【ビフォーアフター】寄せる片付けをリビングで実践!
2023.03.012024年10月05日
古堅純子の片付けの新常識・7
【片付け実例】クローゼット収納&趣味部屋作り
幸せ住空間セラピスト・家事効率化支援アドバイザーの古堅(ふるかた)純子さんが、家が散らからない片付けのコツを解説する連載企画。【実践編】後編では、読者・Fさんのもう一つのお悩み、クローゼット収納の片付けビフォーアフターをご紹介します。
モノであふれた2つのクローゼットをどうにかしたい!
前回「ハルメクWEB」読者・Fさん(50歳)のご自宅を訪れ、寄せる片付けをリビングで実践した古堅さんでしたが、Fさん宅には他にも「暮らしづらい」課題があるそう。寄せる片付けの「寄せ場所」の作り方とともに、暮らしづらい課題を解決します。
「奥行きが浅いクローゼット(寝室)と深いクローゼット(自室)の2つがありますが、どちらも折り畳み扉タイプで使いづらく、大量の服やカバンをうまく収納できないのが悩み。特に季節布団が場所をとっているので、コンパクトな収納方法が知りたいです」とFさん。
早速、2つのクローゼットをチェックすることになりました。
問題1:寝室のクローゼットを占拠する使わない季節布団
まずは、寝室のクローゼットです。
扉を開けると……中央にあるのは、大きな布団袋!
さらに、クローゼットの上部にも、別の布団袋が鎮座していました。
なるほど、確かに今のままでは、洋服をしまうスペースはなさそうです。
問題2:クローゼットに入りきらない洋服&床の上のモノ
続いてはFさんの部屋の、奥行きが深いクローゼットです。部屋のドアを開くと、目の前にパイプハンガーが……! ドアの右手にある衣類クローゼットに入りきらなかった洋服たちがあふれていました。
さらに、部屋のドアの左手にも、突っ張り型のスチールラックがあってコートやジャケットなどが掛けられていました。
ラックの周りの床には、大量の紙袋や趣味のフラワーアレンジメント用の材料が無造作に置かれています。
「服やバッグなど、モノが多いという自覚はありますが、なかなか手放すことができません。収納もこれ以上増やすのは難しいので、あふれたモノをどうすればいいのか……。主人からは『今日はゴミ出しがんばってね』と言われたのですが、やはり、モノを捨てるしかないのでしょうか?」と、不安そうなFさん。
古堅純子さん
「モノが多いから散らかるのではなく、生活動線とモノの配置が合っていないから散らかるんです。
寝室収納の場合、玄関やお風呂に近い場所にあるにもかかわらず、収納がこの動線と関係ないモノで埋まっていること。一番使い勝手のいい寝室収納のゴールデンゾーンを、布団で塞ぐなんてもったいない! 布団=寝室という思い込みを捨てて、収納を使いやすく変えていきましょう。
一方、Fさんの部屋の場合、壁ぞいにモノを置いていて、空間を十分に活かせていないですね。前回お伝えした『寄せる片付け』の寄せる場所として活用できる余地が十分にあるので、空間を有効活用して『収納力』をアップさせましょう」(古堅さん)
モノを寄せて更地に!収納力を上げる4つの要素を確認
古堅さんが提案する「寄せる片付け」は、あちこちに散らかったモノを集めて、何もない「更地」を作ることからスタートします。
「収納場所を決めるには、そこにしまうモノがどのくらいの量なのかを把握するのが大切。モノを一か所に集めると、洋服やバッグなど同じ種類のモノがどのくらいあるのか、総量を客観的に把握できます。モノで埋もれていた場所が更地になると、その空間をどうやって使うか自然とアイデアが出てくるのも、モノを『寄せる』大きなメリットです」と古堅さん。
まずは、収納スペースからあふれたモノをリビングに「寄せる」ことからスタートです。
一方、モノがなくなったFさんの部屋はガランとして、まるで引っ越してきたばかりのようです。
更地になった部屋を見て「この部屋、こんなに広かったんですね! 引っ越してきたときは趣味用の作業机を買おうと思ってたんですけど、洋服が多過ぎて、これまで置くスペースがなかったんです」とFさん。
そんなFさんの言葉を聞いて、何かを思いついた様子の古堅さん。
「この『更地』に何をどう配置するか、が私の腕の見せ所です。せっかくの自分の部屋、物置きではなく、趣味も楽しめる自分専用のスペースとして、生まれ変わらせちゃいましょう!」
空間をどう使うのか、方針が決まったら、生活動線に合わせて寄せたモノを配置し直していきます。
古堅さんによると、収納力をアップするポイントは以下の4つです。このポイントに沿って、モノの配置場所を決めていきます。
「収納力」を上げる4つのポイント
- 動作ポイントからの距離を近づける
