バラのアーチが見事!16種類の花々が彩る庭へ
2023.06.062023年06月06日
6月のベストシーズンに!
バラの中之条ガーデンズを案内&おすすめ宿も【後編】
バラ栽培のコツや花に囲まれた暮らしを発信するブログが人気のバラ愛好家・奥野多佳子さんがイチオシする庭園、群馬県にある「中之条ガーデンズ」。後編は、バラと庭園、それにおすすめ宿も紹介します。
前編では、中之条ガーデンズのローズガーデンのうち、プロムナードギャラリー、ジャパニーズローズガーデン、ガーランドガーデン、イエローガーデンの4つをご紹介しました。今回は、その続きです。
ローズガーデンを空から見ると
これは中之条ガーデンズからお借りした5~6年前のローズガーデンの俯瞰写真です。左上のクルクル渦巻がスパイラルガーデン。
ローズガーデンを空から見ると 写真の右から、〈1〉のプロムナードギャラリーは映っていませんが〈2〉和のガーデン、〈3〉ガーランドガーデン、〈4〉イエローガーデン、〈5〉ホワイトガーデン、〈6〉チョコレートガーデン、〈7〉ローズテラスと、7つの部屋から出来ているのがわかります。
〈3〉の部屋から一直線上にそれぞれの部屋の出入り口があり、丸、四角、丸、四角と続いています。それぞれの部屋は線対称、点対称で植栽されているようです。
部屋の壁も ガーランドは木々の緑、そしてブルー、白、銅葉の木のアンバーと変化していて、〈5〉の部屋からはスパイラルガーデンへ直線の道が伸びていて開放されています。
直線と曲線で構成されたとてもシンプルでわかりやすいデザインで、私はこの俯瞰写真が面白くて大好きです(笑)。広大な土地に広いローズガーデンを作らず、デザインにこだわって構成され、部屋ごとに美しさを凝縮してその変化を楽しむ……心憎い演出だと思いました。
ローズガーデン(5)ホワイトガーデン
黄色とブルーの個性的で鮮やかなイエローガーデンを抜けると白の世界……ホワイトガーデン!
小さな池の水面には空と白いバラが映りすっきりした引き算の美しさです。3年前の夏に来たときは、池の周りのバラ“グリーンアイス”は少し咲いていましたが、今はまだ蕾がいっぱいでした。
潔いほどの真っ白の世界です。
噴水から直線上にスパイラルガーデンへ。この道はナチュラルガーデンまでつながっています。
その出入り口の両サイドにジューンベリーが植えてありました。白い世界に唯一の赤い点々……ドットがかわいい雰囲気です。
たくさんの色彩を見てきた、目に映る白い世界は新鮮でした。部屋から部屋へ移り替わる色彩の変化、その演出には本当にため息が出ます。
ローズガーデン(6)チョコレートガーデン
白い世界から銅葉と紫と赤の世界へ……チョコレートガーデンです。
この色合いもドキッとします。この部屋は、周囲と中央にトキワマンサクの刈り込みがあります。中央はノットガーデンのようにトキワマンサクで15に区切られていて、その中にサルビアネモローサ“カラドンナ”やオレンジのバラが市松模様のように植えられています。
バラはオレンジのチャーリー・アンバーですが、刈り込んだトキワマンサクと同じ高さで咲いているのに驚きました。トキワマンサクをこの高さで刈り込むのだけでも大変だと思うのに、バラまで……すごい! 剪定が難しいでしょうね。シュートの出方は微妙なのに、さすがプロですね。作り手のこだわりを感じます。
ウキウキして見ていると、ふっと甘い香り。これだけバラがある中で本当に強い香りでした。オレンジ色のマロンです。
優しい色合いのバラもありますが、足元には黒赤のナデシコ、後ろには大~きいアカンサスモリス、その横には我が家の倍ほどの高さのラムズイヤーがもう咲いています。背景には、刈り込んだトキワマンサクに中輪のバラが……細かなところまで配慮されています。
この部屋はとてもシックな雰囲気でまとめられていて、魅惑的な赤黒いバラがたくさんありました。
ラベンダー色のバラはリップルスです。紫に斑入りのパンジーと斑入り三つ葉の組み合わせ……なんて美しい色合わせでしょう! どの風景を切り取っても魅力的な色彩です。
ローズガーデン(7)ローズテラス
最後の部屋に着きました。ローズテラス、香りの庭です。
ここには2つの建物、左にカフェ、右にトイレがあって黒です。この日カフェは閉まっていましたが、屋根を這うバラはクリムゾン・グローリー、トイレはつる性のミニバラ アイバンホ―でまだ蕾でした。赤いバラで囲まれた黒いトイレって……入ってみたくなりますね(笑)
カフェでは飲み物やケーキも販売されていて、パラソルの下でゆったり楽しめます。
ここには香りのいいバラがたくさんありました。この赤いバラはミカモ。
これだけ圧倒的な数のバラを植えていると、病気になったりトラブルも多いと思いますが(1週間に1度は消毒されているそうです)、どのバラも元気でしっかり育っていました。やっぱりお手入れがしっかりされているんですね。
では その他のガーデンもご紹介します。
スパイラルガーデン
吉谷桂子さんデザインのスパイラルガーデン!
