50代からの女性のための人生相談・160

人生相談:病気をしてから生きる気力がなくなった…

名取芳彦
回答者
元結不動・密蔵院住職
名取芳彦

公開日:2023.11.22

読者のお悩みに専門家が答えるQ&A連載。今回は64歳女性の「半年前に病気になり、完治してからも生きる気力がわかず、何もする気になれないです…」という相談に、仏教の教えをわかりやすく説いて「穏やかな心」へ導く、住職・名取芳彦さんが回答。

64歳女性「体調不良がきっかけで生きる気力がなくなった」という相談

半年ほど前に体力と免疫力が低下し、病気を患いました。病気は治ったのですが、仕事が忙しいのもあり何もする気になりません。

このままだと悪循環だと思い、何か趣味を持ち、心身ともに健康でありたい!と思っています。しかし、いろいろ挑戦したいという気持ちがある反面、体力がついていかず、うまくいきません。

そんことを繰り返していて、生きる気力がどんどんなくなってしまいました。私は今後どうしたらいいのでしょうか……?

(64歳女性・コウシさん)

名取さんの回答:元気を出す3つの方法は「座る」「食べる」「役に立つ」

日本語の「元気」は、元にある気、元々ある気という意味です。誰もが根源的に持っている“生きようとする力”のことでしょう。元々ある“気”はなくなりませんから、「元気がない」は「元気の出し方がわからない」という意味でしょう。

生きる気力がなくなってしまったとおっしゃるコウシさんは、まさに元気の出し方がわからない状態なのだと思います。

そこで、元気の出し方をいくつかご紹介しますが、その前に確認していただきたいのは、病気治癒後のメンタル面の医学的な診断です。コウシさんの病気の後遺症として鬱(うつ)になることはないかということです。

鬱は必ず治る病気だそうですし、そのための治療法も日々進んでいます。生きる気力を覆っている雲の正体を明らかにするために、一度医学的な診断をしてもらってはいかがでしょう。

さて、私が思いついた元気の出し方を3つお伝えします(私ならこの方法を試してみるという意味です)。

元気の出し方1:お寺で「変わる力」を発揮させる

元気の出し方1:お寺で変わる力、を発揮させる

一つ目は、本堂を開放しているお寺を探して、堂内でただ座ることです。本堂には30分から1時間くらい滞在したいところです。

人は誰でも、変わる力、変われる力を持っています。その力が発揮されやすいのが、多くの人が祈りを捧げてきた本堂という空間なのです。
※警備や行事の都合で、本堂を開放していないお寺もあるので、チェックしてみてください。

元気の出し方2:郷土料理で「生きる底力」を引き出す

元気の出し方2:郷土料理で生きる底力を引き出す

二つ目におすすめするのは、郷土料理を食べること。

コウシさんの町にも、各地の郷土料理を出すお店があるでしょう。郷土料理と名乗らなくても、どこかの土地の名前が店名になっているなら、郷土料理を食べられる可能性があります。

それぞれの土地で食べられてきた料理は、その土地で暮らす人が元気に生きるために作り続けられているもので、底力があります。その力にあやかってみるのです。

郷土料理のお店がない場合や、あっても行く気力になれないのなら、ショッピングセンターの物産展で食べたいものを探してはいかがでしょう。店員さんに、土地の人がどんなときに食べるものなのかを聞いて、家でしみじみ味わえば胃も喜びます。

元気の出し方3:ボランティアで「活力」を得る

元気の出し方3:ボランティアで活力を得る

三つ目は、ボランティアです。

誰かの役に立てることをするのは生きる活力になります。自治体の広報やホームページを見るとボランティア募集の案内があります。今の自分にできそうな分野にエントリーしてみるのです。

ボランティアグループに参加するのが躊躇(ちゅうちょ)されるなら、自宅の前だけでなく、向こう三軒両隣の歩道や道路(集合住宅なら共同の玄関や階段など)の掃除をしてはいかがでしょう。誰かの役に立てます。

それでも元気が出ないときは「待つ」ことも大切

それでも元気が出ないときは「待つ」ことも大切

生きる気力(元気)を出すための具体的な方法を3つご紹介しました。

「お寺の本堂で座る・郷土料理を食べる・人の役に立つことをする」

これらの一つを何度か実行しても、生きる気力が出ないなら、無理をせずしばらく待つ(放っておく)覚悟をすればいいのです。

いずれにしろ、現状を変えたいなら、動くしかありません。船は止まった状態で舵をいくら動かしても、その場から動きません。動かないと舵がきかず進路が変わらないのです。

他にも、人それぞれで元気が出る方法があります。一人で考えず、そばにいる人に「あなたの元気の出し方はどんな方法?」と聞いてみてください。三人寄れば文殊の知恵ですから、「やってみようかな」と重い腰があがる方法に出合えると思います。

コウシさんがあげた帆が風をいっぱいに受けて、舵を手に、人生後半の大海原を進まれることをお祈りしています。

回答者プロフィール:名取芳彦さん

回答者:名取芳彦さん

なとり・ほうげん 1958(昭和33)年、東京都生まれ。元結不動・密蔵院住職。真言宗豊山派布教研究所所長。豊山流大師講(ご詠歌)詠匠。写仏、ご詠歌、法話・読経、講演などを通し幅広い布教活動を行う。日常を仏教で“加減乗除”する切り口は好評。『感性をみがく練習』(幻冬舎刊)『心が晴れる智恵』(清流出版)『気にしない練習』(三笠書房)、『心がすっきりかるくなる般若心経』(永岡書店)など、著書多数。


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