- ゴールデンゾーンを活用する
- 出し入れのしやすさ
- 稼働率をアップする
ポイント1:動作ポイントからの距離を近づける
収納力を上げるために大切なのは「行動と収納を結びつけること」と古堅さん。まず、間取りを見ながら、Fさんの生活動線をチェックしていきましょう。
Fさん宅は3LDKでリビングを中心として、洋室1(左上)が寝室、洋室2(右上)がFさんの部屋、そして洋室3(右下)はご主人の部屋です。
今までは、帰宅後はリビングの向こうにある、自分の部屋のクローゼットにコートを置きに行っていたというFさん。
しかし、古堅さんは「コートの置き場は寝室にするのがおすすめ」だと言います。
「寝室は玄関からも近く、部屋の中には洗面所・浴室につながるドアもあります。一方、Fさんの部屋は、リビングを横切った先にあるので、玄関からの距離が遠くなります。散らからない家をつくるためにも、モノは『動作ポイント(行動を行う場所)』の近くに置くことが大切です」
そこで、寝室のクローゼットには、コートやバッグ、ストールなど、家を出るときや帰ったときによく使うお出掛けグッズを中心にまとめることにしました。
ポイント2:ゴールデンゾーンを活用する
ゴールデンゾーンとは、立ったままモノがラクに取り出せる、腰高から背丈までの高さのこと。これまで寝室収納のゴールデンゾーンには、使わない布団が置かれていましたが、本来は頻繁に使うモノを置いて「動く収納」にしたいスペースです。
「押入れ収納の回でも説明したように、日常生活でよく使う部屋の周りには、意図的にモノを“チョイ置き”できるスペースを作ると、部屋が散らかりません。Fさんの場合、寝室収納のゴールデンゾーンは、普段使いのバッグを置く『動く収納』にするのがおすすめです」と古堅さん。
そこで、これまで床に置いていた3つの収納ケースの置き方を変えて、縦に重ねることで腰高になるように調整。帰宅時にバッグを置けるスペースに変身させました。
「よく使うモノは、種類ごとに定位置を決めてあげることが大切です。収納場所を決めるときは、使用頻度が高いモノから優先的に出し入れしやすい場所に入れていくこと。そして『動く収納』として使う場所と、しまう場所をしっかり分けるのも、散らからないポイントです」
左の透明な収納ケースの中にはパジャマ(上段)やトレーニングウェア(下段)など、右の白い収納ケースには、ショッピングバッグ(上段)や冠婚葬祭グッズ(下段)を種類ごとにわかりやすく収納しました。
ポイント3:出し入れのしやすさ
しまう位置と併せて、使用頻度が高いモノは、出し入れのしやすさ(収納方法)にもこだわりたいところ。
「片付け=隠すことだと思っている人が多いのですが、よく使うモノはあえて出しっ放しにするのがおすすめ。例えば、寝室のクローゼットにあったバッグ。これまでは収納袋に入れた状態で収納ケースにしまわれていましたが、そのままクローゼットの上段に並べておけば、使いたいときにサッと取り出せます」
Fさんの部屋の洋服も、オフシーズンの服はクローゼットにしまう一方、今使う服はハンガーラックにかけたり、フタのない収納ケースに入れて棚の上に置いたりして、クローゼットの外に置くことになりました。
「いつも着る服を外に置いておけば、着たいと思ったときにサッと着れます。このクローゼットの扉を開ける必要がない手軽さ、使いたいモノが1秒で出せることが、暮らしやすい家にするために大切! クローゼットにしまうときも、使用頻度の高いモノはゴールデンゾーンに配置し、あまり使わないモノは上段・下段にしまうなど、出し入れのしやすさを意識しましょう」
洋服の分け方
- 使う:すぐに使う洋服→ハンガー収納でいつでも着られるようにする
- しまう:オフシーズンの服&洗い替えのストック→収納ケースに入れる
書類の分け方
- 使う:すぐに使う書類(生協の注文書など)→見える場所に置く
- しまう:思い出の写真やアルバム→収納ケースに入れる
ポイント4:稼働率をアップする
そして、何より大切なのが「収納したモノが動いているかどうか」ということ。
「今まで寝室のクローゼットは、布団=寝室という思い込みから、多くのスペースを布団に塞がれていた結果、ほとんど収納として機能していませんでした。そこで、布団を衣類クローゼットの上段&奥のいつも使わない場所に『寄せる』ことでスペースを作り、生活動線と使用頻度に合わせてモノを配置し直すことで、稼働率をアップさせました」
クローゼットの「寄せる片付け」ビフォーアフター写真
こうして「行動と収納を結びつけること」を意識して、モノの収納場所を整理した結果、モノがあふれていた寝室&Fさんの部屋は、どのように変わったのでしょうか?
