首のシワの種類とできる原因

首のシワには、いくつかの種類があります。ここからは、首のシワの種類とそれぞれの原因について見ていきましょう。

首の横ジワの原因：皮膚のハリ・弾力低下

首の横ジワは、皮膚の折り目によってできる年輪のようなシワです。生まれつきのこともあり、若い人にもできることがあります。

首の横ジワは、加齢や乾燥、紫外線ダメージによって皮膚のハリ・弾力が低下することが原因です。皮膚のハリや弾力を保っているコラーゲンやエラスチンの量が減ると、横ジワが残りやすくなります。

首の縦ジワの原因：筋肉の拘縮

首の縦ジワは、首まわりの筋肉である広頚筋（こうけいきん）の拘縮が原因です。広頚筋の柔軟性や伸縮性が失われると首の皮膚がたるみ、首の縦ジワが目立つようになります。

また、コラーゲンやエラスチンの減少も首の縦ジワの原因の一つです。首の縦ジワは、皮膚が薄くなった人や、痩せている人に見られることが多いです。

首のちりめんジワの原因：乾燥

首の皮膚は薄いため、目元や口元と同じように細かなちりめんジワや小じわができやすい部分です。ちりめんジワの主な原因は乾燥で、スキンケアをしっかり行わないと首の皮膚から水分が蒸発して、乾燥につながります。

紫外線は肌内部のコラーゲン、エラスチンにダメージを与え、潤いを保持する機能を低下させてしまうため注意しましょう。

首のたるみ：筋肉の衰え

首の下には、広頚筋（顎下の骨から鎖骨までを覆う薄く平らな筋肉）があります。加齢などの影響により広頚筋と首の皮膚が緩んでくると、広頸筋が垂れ下がって、首全体がたるんできます。

首のたるみが進行すると顎もたるみ、首と顎の境目がはっきりしなくなり、フェイスラインのもたつきや、顔が大きく見えるなどが起こります。首の横ジワがくっきりすることで、皮膚のたるみに見えることも。

広頚筋の衰えは、二重あごやほうれい線の悪化にもつながるため、注意が必要です。

首のシワの全体的な原因：姿勢、紫外線、乾燥

悪い姿勢や紫外線、乾燥は首にシワができる原因です。中でも、姿勢は首のシワに大きな影響を与えます。

下を向く姿勢が続くと首の皮膚に折り目がつきますが、この状態が長く続くと折り目の形状が記憶されてしまい、シワになります。スマートフォンやパソコンを見ているときに下を向き過ぎていたり、猫背になっていたりすると、首のシワにつながってしまうことに。

また、猫背や下向きの姿勢によって首の筋肉が衰えると、呼吸が浅くなったり、食事をうまく飲み込めなくなったりと、生きるための大切な体の機能の低下につながるため、注意しましょう。

首のシワ治療ができる美容医療の施術

首のシワ治療は、美容皮膚科や美容外科などで施術を受けられます。美容医療の施術にはいくつもの種類がありますが、首のシワ治療として有効なものは、主に以下の3つの種類に分けられます。

• 照射系の施術
• 注入系の施術
• 手術系の施術

治療ではなく、美容を目的として行う美容医療の施術は保険が適用されないため、費用はクリニックによって異なります。費用相場をチェックしたり、いくつかのクリニックを比較したりするといいでしょう。

なお、施術を受ける際は適切な病院・クリニックを選ぶことが大切です。

照射系の施術

照射系の施術では、高周波や超音波、レーザーなどを照射して治療します。

HIFU（ハイフ）

HIFU（ハイフ）とは高密度焦点式超音波療法のことで、皮膚表面にダメージを与えることなく、肌の土台である筋膜などの引き締めができる治療です。ウルセラやダブロなど、さまざまな種類の機器があります。

HIFUは、照射によって脂肪細胞を破壊することもできます。首や顔のたるみ改善・リフトアップ治療の他にも、お腹や二の腕の痩身治療に使われることがあります。

ラジオ波（RF）

ラジオ波（RF）は高周波の一種で、体内で熱を発生させることでコラーゲン繊維を収縮させ、肌を引き締める効果があります。また、熱で収縮したコラーゲン線維が修復される過程で、線維芽細胞から新しいコラーゲン線維が造成され、シワ・たるみ改善効果が表れます。ラジオ波は、たるみ治療ができる機器であるサーマクール、テノールなどで使われています。

