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- 人生相談:90歳の母に会いに行かない私は親不孝?
読者のお悩みに専門家が答えるQ&A連載。今回は64歳女性の「若い頃から不仲な90代の母。最後に会っておくべきか悩みます…」という相談に、仏教の教えをわかりやすく説いて「穏やかな心」へ導く、住職・名取芳彦さんが回答します。
64歳女性の「苦手な母との関係」についての相談
私の母は90歳で大阪に住んでいます。今は妹が面倒を見てくれていますが、私(64歳/関東在住)は母が苦手なので、仕送りだけしている状況です。
私の娘は「会いに行かなくて後悔しないの?」と聞いてくれますが、私の正直な気持ちは、あまり会いたくありません。母は情が濃いのですが、決めつけることが多くあり、若い頃はよくけんかをしました。
そのため、母と会うときはいつもビクビクしていました。今までいろいろな場面で我慢してきたことも多かったので、今は母のことに限らず「嫌なことはやりたくない」という思いが強くなってきています。
でも、母との関係が「このままでいい」とは思っていません。
現状「これでいい」としている私は、親不孝でしょうか?母も90代になったので最後に会っておくべきだとは思うのですが……どのようにしたらいいかがわかりません。
ご住職のお考えをお教えいただきたいです。
(64歳女性・MFさん)
名取さんの回答:後悔しないようにポジティブに決断を
今回のご相談については、MFさんご自身が書かれているいくつかの言葉が解決のヒントになりそうです。
まず、お嬢様が言った「後悔しないの?」という言葉から。
後悔するかしないかは、決断するときに、心の底からそう思ったかどうかによります。お母様に会いに行っても、行かなくても、心の底からそう思って決断したなら、後からふり返ったときに「あのときの自分や母の状況を考えたら、その決断をするしかなかった」と納得できます。
次は「今までいろいろな場面で我慢してきた」という言葉です。
我慢は、目標がないとできません。逆に、目標があれば、その実現のために、やりたくても我慢してやってはいけないこともあります。逆に、やりたくないことでも目標達成のためなら、それほど苦に感じないで我慢できます。
MFさんがいろいろ我慢してきたのも、お母様の機嫌を損ねたくないなど、何か目標があったからでしょう。今一度、かつて我慢したときの自分の目標が何だったのかを再確認することをおすすめします。
そうすれば、ただ我慢させられたのではなく、目標を達成するために自分が我慢しただけだったのだと納得できて、心が少し軽くなります。
「嫌なことはやりたくない」とおっしゃっているのは、もっともなことです。誰でも、嫌なことはしたくありません。しかし、目標があって、それを達成するためには、嫌なことでも、やらなければならないことがあることは覚悟しておきたいものです。
大阪へお母様に会いに行くにせよ、行かないにせよ、どんな目標を達成するために行くのか、行かないのかを明確にすれば、自分を抑圧するネガティブな“我慢”というな感情は薄れます。
そして、「最後に会っておくべきだと思う」という言葉です。
「べき」という言葉は、何かにこだわっていると、つい口から出る言葉です。決めつけが多かったかつてのお母様も、「べき」というこだわりが多かったのではないかと推察します。
私は、心穏やかに生きるためには、こだわりから離れたほうがいいと思っているので、「べき」という言葉はなるべく使わないようにしています。「べき」ではなく「~のほうがいい」で十分楽しく生きていけますし、心も穏やかになります。
MFさんも「最後に会っておくべき」ではなく、「会っておいたほうがいい」くらいにソフトに考えてはいかがでしょう。
「自分のチャレンジ」としてお母様に会っても
90歳になるお母様に会いに行かないご自分を親不孝ではないかと心配していらっしゃいますが、私自身は(子どもが3人いますが)、子どもは無事に生まれただけで、親孝行の8割は済んでいると思っています。
残りの2割は、生んでもらった本人がどのように生きていくかで返していくしかないでしょう。
今のうちにお母様に会っておくというMFさんの勇気ある生き方も、残った2割の親孝行の一部になるかもしれません。
64歳になったMFさん。ソリの合わないお母様とその場だけでも、優しい娘を演じるくらいの経験は積んでこられたことでしょう。ご自身にその力があるかどうかを笑顔で試してみる良い機会だと思います。
その意味で、お母様のためではなく、ご自分のチャレンジとして会いに行かれてはどうかと思います。
大阪まで新幹線で行くにせよ、飛行機で行くにせよ、車窓から見える富士山や、空に浮かぶ雲が、MFさんの大阪行きに対して、拍手で応援してくれているように感じられることをお祈りしています。
回答者プロフィール:名取芳彦さん
なとり・ほうげん 1958(昭和33)年、東京都生まれ。元結不動・密蔵院住職。真言宗豊山派布教研究所所長。豊山流大師講(ご詠歌)詠匠。写仏、ご詠歌、法話・読経、講演などを通し幅広い布教活動を行う。日常を仏教で“加減乗除”する切り口は好評。『感性をみがく練習』(幻冬舎刊)『心が晴れる智恵』(清流出版)『気にしない練習』(三笠書房)、『心がすっきりかるくなる般若心経』(永岡書店)など、著書多数。
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