自分を幸せにするヒント
脚本家・中園ミホさん「心に空いた穴には、少しずつ幸運が落ちてくるから」
父を亡くしたときに支えてくれたやなせたかしさん。母の看病をしていた頃に見ていたドラマのセリフや映画のシーン。脚本家で占い師でもある中園ミホさんは、つらい時間は、後で必ず人生を豊かにしてくれるといいます。中園さんが語る、幸運をつかむ力とは?
INDEX
脚本家 中園ミホさんのプロフィール
なかぞの・みほ 東京生まれ。日本大学芸術学部卒業後、広告代理店勤務、コピーライター、占い師の職業を経て、1988年に脚本家としてデビュー。2007年に『ハケンの品格』で放送文化基金賞と橋田賞を、13年には『はつ恋』『Doctor-X 外科医・大門未知子』で向田邦子賞と橋田賞を受賞。26年には連続テレビ小説『あんぱん』で橋田賞を受賞。エッセイ『60歳からの開運』(扶桑社刊)など、占い師としての経験を活かした著書多数。公式占いサイト『解禁! 女の絶対運命」の監修も手がける。2026年10月22日から、新ドラマ『アナログナース〜デジタルってなんなんだよ!?〜』がスタート。
やなせたかしさんとは、子どもの頃に文通していた

2025年9月に最終回を迎え、数々の名ゼリフが大反響を呼んだNHK連続テレビ小説「あんぱん」。脚本を手掛けたのは、「Doctor-X 外科医・大門未知子」など多くのドラマを世に送り出してきた中園ミホさんです。
「あんぱん」の主人公のモデルとなった漫画家・やなせたかしさんとは、子どもの頃に文通していたといいます。
「10歳のときに父が突然亡くなり、ふさぎ込んでいた私に、母がやなせさんの詩集を買ってくれたんです」と中園さん。
その詩集『愛する歌』の中の〈たったひとりで生まれてきて たったひとりで死んでいく 人間なんてさみしいね 人間なんておかしいね〉という詩に心揺さぶられ、やなせさんに手紙を送ると、すぐに返事が届き、文通が始まりました。
「やなせさんは小学生の私の言葉にきちんと答えてくれる、本当にやさしい方でした。当時は漫画家としてブレイクする前で、舞台美術とかいろんなことをされていました。『またお金にならない仕事を引き受けちゃったよ』なんて正直に書いてこられる、飾らない方でもありました」
6歳の頃、似顔絵を描いてくれたやなせさん
その後、文通は自然に途絶えましたが、大学時代に街でばったり出会い、言葉を交わしたといいます。
「その頃、母が治らない病気になり、私は大学にも通わず家で看病していました。それを聞いたやなせさんは、すぐに電話をして母のことを励ましてくださいました。あのときのやさしさは、今でも胸に残っています」
歳月を経て、『あんぱん』の脚本を書くにあたり、手紙を読み返そうと押し入れを調べたところ、思わぬものが見つかりました。
「6歳の頃、百貨店の催しで描いてもらった似顔絵の色紙が出てきて、やなせさんのサインがあったんです。記憶にないんですけど、“もっと前からつながっていたんだ”と思えて、不思議な気持ちになりました」
今は色紙を額縁に入れて、部屋に飾っているそう。
「時々、自分の似顔絵に『大丈夫。あなたは大きくなったらやなせさんのドラマを書くことになるから、がんばって生きていこうね』と語りかけています」
失敗、失恋、喪失……“失”のつく経験が人を深く強くする
10歳で父を、19歳で母を失った中園さん。喪失経験は、その後の生き方に大きな影響を与えたと語ります。
「“失”のつく経験って実はすごく大切で、成功した経験よりも、その人を形づくっていくと私は思うんです。失敗、失恋、喪失……つらくて痛いけれど、そういう出来事が人を深く強くしていく気がします」
1年半の看病の末に母を見送った後は、「あまりにつらくて、毎日何をしていたのか、現実の記憶がほとんど抜け落ちている」と振り返ります。
「でも、その頃に食い入るように見ていたドラマのセリフや映画のシーンは、ありありと覚えています。たぶん当時の私は現実の世界にいられなくて、虚構に逃げ込んでいたんだと思うんです。そのおかげで救われたからこそ、脚本の仕事に惹かれていったのだと思います」
そして、中園さんはこう続けます。
「大切な人を亡くした後は、心にぽっかり穴が空いて、何も手につかなくても普通なんです。でも、その穴には少しずつ幸運が落ちてくる。つらい時間は、後で必ず人生を豊かにしてくれます。今は立ち直れないという方も、信じてほしいです」
運は生もの。動くべきときに動かないとつかめません

中園さんには脚本家の他にもう一つ、占い師という顔があります。
「14歳のときから、母の友人でもあった占いの大家・今村宇太子(いまむら・うめこ)先生に四柱推命を学び、20代の頃には、先生の事務所でアシスタントをしながら多くの方を占っていました」
その経験から「運は生もので賞味期限がある。動くべきときに動かないと、つかめない」と実感したといいます。中園さん自身も28歳のとき、先生にこう言われたそうです。
「『やりたいことを今やらないでどうする? 自分を占ってごらん』と。それで占ったら、今動かないとダメだとわかり脚本家を目指しました」
人生の節目で占いに背中を押されてきたという中園さん。還暦を迎えたときもそうでした。
「暦が一巡する還暦は、新しい人生の始まりです。2周目だからこそ恐れずに新しいことを始めたり、一度あきらめたことを再開するのに向いている。私も子どもの頃に弾いていたエレクトーンを60歳で再開しました。いつか人前で披露したいですね」
機嫌のいい人は強運。ご機嫌でいれば、運は味方してくれる
幸せでいるために一番大事なのは「ご機嫌でいること」と話します。
「機嫌のいい人は、絶対に強運なんです。不機嫌で強運な人には会ったことがありません。ご機嫌でいれば、運は必ず味方してくれます」
そして66歳の今、やなせさんの教えを実感しているといいます。
「『自分が困ったときは、人の喜ぶことをする』とやなせさんは言っていました。誰かが喜んでくれると、自分もうれしくなる。道のゴミを一つ拾うだけでもいいんです。巡り巡って幸せが返ってくるはずです」
中園さん流 自分を幸せにする朝の3つの習慣
1. 寝室の窓を開けて、空気を入れ替える
朝起きたら、私はまず寝室の窓を開けます。寒い日でも、1分でいいので窓を全開にすると、新鮮な空気が回って気持ちがいいですよ。
2. 神棚と仏壇に手を合わせ、感謝する
窓を開けたら、神棚と仏壇に手を合わせて感謝します。何も拝むものがないなら、太陽でもいいんです。太陽は天照大神で、神様ですから。
3. 声に出して「おはようございます」と挨拶する
「おはようございます」と声に出すと、滞っていた気が流れ出します。一人暮らしの方は観葉植物やペットに声を掛けてもいいでしょう。
運を味方につけたいあなたにおすすめの中園さんの著書
『60歳からの開運』中園ミホ著 扶桑社刊/1650円
60歳からの開運。その秘訣は、これまでの人生で培った知識や経験を使って、完璧でない自分の弱さを許し、他人に寛容になり、心も生き方も自由に、そして毎日ご機嫌でいること。中園さん自身が実践してきた開運習慣の数々を紹介した最新エッセーです。
取材・文=五十嵐香奈(ハルメク編集部)、撮影=島崎信一(STUDIO S-PLUS LLC)、ヘアメイク=山村光代
※この記事は、雑誌「ハルメク」2026年2月号を再編集しています。
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