直径40mの渦巻き状に植栽したスパイラル、らせん状のガーデンです。溶岩石を積み上げたカーブのついた花壇が、中央にいくほど石積みが高くなって腰ぐらいの高さになります。宿根草が多く植えられていますが、花壇が高い位置なのでよく見えるようになっています。楽しい迷路のようで、とっても面白い新感覚のガーデンです。
3年前はなかった麦が、スパイラルガーデンを取り囲むように植えられてスパイラルフィールドが出来ていました。冬から春までは麦、夏から秋はアゲラタムが咲きます。麦と麦の間に植えられたアゲラタムの苗が見えます。ガーデンはどんどん変化していきますね。
ここで収穫された麦は、レストラン「美野原食堂」の「おきりこみ」(麵を煮込んだ群馬の郷土料理)の原料になるそうです。
ナチュラルガーデン
向こうに見えるのは吉谷博光さんデザインの赤い家。
その家をポイントに四季折々の花が咲く、パレットのように色合いのきれいなガーデン! 3年前の夏はエキナセアが満開でしたが、春はフロックスがあふれていました。
町民花壇
100を超える区画があって、中之条町の花の町づくりの原点になっているそうです。
中之条ガーデンズは、広大な敷地に子どもが遊べる遊具があったり木陰があって、ゆったりのんびりできます。私はローズガーデンで嬉々としていましたが、旦那さんはこのベンチで気持ちよさそうに本を読んでいました。
そして、このローズソフトクリーム! ちょっとバラの香りがして、おいしかったですよ。
私が訪れたのは2022年6月4日。イエローガーデンが満開の頃だったので、一年で一番入場者の多い日だったそうです。その1週間後ぐらいに、ガーランドガーデンが満開になるようです。
6月の中之条ガーデンズに一度は訪れたい!……3年間思い描いた夢が叶って見た庭は、想像以上の素晴らしいガーデンでした。標高480mという山の冷涼な気候の中、息をのむほど美しい色彩あふれるバラたちの饗宴を見ることができました。そしてお手入れのよさも最高だったと思います。
3年前と比べると、どんどん庭は変化してどの植物ものびのび育っていました。以前の庭の様子は私のブログでもご紹介していますが、ほとんどバラのない夏のローズガーデンは構造物がよく見えてまた違う雰囲気です。3年前のガイラルデイアやフロックスなどが咲く夏のスパイラルガーデンも素敵でした。
お宿のおすすめは四万温泉「積善館」
この橋を通って油屋へ……映画「千と千尋の神隠し」に出てくる赤い橋そっくり!木造の宿は油屋? それに右の2階建ては女中部屋にそっくり!物語の世界に誘われそう……。
ここは、群馬県四万温泉にある『積善館(せきぜんかん)』の本館です。宮崎駿監督が何度も泊まられ、「千と千尋の神隠し」のモデルになったそうです。中之条ガーデンズから車で20分ほどの所にあって、泊まってみたかったお宿でした。
積善館は今から300年の昔、元禄時代に造られた日本最古の木造湯宿建築だそうです。本館は湯治宿で重要文化財に指定されていますが、奥には山荘と佳松亭があります。この右の2階建ての下の部分、アーチ窓のところが「元禄の湯」です。
登録有形文化財の「元禄の湯」は大正時代の雰囲気そのままの浴場です。5つの浴槽がありますが、掴まるところがなく、浅そうに見えて深さ60~70cmもあるので、足が長くないと浴槽に入るのがちょっと大変(笑)?でも、ぬるめでいいお湯でした。
本館はタイムスリップしそうな雰囲気がそのまま残されていて趣があります。積善館の近くにはコンビニもお店もあまりなく、ひなびた温泉宿ですが、それがかえって積善館の雰囲気を醸し出しています。何もしない時間があってもいいかなって思えるお宿でした。
温泉好きの方は、中之条ガーデンズの帰りに立ち寄ってみてはいかがですか?
■中之条ガーデンズ
群馬県吾妻郡中之条町大字折田2411
TEL:0279-75-7111
開園時間:3月~11月は9~17時(最終入園は16:30)、12月~2月は9~16時(最終入園は15:30)
休園日:年末年始
入園料:400~1000円(花の見頃に合わせた変動制)
駐車場:250台
※最新の情報や詳細はホームページでご確認ください。
■積善館
群馬県吾妻郡中之条町四万温泉
TEL:0279-64-2101
※最新の情報や詳細はホームページでご確認ください。
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