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- 不思議な本「熊の敷石」
幼少の頃から読書が大好きな久田さんが、定期的に行っている読書会についてや、文学にちなんだ場所巡り、おすすめの本について紹介。今回は読書会にて、堀江敏幸さんの「熊の敷石」を読んだお話です。
5月は「熊の敷石」
2019年5月の読書会の課題図書は堀江敏幸氏の短編集「熊の敷石」。今までに読んだことのない不思議な本でした。
こんな本を読むのは初めてだと思い、会の席でそんなことを話すと、他のメンバーも同じ意見の人がほとんど。短編小説なのだけれど、斜め読みできないほど密度が濃く、それでいて話が全く違う展開になるので、途中で置いておいてしまっても、またそこから前を読まなくてもスーと入っていける……そんな不思議な本でした。
一見ばらばらな話が絡み合う作品
書き始めは、熊についてのメルヘンチックな描写から始まります。
そして描写は現代へ。
フランス留学経験のある日本人の「私」は、「フランス語辞典」を書き上げた「リトレ」の伝記の紹介文と部分訳を作る仕事のためフランスを再び訪れ、田舎にいる旧友ヤンを訪ねます。
ヤンと再開して話をするうち、「私」はびっくりしました。ヤンはリトレと同郷「アヴランシュ」出身の人だったのです。
そこからヤンとの話が弾み、モン・サン・ミシェルやリトレが引用した寓話について、ヤンとの出会いなどなど、次々に話題が移り変わっていきます。
ユダヤ人問題や、ヤンの隣人カトリーヌと盲目の息子についてなど、重い内容の話も多くありました。
ひとつひとつは関係がなさそうなさりげないエピソードなのですが、それぞれが綿密に絡み合っており、しっかりと繋がって一本の作品を構成しています。
物語の最後は熊の敷石の寓話で終わっていて、非常に考えさせられる内容となっていました。
書き出しと、最後の部分の構成が本当に見事な作品で、時間がある時にぜひもう1度ゆっくり読んでみたい本です。
また、最初に書いた通り少しずつ読むのに向いている本なので、普段はあまり本を読まない人にもぜひオススメしたい一冊です。
堀江敏幸氏の作品を読むのは初めてでしたが、今回の「熊の敷石」が非常に面白かったのでもう少し読んでみようということになり、来月の課題図書は同じ作者の「めぐらし屋」になりました。
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