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50代からの女性のための人生相談・86
人生相談:老後の資金を増やしたい!資産運用すべき?
ファイナンシャル・プランナー、CFP(R)
畠中雅子
公開日:2022.07.22
更新日:2023.09.25
老後の資金が心配という方も多いのではないでしょうか。「55歳・世帯年収500万・持ち家あり・貯蓄100万」という状況で、「資金を増やすために、投資での運用を始めるべき?」というお悩みにファイナンシャルプランナー・畠中雅子さんが回答します。
回答者プロフィール:畠中雅子さん
はたなか・まさこ 1963(昭和38)年生まれ。ファイナンシャル・プランナー、CFP(R)。『お金のプロに相談してみた!息子、娘が中高年ひきこもりでもどうにかなるって本当ですか?』(時事通信社)他、著書は70冊以上。また「ミニチュアワールドと観光列車」に造詣が深くブログを開設している。
55歳女性、貯蓄100万「資金確保のために投資したい」
夫婦二人暮らし、夫の年齢は56歳、世帯年収は500万円くらいです。
一戸建ての持ち家には、すでにローンはありませんが、貯蓄は100万円程度しかありません。
今の貯蓄だけでは老後が不安なため、NISAやiDeCoなどを始めたいと思っているのですが、子どもがいないので、自分たちが死んだ後の資金管理が不安で始められずにいます。
夫は自営業で収入が不安定なので、銀行の預貯金だけでなく、NISAやiDeCoなどの投資で少しでも資産を増やした方が良いでしょうか?
(55歳女性・こけたんさん)
畠中さんの回答:投資の前に「貯蓄ができる家計」へ改善を
NISAやiDeCoは、老後資金を準備するために、有益な制度であることに間違いはありません。ですが、50代半ばのこけたんさんのご家庭では、投資を始めるよりも先に、家計の見直しが必要です。
自営業のご家庭は収入に変動があるもの。しかし、お子さんにお金をかけなくて済んだ暮らしの中で、現在までの貯蓄が100万円程度という状況を考えますと、早急にやりくりを見直さなければなりません。
こけたんさんのご家庭では、投資を始めることよりも「貯蓄ができる家計作り」をすることが何よりも優先です。
「貯蓄が増えない=投資を利用して増やそう」と考える方は多いのですが、投資をすれば減ることも十分にあり得ます。資産が多いご家庭では、資産残高が減っても生活全体を脅かさずに済みますが、こけたんさんのご家庭の場合は、生活が脅かされる可能性があります。
残念ですが、リスクに弱い状態にありますので、「運用をして資産が減るかもしれないリスク」は、選択しない方が無難です。
運用資金は減るリスク以外に「換金できない」というリスクも
また、株や投資信託などの運用資産は、認知症と診断された後は、換金ができなくなります。後見人がついても、換金は無理なのです。
元気なうちに、家族信託などを利用すれば、認知症になってからでも換金できますが、家族信託の利用を検討するほど、運用資産を増やすのは大変なことです。
お子さんがいらっしゃるご家庭であれば、生前に換金ができなくても、相続で運用資産を受け取れます。しかし、お子さんがいらっしゃらない、こけたんさんのご家庭では、運用して資金を増やしても自分たちで使えない可能性が出てしまいます。
「減るかもしれないリスク」と「換金できなくなるかもしれないリスク」の両方を考慮しなければならないため、運用のことは諦めて、家計の見直しに着手しましょう。
毎月3~5万円くらいは、貯蓄に振り分けられるようにがんばってみてください。
マイホームの売却で老後資金を作る方法も
自営業家庭の場合、ご夫婦のどちらかが亡くなると、お一人分の国民年金(老齢基礎年金)だけで暮らしていかなければなりません。
年金をもらい始めてからも、働き続けなければ、生活は成り立たない可能性があります。また病気などをして、働けなくなった場合は、生活が行き詰ってしまう可能性もあります。
老後に入り、働くのが難しくなったら、「自宅を売却して手元の貯蓄を増やす」という方法を検討されてはいかがでしょうか。
兄弟姉妹が法定相続人にはなりますが、自宅を相続させるお子さんがいないわけですから、換金して自分たちのために使うのも、老後を乗り切る方法になります。
自宅を売却すると、住まいを探さなければなりません。その際は、「セーフティネット住宅」というシステムを利用すれば、住まいを見つけやすくなります。セーフティネット住宅は、住宅を確保するのが難しい人に対して、配慮された住宅が登録されています。
築年数の古い物件が多いものの、セーフティネット住宅には、月額2~3万円台の家賃の物件も多数掲載されています。家が狭くなれば、光熱費の負担も減り、年金だけの生活でも赤字の金額を抑えられるはずです。
住み慣れた家から離れるのは気が進まないかもしれません。しかし、破産を防ぐためには、マイホームの活用も含めて、老後のライフプランを立ててみてはいかがでしょうか。
構成=石丸繭子(ハルメクWEB)
※この記事は2022年7月の記事を再編集して掲載しています。
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