【Up select】オトナ女性が着回せる秋服
おしゃれ賢者に聞く50代からのファッション流儀
50代「何を着ても似合わない…」美木ちがや流・服に自分を合わせないおしゃれ
「いつもの服が似合わない」「周りから浮いている気がする」――。50代からの服選びの迷いをどう乗り越える?トータルビューティデザイナーの美木ちがやさん(63歳)に、失敗と挑戦を経て辿り着いた「おしゃれの自分軸」の育て方を伺いました。
INDEX
美木ちがやさんのプロフィール
みき・ちがや 1963(昭和38)年東京生まれ。トータルビューティデザイナーとして雑誌等で活躍。東京都・渋谷で完全予約制サロン「KAWABE LAB」を運営。母・川邉サチコさんとともにヘアメイク、ファッションのトータルアドバイスも行う。 雑誌「ハルメク」で10月号より新連載もスタート!
服に自分を合わせない。それが50代の正解
「なんだか最近、いつもの服が似合わない」
「街や会社で、自分だけ浮いている気がする」
50代に入り、体型や肌質の変化、子育てや仕事での立場の変化とともに訪れる「おしゃれ迷子」。これまで、どうすればいいかわからないと悩むたくさんの大人女性たちに出会ってきました。
かくいう私も、かつては全く同じ迷いの中にいました。そして今も迷うことだってあります。
でも、たくさんの挑戦と失敗を重ねて辿り着いたのは、「服に自分を合わせるのではなく、自分に服を合わせる」という意識の転換でした。
40代のおしゃれ迷子を経て見つけた「自分軸」

「似合う服がわからない」と迷っていた40代後半、私は手当たり次第にトレンドを試したり、憧れの人を真似してみたりと、意識してたくさん服を買ったりもしました。でも、どれだけ流行の服を着ても、どこかしっくりこない。
どこか、若い頃と同じ基準で服を選び、誰かの正解をそのまま追いかけていたのかもしれません。
一方で、私はシングルマザーですごくお金に苦労した時期もありました。「あれいいな、欲しいな」と思っても買えない経験をしたからこそ、どう工夫するかという試行錯誤をしてきました。「あ、これでも意外といけるな」ってね(笑)。
「たくさん試して失敗した経験」と「買えない中で工夫した経験」。その両方を経て私が見つけた答えが、「エレガント+スポーティ」という自分なりのスタイルでした。
仕事柄動き回ることも多いので動きやすさは大前提ですが、ただカジュアルなだけだと「手抜き」に見えて老けて見えてしまう気がする。だからこそ、大好きなデニムやTシャツ、スニーカーに、仕立ての良いジャケットや上質なアクセサリーを効かせる。それが私にとって一番心地いいバランスです。
服選びで大切なのは、プチプラかブランドかではなく、自分が「好き」と思えるかどうか。心地よさと品格、そのバランスを自分で選べることこそ、大人のおしゃれの醍醐味だと思います。
美木さんをアップデートしてくれるジャケットスタイル

一見シンプルでも、背景や思いが込められた服は、身にまとうだけで気持ちを引き上げてくれます。
シンプルだけど上質な日常着、COMOLIの白いジャケットは、今とても気に入っている一着。デザイナーの物作りに対する考え方や時代性にシンパシーを受け、「この服を今は着たい」という気持ちが生まれました。
合わせたのは、毎年買い替えている無印良品の790円のTシャツと、スタジオニコルソンのホワイトデニム。オールホワイトの潔さを楽しみながら、刺繍のブローチで遊び心を添えています。
「人の目」より「場所」と調和する装いを

「周りから浮いている気がする」という不安も、誰もが一度は通る道だと思います。私もその都度悩んだり、「こういう服は着てはいけないのかな」って迷った時期がありました。
一番気にしたのは、子どもの集まりや学校行事。自分一人ならいいけれど、子どもがいる場では自分の「好き」が目立ってしまい、周りとのギャップに悩んだこともありました。うちは子どもが厳しくて、「勇気あるねお母さん、その格好で電車乗ってきたの?」なんて言われたり(笑)。子どもには子どもの立場や気持ちがあるんだなと学びました。
一方で、101歳で亡くなった祖母は生涯現役の美容家で、「いつ誰が見ているかわからないんだから、きちんとしなさい」が口癖。入院中もきれいな浴衣にお化粧をして迎えるような人でした。そんな祖母の姿を見て育ったこともあり、「品格を忘れない」という意識は自然と身についたのだと思います。
でも「人の目」ばかり気にしたり、逆に自分の「好き」を押し通そうとすると、かえってバランスを崩してしまう。
いろいろな場を経験して実感したのは、装いで一番大切なのは、誰かの顔色に合わせることではなく、行く「場所」と調和させるということでした。
だから私は、お客様や生徒さんにも、服を選ぶときは行く場所のインテリアや照明、天候まで考えてみて、と伝えています。その場はカジュアルなのか、フォーマルなのか。どんな関係性の人が集まるのか。その空間に立ったとき、自分がどう見え、どう調和するのか――。そこまで考えて装うことが、祖母の言う「きちんとしている」ということなんじゃないかなと思うんです。
なんて言いながら、今でも自分が間違えちゃうときもあるんですけど、まあそれはドンマイってことで(笑)。
多様化した今は、人それぞれ感じ方も価値観も違って当たり前。神経質になる必要はありません。でも、「この空間とどう調和するか」という視点は、大人のおしゃれには欠かせないと思っています。
トレンドは追わない。自分の「好き」を使い切る

結局のところ、「人の目」や「トレンド」を気にして何を着ればいいか迷うのは、無意識に自分以外の誰かの軸で服を選ぼうとしているからなんですよね。
服そのものよりも、その人自身が重ねてきた経験やマインド、そこから生まれる魅力をそのまま生かすことこそが、大人女性が纏うエレガンスだと思うんです。
今の私の定番はジャケットスタイル。ジャケットは、シャネルを着る日もあれば、H&Mを選ぶ日もある。その日の気分や行く場所に合わせて、自分が「好き」「心地いい」と思えるものを選ぶ。そんな余裕のある装いが今の私らしいおしゃれの軸です。
そして、お気に入りのいい服は、大切にしまい込むのではなく「使い切る、使い込む!」
「こんなに使っていいんだよ、わたし」って、日常で惜しまず着て、自分の体になじませていく。物に負けないマインドがある大人だからこそできる、一番贅沢なおしゃれの楽しみ方だと思います。
失敗も挑戦も重ねながら育ててきた「自分軸」があるからこそ、今が一番自由に、自分らしくおしゃれを楽しめている気がします。
60歳を過ぎて「肩書きではなく自分として生きる」と決めた美木さん。介護の日々を支えた装いの力や、「年齢は衰えではなく進化」という考え方について、後編で詳しく伺います。
取材・文=長倉志乃(HALMEK up編集部) 写真=中田陽子
#1 50代「何を着ても似合わない…」美木ちがや流・服に自分を合わせないおしゃれ
#2 美木ちがやさん「人生つらい時ほどおしゃれを」装いは自分を生きるツール
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