寝室クローゼットのビフォーアフター
布団で塞がれていた寝室のクローゼットが、コート・ストール・バッグなど、お出掛けグッズが使いやすく配置され、バッグの“チョイ置き”もできる「動く収納」に早変わり!
布団を別の部屋へ寄せる&収納ケースの配置を変えることで、最大限ゴールデンゾーンを活用した結果、収納の稼働率も大幅にアップしました。
Fさんの部屋のクローゼットのビフォーアフター
今着る服もオフシーズンの服もごちゃ混ぜだったクローゼットは、オフシーズンの服と洗い替えを中心とした「しまう収納」に。
上段や洋服の下など、使いづらいデッドスペースには、かさ張る布団やたまにしか使わないキャンプ用品を収納しました。
ウォークインクローゼット&作業スペースが誕生
「前回お伝えした『寄せる片付け』の寄せる場所として活用できるスペースを確保しました。一時的に寄せる場所にしていますが、ここが整理できれば、新たなスペースとして活用できるようになります。おうち時間が増えた今、いつまでも物置きにしているのは本当にもったいない。趣味のフラワーアレンジメントや手芸の作業を、ダイニングテーブルでやっていると聞いたので……Fさんがいずれ自分の時間を楽しめるスペースも作っちゃいました」
なんと、スチールラックで部屋を2つに区切って、手前をウォークインクローゼットに、奥は一時的な「寄せる」場所とし、将来は趣味部屋として活用できるようにした、とのこと!
想像していなかった変化に、Fさんもビックリ。
「わー、すごい! 同じラックを使っていると思えないほど、ステキに変身しました。前より多くの洋服が収納できているのに、スッキリ見えますね。六畳の部屋にウォークインクローゼットと作業スペースができるなんて思ってもみませんでした。ずっと作業スペースが欲しいと思っていたので本当にうれしいです。どんな作業机を置こうかワクワクしてきました!」
大興奮のFさんを見て、古堅さんも満足そうです。
暮らしを変える収納力!工夫次第で趣味部屋は作れる
クローゼット収納の悩みだけではなく「趣味のための作業スペースがない」というお悩みも、棚で部屋を区切るというアイデアで解決した古堅さん。
「部屋が狭いから・収納が少ないからと、自分専用のスペースを諦める必要はありません。リビングや寝室の一角だって、家具をうまく配置して空間を区切ればOK。一人で趣味に没頭できるスペースを作ることは、生活のゆとりにつながります。ちょっとの工夫で家族みんなの生活を豊かにする片付け、それこそがWithコロナ時代の『片付けの新常識』です」
ステキに生まれ変わった空間で、熱く語る古堅さんを前に、リビングの片付けを始める前は、ただ「すっきりキレイにしてほしい」と、具体的に「どう暮らしたいのか」が見えてなかったFさんにも“理想の暮らし”のイメージが見えてきたようです。
「古堅さんの『寄せる片付け』は、これまでの『片付け=隠す』というやり方ではなく、住んでいる人の生活スタイルをよりよく変える片付け方で、まさに“片付けの新常識”でした。
モノを捨てなくても、使用頻度と生活動線を考えてモノの収納場所を見直すやり方で、寝室もクローゼットもスッキリ使いやすく変身させ、趣味のための作業スペースも作り出す発想力・実行力に、ただただ感動です!
大量の書類など、まだ整理が必要なモノもあるので、これからの暮らしに必要かどうか見直して、さらに理想の暮らしに近づけるように、家の中を整えていきたいと思います」(Fさん)
モノが動くと、空間ができる
空間ができると、心が動く
心が動くと、人生が変わる。
もし、今の家が「暮らしづらい」と感じているなら、まずはモノを寄せて「空間をつくる」ことから始めてみませんか? きっと、あなたの理想の暮らしが見つかるはずです。
監修者プロフィール:古堅純子さん
ふるかた・じゅんこ 幸せ住空間セラピスト・家事効率化支援アドバイザー。1998年、老舗の家事代行サービス会社に入社。20年以上現場第一主義を貫き、お客様のもとへ通っている。5000軒以上のお宅に伺いサービスを重ね、独自の古堅式メソッドを確立。整理収納アドバイザー1級。個人宅や企業内での整理収納コンサルティング、家事効率化支援事業を展開。テレビ・ラジオ・雑誌などメディア取材協力も多数。
取材・文:竹下沙弥香(ハルメクWEB)
Youtube動画でも片付けの様子を紹介!
古堅さんのYoutubeチャンネル「週末ビフォーアフター」では、家が散らからない片付けの方法を動画で紹介しています。今回ご紹介したFさん宅の片付けビフォーアフターも、動画でわかりやすく解説しているので、記事とあわせてチェックしてみてくださいね♪
>>【第34話】捨てられない人の「寄せる」片付け 寄せる場所の選び方・作り方
参考書籍:シニアのためのなぜかワクワクする片づけの新常識 (朝日新書・刊)
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