建造物は、1940年(昭和15年)からずっと現役。昭和の風景がいたるところにあります。電線がないので、空間が抜けて、写真を撮るにも適した路線です。
掛川駅から約1時間で天竜二俣駅に到着。天浜線の本社や車両基地がある場所です。
ここまで途中下車せず一気に来たのは、車両基地で行われる「洗って!回って!列車でGO!」という体験イベントに参加するため。こちらは予約制で、主に土日祝日に行われています。
「転車台見学ツアー」というのものも毎日昼過ぎに行われています。こちらは予約不要です。
「洗って!回って!列車でGO!」ツアー
「洗って!回って!列車でGO!」ツアーの参加者は40名ほどで満員でした。
係りの方に誘導され、先ほどのホームへ。駅舎の説明を聞き終わった頃に、空の列車がやってきました。それに乗り込んで、乗車したまま洗車機の中を通り「洗って!」を体験。
水と泡のすごい光景になるのかと思ったら、意外とあっという間でした。
今度はそのまま「回って!」体験。車両が転車台に乗って方向転換します。転車台は車両の向きを変えるための施設。乗車したまま転車台に乗ることはまずないので、貴重な体験です。そのあと下車して、今度は外から転車台に乗る車両を眺めます。ちなみにこの転車台も1940年からずっと使用。ここから先は、通常の転車台ツアーと見学コースは同じです。
そして扇形車庫を眺めながら、横にある鉄道歴史館へ。国鉄時代に使われていた駅名標や鉄道機器など、歴史が詰まっていて、小さいながら見応えがあります。
説明を聞きながら、今も使われている運転区休憩所の建物の間を歩き、見学は続きます。
こちらはかつて機関士さんたちが使用した大浴場。蒸気機関車時代はここで煤や汗を流していました。今は数々のヘッドマークたちがお風呂に入っています。
さて、駅に戻って予約しておいた「まいたけ弁当」を受け取ります。こちらは私が大好きなお弁当。天竜産まいたけの炊き込みご飯と、おかず類も種類が豊富で一つ一つ手が込んでいます。天竜二俣駅で土日祝日のみ販売。ぜひ予約して食べてみてください。
そして駅で販売している静岡の地酒「花の舞」も購入。常温で販売されているのですが、事前に頼めば、なんと冷蔵庫にいれて冷やしておいてもらえるそう。ツアー前に急いでお願いし、食べる頃にはほんのり冷えておりました。
さあ、ここからがついに「3歩進んで2歩下がる」行ったり来たり旅のスタートです。まずはさらに先を進みます。天竜二俣駅を出発して、宮口駅へ。二俣本町駅を過ぎると、下流の広くて穏やかな天竜川を渡ります。ここも見どころです。
宮口駅の事務室だった場所は、今は駄菓子屋さんとなっています。しかし残念ながら、この日はお休み。実は天竜二俣駅にもラーメン屋さんが併設されていました。いつも駅弁を食べてしまうので、なかなかチャンスがありませんが、そのうち必ず。
地酒「花の舞」の酒造を見学!
次に乗ろうとしている列車は30分後。宮口駅から歩いて5分ほどのところに、先ほど買った地酒、「花の舞」の酒造があります。今日はお休みと思っていたのですが、念のため電話してみたら、営業しているそう。なぜか私が勘違いしていたようです。
左富士のラッキーが、今ここに! 走って向かいました。
軽く酒造見学をさせていただき、試飲コーナーへ。試飲できる数が多くて驚きました。
しかも自分で自由に飲み比べできます。生原酒がおいしい。意外と気に入ったのは、ヨーグルト酒。静岡県産米100%の日本酒と、地元浜松の「いなさ牛乳」のヨーグルトをブレンドしているそう。買おうかすごく迷いましたが、今日も明日もずっと移動の旅なので、泣く泣くあきらめました。通販で買おう。
結構いただいてしまいましたが、同じく用意されていた仕込み水を飲んでスッキリ。やっぱりお水がおいしいとお酒がおいしくなるのだなあ、と感じつつ、駅へ戻ります。
予定していた列車を1本見送りましたが、7駅進んで西気賀駅へやってきました。
こちらには、フランス料理のグリル八雲が併設されています。こちらもこの時間は営業していませんでした。このレストランのコーンポタージュスープは美空ひばりさんが愛した味だったそう。コーンスープ……コーン好きの私としては、いつか食べないとなりません。
西気賀駅から一駅戻って気賀駅へ。こちらは井伊直虎ゆかりの地の最寄り駅。2017年の大河ドラマで井伊直虎が取り上げられた際は、賑わったようです。
駅舎にはラーメン屋さんが入っていますが、時間が15分しかなく、あきらめました。
冬はゆりかもめと遊べる駅と絶品うなぎ弁当
そこからまた新所原方面に進んで三ヶ日駅に向かいます。だんだんお腹も空いてきました。三ヶ日駅舎にはハンバーガー屋さんが入っているはず。今度こそ……と思っていたのですが、三ヶ日駅に行った後、また戻って下車する予定だった浜名湖佐久米駅に、ゆりかもめの大群がいました! 浜名湖佐久米駅は浜名湖に面し、冬季はゆりかもめが飛来する駅として有名。しかし最近暑かったので、時期的に、まだだと思っていたのです。
思いがけない出会いに、三ヶ日駅まで行くのをやめ、浜名湖佐久米駅で下車してしまいました。きっとこれも左富士のラッキーです。
駅舎に併設されている「喫茶かとれあ」でゆりかもめのえさとして、細かくしたパンが100円で売られていました。ホームには、ほぼ毎日ゆりかもめに餌付けしているボランティアの方がいて、「えさは投げるんじゃなくて持って見せるといいよ」とアドバイスをいただきました。
最初はおっかなびっくりでしたが、だんだん慣れて、頭にもとまるように。デジャブを感じます。夕日が傾いてくると、ゆりかもめたちはえさに見向きしなくなり、どこかに飛んで行ってしまいました。鳥目だから、えさが見えなくなるそうです。三ヶ日駅まで行かず、この駅で降りておいて正解でした。1本遅かったら、会えないところでした。
寒くなると、飛来する数も増えてくると思います。行かれる際は、ぜひ明るいうちに。
喫茶かとれあでコーヒーを飲んで列車を待ちます。ゆりかもめと遊んでいたので、結局、最後は予定通りの時間となりました。ここで何か食べてしまおうかと思いましたが、あと1時間足らずで、うなぎ弁当を受け取ることになっています。うなぎを美味しく食べたいので、グーグーと鳴るおなかをなだめながら、我慢しました。
天浜線終点の新所原駅。駅舎内の改札横にうなぎ屋さんがあるので、こちらのお持ち帰り弁当を駅弁、と言うこともあります。お弁当はあらかじめ予約しておけば、時間に合わせて作っておいてくれます。昼ならお店の中で食べられます。
新所原駅からJR東海道線で、本日泊まるホテルのある豊橋駅へ。ホテルの部屋でようやくうなぎを広げました。新聞紙に包まれていたのでまだ温かいです。昼間に残しておいた日本酒も一緒に開けました。
あっ、おなかが空きすぎて、写真を撮る前にお箸を入れてしまいました……。大きいうなぎでしたが、軽くペロッと食べられます。さあ、明日も体力勝負です。
前もって時刻表を見つつ計画しておけば、急な予定変更でも、対応しやすくなりますよ。
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