50代からの女性のための人生相談・167

人生相談:92歳の元気すぎる父…今後の介護が心配

太田差惠子
回答者
介護・暮らしのジャーナリスト
太田差惠子

公開日:2023.12.30

「50代からの女性のための人生相談」は、読者のお悩みに専門家が答えるQ&A連載。今回は、63歳女性の「病気を患った私が92歳で元気な父を一人でお世話…今後のことが心配です」という相談に、介護・暮らしのジャーナリスト、太田差惠子さんが回答。

63歳女性の「元気すぎる父親」についての相談

私は63歳で、父は92歳です。父は毎日5kmくらい散歩するほど元気です。

父は県外で一人暮らしをしていましたが、仲良くなった方を車に乗せていて自動車事故を起こしたり、お金の管理がままならなかったりしてきました。そのため、私の家の近くのサービス付き高齢者向け住宅に引っ越してもらいました。

しかし本人は、実家での一人暮らしができない理由が理解できないようです。
「自分の家に帰りたい」「ここはつまらん」の一点張りで、施設にいることを拒否し続けています。

こんな状況にもかかわらず、介護認定がつかず「年相応」という診断になってしまいます。

そして今、私が病気を患い、体力的に父に付き添うことが大変になっています。夫と娘は基本的にノータッチなので、私がどうにかしないといけないのですが、不安しかありません。

どうしたら父が今の生活に慣れて、周りの方に迷惑をかけないで今後も生活していけるのか、教えてほしいです。

(63歳女性・にこりんさん)

太田さんの回答:自分の体が最優先!サービス利用も

太田さんの回答:自分の体が最優先!サービス利用も

92歳のお父様はとても元気で、介護認定は「自立」。でも、認知機能は低下しており、人に迷惑をかけることがあるのですね。にこりんさんとしては、ご自身が病気になり、さぞ気がかりなこととお察しいたします。

63歳のにこりんさん、「子世代」の立場とはいえ、長年の疲れがでてくる年代です。どうか、自身のお体を最優先に考えてください。

今回の課題を乗り切る方法は大きく分けて3つあると思います。それぞれについて詳しく説明していきます。

方法1:お父様に状況を受け入れてもらう

方法1:お父様に状況を受け入れてもらう

この方法は、お父様に「我慢」をしてもらう案です。

入居中のサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)の責任者にアポを取り、お父様とサ高住の責任者の方を前に、にこりんさんの病気のことを話しましょう。「病気のため、今後はたびたび父親に会いに来られない」と。

責任者とお父様が理解してくれたら、にこりんさんは自身の療養を第一に考えられるでしょう。

ここで気になるのが、現在入居しているのがサ高住だということ。基本的には、サ高住はその名称通り、施設ではなく高齢者向けの住宅でありケアの体制は整っていません。

にこりんさんが「父親の面倒をみられません」と言えば、父親の普段の行いによっては「うちでも、面倒をみることはできません」と言われる可能性があります。その場合は最後に紹介する「方法3」へ進みましょう。

方法2:お父様を実家に戻す

方法2:お父様を実家に戻す

実家に戻すなら、周囲からのサポートが不可欠です。実家の住所地を管轄する地域包括支援センターに連絡して、お父様の現状と、にこりんさんの病気のことを説明してください。

「在宅サービスを利用すれば、こちらで生活していただけるでしょう」と言ってもらえるかもしれません。

介護保険以外にも、自治体では一人暮らしの高齢者などに向けたさまざまなサービスを提供しています。一人暮らしに戻る場合は、お父様に対し「実家に戻りたいなら、車の運転はダメ」など、気がかりな行為をやめることを絶対条件として突き付けましょう。

実際、いったん子どもの傍に呼び寄せられた高齢者が、なじめないまま元の家に戻るのはよくあることです。

方法3:要介護認定をやり直し、施設変更も視野に

方法3:要介護認定をやり直し、施設変更も視野に

父親の地元の地域包括支援センターが、父親の独居に難色を示すなら、そもそも「自立」の要介護認定がおかしいのだと思います。地域包括支援センターに相談して、認定をやり直してもらいましょう。

再度、主治医の意見書が必要になるので、非該当になったことを医師に伝えてください(クレームではなく、実状を伝えることが重要)。より実態に合った意見書を書いてもらえると思います。

介護認定が付けば、サ高住で暮らすにしろ、在宅に戻るにしろ、利用できるサービスが増えます。さらに、認定が付けば介護体制の整った有料老人ホームなどへの入居も考えられます。

もし、認知症が進んでいるならグループホームも選択肢となるでしょう。

現在、にこりんさんの夫と娘さんはノータッチとのこと。ただ、何かあって、無理してにこりんさんが動けば、にこりんさんの体調はさらに悪化するかもしれません。そうなると、困るのは夫です。

直接介護はサービスや施設を頼るとしても、住まいや場所などは一緒に考えてもらえると心強いのではないでしょうか。

世の中、子どものいる高齢者ばかりではありません。子どものいない高齢者や、いても諸々の事情で世話をできないケースはいくらでもあります。そのような場合でも、何とかなっています。

「重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で医療・介護サービスを利用しながら自分らしい暮らしを人生の最後まで続ける」というのが国の描いている暮らし方でもあります。

どうか、家族だからといって抱え込み過ぎないでください。

回答者プロフィール:太田差惠子さん

回答者プロフィール:太田差惠子さん(介護・暮らしジャーナリスト)

おおた・さえこ 介護・暮らしジャーナリスト、AFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)。京都市生まれ。1993年頃より老親介護の現場を取材。取材活動より得た豊富な事例をもとに「遠距離介護」「仕事と介護の両立」「介護とお金」 等の視点でさまざまなメディアを通して情報を発信する。著書に『親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと第3版』(翔泳社)、『得する!楽しい!安心!シニアの暮らし便利ブック』(産業編集センター)、『親の介護で自滅しない選択』(日経BP)など多数。


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