レーザー治療

フラクショナルレーザーやジェネシス（ロングパルスNd:YAGレーザー）などのレーザーを使った首のシワ治療もあります。

レーザーは超音波や高周波に比べると作用する深さが浅く、表面に作用することが特徴です。首の深い横ジワや縦ジワよりも、細かなちりめんジワに効果が期待できます。

注入系の施術

注入系の治療では、さまざまな薬剤を首に注入することで、シワの改善につなげます。

ヒアルロン酸注入

ヒアルロン酸注入では、ヒアルロン酸を注入することで、深く凹んだシワを膨らませてカバーします。ヒアルロン酸は人間の体内にも存在する成分であり、時間の経過によって吸収されていくため、効果を持続させたい場合は定期的に治療を受ける必要があります。

持続期間は薬剤の種類や注入量などによっても変わってきますが、およそ半年〜1年ほどが目安です。

脂肪注入（マイクロCRF）

脂肪注入（マイクロCRF）は、お尻や太ももなど自分の体から採取した脂肪細胞を利用した薬剤を首の横ジワ部分に注入する方法です。

脂肪注入の場合、一度定着すればヒアルロン酸よりも長期的な効果が見込めます。

ボトックス注射

ボトックス注射は、首の縦ジワが気になる場合におすすめの治療です。ボトックス注射には筋肉の働きを抑制する作用があり、拘縮した広頚筋の動きを抑えることで、首の縦ジワの改善につなげます。

個人差がありますが、持続期間は3、4か月ほどとなります。

その他の注入系の施術

この他にも、PRP皮膚再生療法やベビーコラーゲン、スネコス、リジュランなどの注入による首のシワ治療もあります。それぞれ異なる特徴があるため、施術を受ける場合は、医師に詳しく話を聞いて比較するといいでしょう。

また、注入治療とは異なりますが、ダウンタイムの少ない施術としてダーマペンや水光注射による首のシワ治療もあります。

ダーマペンとは、16本の極細針のついた専用機器で皮膚に微細な穴をあけることで、創傷治癒力を引き出す治療です。水光注射では、専用の注入機器を使って皮膚に直接、非架橋のヒアルロン酸などの薬剤を注入します。

顎から首にかけてのたるみによって首のシワができている場合は、余分な脂肪を吸引する脂肪吸引によって顎下や首のたるみを改善することもあります。

手術系の施術

手術系の施術は、照射系や注入系の施術を比べてしっかりした効果が見込めることが特徴です。しかしその分、副作用のリスクが高くなるため慎重に検討する必要があるでしょう。

糸リフト（スレッドリフト）

糸リフト（スレッドリフト）は、局所麻酔をして首に医療用の溶ける糸を挿入し、リフトアップする施術です。たるみによるシワに効果的で、ヒアルロン酸注入と併用して行われることもあります。

糸リフトの持続期間は約1年〜1年半ほどです。

ネックリフト

ネックリフトは、耳の後ろから襟足部分にかけてを切開し、首の筋肉を引き上げて固定したり、余分な皮膚を切除することで首のシワやたるみ、顎下のたるみを改善する治療です。

固定した部分で引き上げた広頚筋が癒着するため、半永久的な効果が期待できます。ただし、切開を伴うため、ダウンタイムや副作用のリスクが大きくなる点には注意が必要です。

