首をケアして頭痛・肩こりを解消#2
頭痛・肩こりの原因となる「胸鎖乳突筋」とは? 痛みとの意外な関係
頭痛・肩こりの原因となる「胸鎖乳突筋」とは? 痛みとの意外な関係
公開日:2026年06月20日
教えてくれたのは吉原潔(よしはら・きよし)さん
整形外科専門医・フィットネストレーナー。医学博士。アレックス脊椎クリニック名誉院長。運動療法や筋力トレーニングにも精通した医師として、多角的な診療に定評がある。トレーナーとしての信条は「ケガをしないトレーニング方法を指導すること」。50歳を過ぎてから筋トレでメタボ体型を脱し、ボディコンテストに出場、受賞歴多数。
首の痛みやコリの原因の多くは胸鎖乳突筋にある

横を向いたときに、縦に浮き出るのが「胸鎖乳突筋」
実践してみてください。あなたは今、首がこっています。ご自分の手で、もみほぐしてください。
質問です。どのあたりを、手で触れましたか?
首の後ろ、肩、肩甲骨のあたりに手を伸ばしたのではないでしょうか。それで正解です。どれも首の痛みやコリに深く関係する筋肉です。
しかし、1か所だけ、ほとんどの方が見逃す場所があります。それは、 「首の前側」です。首の真正面や、喉そのものを触るわけではありません。耳の後ろから首の前に向かって、縦に走る筋肉、「胸鎖乳突筋」です。
胸鎖乳突筋は、首の痛みやコリに深く関わる筋肉でありながら、見逃され放置されがちな存在です。しかも、非常にこわばりやすいという特徴があります。
診察の際に、胸鎖乳突筋を軽くつまむと、「ギャッ!」と思わず声をあげる方が、少なくありません。
「ここって筋肉なんですね」「なんでこんなに痛いんですか」
そう驚かれる方も、 多くいらっしゃいます。痛みの原因になっているのに、意識されず、放置されてきた。それが、胸鎖乳突筋なのです。
胸鎖乳突筋は、 首を回す、 左右に倒す、 前に倒すといった動きに関わります。また、頭を支え、姿勢を保つうえでも大切な筋肉です。
さらに、 呼吸が苦しいとき(努力呼吸時)には胸郭(胸骨・肋骨・背骨で構成され、肺や心臓を守る「かご」のような骨格)を持ち上げて胸の空間を広げ、肺がふくらみやすくなるように助ける「呼吸補助筋」としても働きます。
- 首を横に傾ける(側屈)
- 首を前に倒(屈曲)
- 顔を横に向ける(対側回旋)
- 頭部の位置を調整し、姿勢保持に関与する
- 頭部を前方に引き出す
- 呼吸を助ける(努力呼吸時に、呼吸補助筋として胸郭を広げる)
このように、胸鎖乳突筋は非常に多くの役割を担う筋肉です。たくさん働けば、疲れますよね。筋肉も同じです。常に酷使されている胸鎖乳突筋は、疲労がたまりやすく、硬くなりやすいのです。
それにもかかわらず、 胸鎖乳突筋はケアの対象から外されがちです。 背中をマッサージすることはあっても、 首の前側を意識してケアすることは、 ほとんどないでしょう。何もしなければ、当然こわばりが改善することはありません。
首の不調がなかなか治らないという方は、胸鎖乳突筋がこわばったままになっていることが少なくないのです。
痛みを感じている場所と実際の原因が一致しない

〝真犯人〟の胸鎖乳突筋
胸鎖乳突筋がこわばりやすい理由は、右に挙げたような役割と、その使われ方にあります。私たちは日常生活の中で、この筋肉を無意識のうちに酷使しているのです。
例えば、スマートフォンを見るとき。パソコン作業で画面を覗き込むとき。緊張しながら人の話を聞いているとき。こうした場面では、頭が前に突き出た姿勢になりやすく、胸鎖乳突筋は常に収縮し、緊張した状態を強いられます。
さらに、ストレスや不安が続くと、交感神経が優位になり、首まわりの筋肉、特に胸鎖乳突筋はいっそう硬くなりやすくなります。「気を張る」 「身構える」そんな状態が続くときほど、この筋肉は休む暇がありません。
胸鎖乳突筋の周辺には、重要な血管や神経が多く走っています。そのため、この筋肉が硬くなると、 首の痛みやコリだけでなく、頭痛や目の奥の痛み、 耳周囲の違和感、ふらつきなど、首以外の不調を伴うことがあります。
胸鎖乳突筋は、重要な役割を担っているにもかかわらず、不調の原因として見過ごされがちな筋肉です。そして、気づかれないまま不調を引き起こし、生活の質を低下させる“真犯人”となってしまうのです。
「原因の胸鎖乳突筋は首の前なのに、なぜ首の後ろや肩が痛くなるのか?」
そう疑問に思うでしょうか。その答えは、筋肉のバランスにあります。
胸鎖乳突筋が首の前側で過剰に緊張すると、首の後ろにある筋肉(僧帽筋、板状筋など)は、その緊張を支えるために、常に引き伸ばされながら働かされる状態になります。
例えば、テントのロープを前から強く引っ張るとします。そのときにテントが倒れないように、後ろ側で必死に支えるような状態です。負担が集中するのは、支える側です。その結果、 「首の後ろが張る」 「肩が重だるい」 「肩甲骨まわりがつらい」といった症状が現れます。
つまり、痛みを感じている場所と、実際の原因となっている場所が一致しないのです。
次の記事では、具体的な胸鎖乳突筋のケアを紹介します。
※本記事は、書籍『首の痛み・コリ・しびれ 自力でできるリセット法』より一部抜粋して構成しています。
■「首をケアして頭痛・肩こりを解消」シリーズをもっと読む■
#1:その頭痛、「首」が原因かも!不調を放っておくと回復しづらくなることも
#2:頭痛・肩こりの原因となる「胸鎖乳突筋」とは? 痛みとの意外な関係
#3:たった1分でできる首のケア~指でコリをほぐす「胸鎖乳突筋つまみ」
もっと詳しく知りたい人は

『首の痛み・コリ・しびれ 自力でできるリセット法』吉原潔・著(アスコム)




