公開日:2021/03/26
更新日:2021/12/11
「50代からの女性のための人生相談」は、読者のお悩みに専門家が回答するQ&A連載。今回は43歳で早くも「老後の住まい」についてお悩みの女性に対して、ファイナンシャルプランナー・畠中雅子さんが回答します。
夫の年収は850万円、私自身は派遣社員として働いています。自分の収入は200万円ほどです。
中学生の子どもが1人いますが、持ち家がなく、これからマイホームを購入する場合、完済まで35年もかかる住宅ローンを組むことを、リスクに感じています。
その一方で、一生賃貸住まいだと、老後も家賃を払い続けなければならないことになります。年金暮らしに入ってからも家賃を払い続けるのは、かなり大変ではないかと考えています。
もう少し若いうちに、マイホームを購入しなかった無計画な自分たちが悪かったのでしょうか。今からでもできる対策はありますか?
(43歳女性・S.Aさん)
40代からマイホームを手にするご家庭はたくさんありますので、決して「無計画」だったとは思いません。若いときに手に入れたマイホームは、高齢期に入ると修理の必要が出てきますので、「何歳で買うのがベストなのか」も、一概には言えないと思います。
さて、今回のご相談者が気になっているのは、老後もローンや家賃を払い続けることだと思います。だとしたら、リタイア前後に、現金でマイホームを買う選択を検討されてはいかがでしょうか。
リタイア後は通勤を考えずに、好きな場所にマイホームを持てます。お子さんが独立されていれば、広さも抑えやすくなるでしょう。40代の今からでも、現金でマイホームを購入するために貯蓄に励むのが、長い住宅ローン返済に怯えずに、年金暮らしに入れる方法と言えるのではないでしょうか。
とはいえ、高齢期に入ってから数千万円単位で貯蓄を減らすのは、老後資金を減らすのと同じ意味です。貯蓄が減ることを、怖いと感じられるかもしれません。
その場合は考え方を少し変えて、公的機関である住宅金融支援機構が、銀行などと提携する形で提供している「リ・バース60」を利用する方法もあります。「リ・バース60」とは、60歳以上の方が申し込める住宅ローンです。
毎月の支払いは利息のみで、元本の返済はご夫婦が二人とも亡くなるときまで据え置かれます。ご夫婦とも亡くなった時点で、担保としていた家を売却して、債務を一括で返済する仕組みです。
「リ・バース60」なら、申し込む前にマイホームは所有しておらず、これから購入する方であっても、購入するマイホームの担保価値の50~60%の融資が受けられます。一戸建てだけではなく、マンションでも利用でき、地域も問わないので、広く利用できる制度だと思います。
例えば、「リ・バース60」を利用して2000万円のマイホーム(担保価値も2000万円)を購入するとします。購入した物件を担保にすれば、50%の1000万円は融資が受けられます。つまり、手元の貯蓄から減るのは2000万円ではなく、1000万円で済むわけです。
もちろん1000万円を借りるために利息の返済はありますが、元本の返済はご夫婦とも亡くなる時点まで据え置かれますので、通常の住宅ローンに比べて、月々の返済額は少なくて済みます。
仮に借り入れしたときより、担保価値がかなり下がってしまったとしても、担保割れした分の返済が不要になる「ノンリコース型」というタイプが用意されているため、相続人であるお子さんに負担をかける心配もありません。亡くなった時点で家を手放せば、元本の返済は終了します。
ただし、お子さんに家を遺したいと考える方には向きません。家を相続するには、お子さんが残債を一括返済しなければならないからです。そのような場合はやはり、リタイアまでにがんばって貯蓄を増やして、現金で購入するのがいいでしょう。
■回答者プロフィール■
畠中雅子さん
はたなか・まさこ 1963(昭和38)年生まれ。ファイナンシャル・プランナー、CFP(R)。『高齢化するひきこもりのサバイバルライフプラン』(近代セールス社刊)他、著書は70冊以上。また「ミニチュアワールドと観光列車」に造詣が深くブログを開設している。
■もっと知りたい■
連載「50代からの女性のための人生相談」では、専門家の方に相談したい内容を募集中です。下記応募フォームに、人間関係や老後の生き方、お金や介護、恋愛についてなど、相談したい内容を書いてお送りください。
この記事をマイページに保存