通信制 山本ふみこさんのエッセー講座第9期第3回
今月のおすすめエッセー「中華粥」田中眞理さん
随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から山本さんが選んだエッセーをご紹介します。第9期3回目のテーマは「想像(力)」。田中眞理さんの作品「中華粥」と山本さんの講評です。
「中華粥」田中眞理さん
中華粥
寒気とのどの痛み。この違和感、もしかして? と思ったときには……、インフルエンザに感染していたのです。
寝こみ始めて2日目、痛みも高熱もあまり変わらないまま、目をつぶっていました。
夢を見ました。
「回るお寿司」ならぬ「回るお粥」のお店にいました。
レーンには、お茶碗に、3口くらいで食べられそうな中華粥のようなものが、ホカホカの湯気をたてて、回っています。それぞれ、干しシイタケの煮たものだったり、カニ身のようなものだったり、タケノコもあったかな、1種類ずつ具材がのせられており、全部おいしそう、全部食べたい! と思いながら、私は蓮華を持ってレーンを眺めているのです。
でも、なぜか手が届かない……。
すごくもどかしい思いでいるうちに、半開きの口から吸う息が、乾燥したのどにはりついて、ひりひりしていることに気づいて、目が覚めました。
スポーツドリンクでのどを潤してから、再び眠りにつこうとしましたが、さっきの夢の中華粥にのせる具材を思い、冷蔵庫のチルドルームの鶏手羽先が思い出されたのです。
とつぜん急にインフルエンザになったので、冷蔵庫は放置状態。
そろそろ、手羽先を食べようかと思っていた矢先でしたからね。
中華粥。
頭の中で、できあがりました。お米1合はかる。洗う。炊飯器へ。おかゆの水加減にする。鶏がらスープの素を入れる。お酒も足そう。たっぷりの薄切り生姜、手羽先を並べて、おかゆモードで炊く。きっと最高のおかゆが炊き上がるに違いないと確信して、にんまりしました。
これが頭の中の想像だったのか、夢だったのか、今となってはわからないのですが、インフルエンザから復活して、お布団から出た最初のごはんに、「鶏手羽先の中華粥」を作ってみました。
3日間食事をとらなかった胃袋に、生姜の香りと、ぷりぷりの手羽先がしみわたる、おいしいおかゆが炊き上がったのでした。
体内にウイルスが滞在しているとき、身体はきっと、いろんな違和感に一生懸命対応してくれている。思考もまた、苦しまぎれにいつもとは違う思考回路が一瞬できるのかもしれません。身体はへとへと、脳はなんとなく冷静で、いつもじゃないレシピがふと通りかかったりして。
山本ふみこさんからひとこと
インフルエンザ感染が、「中華粥ものがたり」につながってゆくとは……。
ものがたりも、こうして読むと、「冒険」ということばをつけたくなりますね。
構成がまず見事でした。
体内にインフルエンザのウイルスが滞在しているときの観察もまた、いいじゃありませんか。
身体はへとへと、脳はなんとなく冷静で、いつもじゃないレシピがふと通りかかったりして。
ですって。
モウレツに中華粥が食べたくなり、わたし自分でこしらえました。
通信制 山本ふみこさんのエッセー講座とは
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は講座の受講期間の半年間、毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。
■エッセー作品一覧■
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