首のシワ治療の選び方のポイント

ここでは、首のシワ治療の選び方のポイントをご紹介します。

仕上がり

施術によって、仕上がりに違いがあります。

症例にもよりますが、例えば、自然な仕上がりを求める場合は脂肪注入、症状がひどい場合には糸リフトや切開を伴うネックリフトが向いているでしょう。

なるべく手軽に施術を受けたい場合、注射のみで治療できるヒアルロン酸注入やボトックス注射はダウンタイムも少なく済み、費用も抑えられます。

効果の持続期間

首のシワ治療は施術の種類によって、効果の現れ方や効果の持続期間が異なります。

効果を持続させたい場合は定期的に施術を受ける必要があるため、事前にどのくらいの頻度で治療が必要になりそうかも確認しておくといいでしょう。

首のシワのセルフケア方法

深い首のシワはセルフケアだけで改善するのは難しいものの、毎日丁寧なケアを続けることで、首のシワの予防につなげられます。

念入りな保湿

首のシワをこれ以上増やさないためには、毎日しっかりスキンケアを行うことが大切です。乾燥はシワにつながるため、顔と同じように化粧水や乳液、美容液や保湿クリームを使って首も念入りに保湿するなど、丁寧なスキンケアを行うといいでしょう。

首の乾燥が気になるときは、セラミドやヒアルロン酸、アミノ酸、コラーゲンといった保湿成分が配合されているものを選ぶのがおすすめです。

また、首用のスキンケア商品であるネッククリームの中には、シワを改善する効果が認められた成分が配合されたものもあります。

「純粋レチノール」「ニールワン」「ナイアシンアミド」という3つの成分は、厚生労働省が認可した成分であり、シワの改善効果が期待できるため、ネッククリームを選ぶときはこれらの成分が入ったものを選ぶと効果的です。

徹底的な紫外線対策

普段、顔には日焼け止めを塗っているという人も、首やデコルテ部分まではケアしていないということも。紫外線は肌の老化を進行させ、たるみやシミなどさまざまな肌トラブルの原因になります。

日差しが強くなる夏の時期だけでなく、一年間を通して日焼け止めやつばの広い帽子、日傘などで首元やデコルテまで紫外線対策を行いましょう。

ネックマッサージやストレッチ

ネックマッサージやストレッチによって、首まわりの凝りをほぐすのもおすすめです。凝りが解消されることで首の周囲の血行が改善されます。

ただし、力を入れ過ぎたり強くこすったりすると逆効果になるため、やり過ぎや力加減には注意が必要です。

シワができにくい姿勢を保つ

スマートフォンを操作するときは、ついつい下を向いてしまいがち。下を向くと首にシワが刻み込まれてしまうため、スマートフォンを目線の高さに持ってきて操作するといいでしょう。

また、枕が高過ぎると首のシワにつながることもあり、枕の高さを見直すことも首のシワ対策になります。自分に最適な枕を選ぶと肩こりがラクになる効果も期待できるので、枕の買い替えを検討してみてもいいかもしれません。

表情筋トレーニング

表情筋トレーニングによって、顎下と首まわりにある広頚筋と胸鎖乳突筋を鍛えるのも、首のシワの改善や予防に効果的です。表情筋トレーニング「あごステップ」では、広頚筋と胸鎖乳突筋を鍛えることができます。

1. 姿勢を正し、頭、顔、体で1本の軸を作るイメージで立つ
2. 口はきゅっと閉じる。このとき、歯は噛み締めないようにする
3. 顎を上に上げて、顎下をぐーっと伸ばす
4. 広頚筋と胸鎖乳突筋を緊張させたまま、顎を惹く
5. ここまでの顎を上げ下げする動きを童謡の「あめふり」に合わせて繰り返し行う

首のシワ治療はさまざま！じっくり検討が大切

首のシワ治療にはさまざまな種類がありますが、効果の現れ方や持続期間、掛かる費用やリスクは異なります。どの施術が自分に合っているか、経験豊富な医師としっかり相談して決めることが大切です。

首のシワ治療を受けたからといって、老化を食い止められるわけではないため、毎日のセルフケアでしっかり首のケアをして、新しくできる首のシワ予防につなげましょう。

※効果には個人差があります。試してみて異変を感じる場合はおやめください。

監修者プロフィール：川村郁美さん

専業主婦から一念発起、アトピーに悩む長男をきっかけに、医師になることを志す。子育てと両立しながら医学部生・研修医時代を乗り越え、念願の皮膚科医に。現在は、病気から美容まで皮膚のお悩みにお応えでき、地元の皆様に愛され頼られるクリニックを目指して、静岡県富士市にてとみ皮膚科クリニックを運営。保険皮膚科と美容皮膚科の両方を大事にしながら、患者と日々向き合っている。

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