ファッションのプロが教える「信頼される装い」#2
ハイブランドや骨格診断でもあか抜けない…50代の服選びの落とし穴
ハイブランドや骨格診断でもあか抜けない…50代の服選びの落とし穴
公開日:2026年06月08日
※本記事は、書籍『信頼を着る: 第一印象で選ばれる女性の「装い戦略」』(三笠書房)より一部抜粋して構成しています。
教えてくれたのは、長友妙子(ながとも・たえこ)さん

ファッションコンサルタント/エグゼクティブスタイリスト。1983年にスタイリストデビュー後、『CLASSY.』『Precious』『家庭画報』など数々の女性誌や広告、テレビ、イベントで活躍。現在は「長友スタイル ~ビジネスが成功する着こなし~」講座を主宰。
トレンドやハイブランドが最優先ではない理由
服は、身体をただ覆うためのものではありません。あなたがどういう人で、どのような価値観や自覚を持ってその場にいるのか。自分の立場や役割を自覚したうえで、相手にどういった価値を提供できるのか。取引先や上司や部下に、どのように思われたいのか。人前に立つ仕事であれば、人々の目にどう映りたいのか――。
このように、自分が何者であり、どのようなスタンスや意志を持って仕事をしているのかを一瞬で伝えることが、ビジネスシーンにおける服の役割です。
では、ビジネスシーンの装いで、重要なこととは何でしょうか?
「トレンド」を押さえること? 「ハイブランド」の服を身につけること?
トレンドを取り入れた装いは「世の中の流れを捉えている」ということ。ハイブランドを身につけることは、「その歴史や文化的価値に対する知識教養がある」ということ。そう考えればどちらも重要な要素ではありますが、いずれも「最も重要」というわけではありません。
まず、トレンドを押さえることが重要と言っても、「トレンド一色」の装いでは、落ち着きを感じられず、信頼性に欠ける印象を与えます。トレンド感は「適度」であってこそ効果を発揮するものであり、装いの軸になるものではありません。
また、いくらハイブランドでも、ロゴが大きくプリントされているものを着ていると品性が損なわれます。ブランドの持つステータスだけがひとり歩きしてしまい、結局のところ、その人自身については何も伝わってこないからです。
結局のところ、ビジネスシーンで相手の信頼を得たいのなら、「自分が信頼に足る人間である」ということが伝わるようなファッションでなくてはなりません。信頼をまとうファッションに欠かせないもの――それは「品格」です。
品格のあるファッションとは、トレンドを追いかけ過ぎず、ブランドを身につけるにしても、その価値やストーリーを理解したうえでさりげなく装うもの。トレンドや、ブランドの主張が激し過ぎるファッションで身を固めるのは逆効果です。
パーソナルカラーや骨格は「絶対」ではない

自分を最も輝かせてくれるような、「自分に似合う服」を知りたい。しかし、その正解が見つからず、「パーソナルカラー診断」や「骨格診断」を頼りにする人が増えています。実際、ファッション誌やSNSでは診断系のコンテンツが大人気です。この10年ほどの流れを振り返ってみても、この流れは衰える気配がありません。
自分という人間に「ラベル」を貼ってもらい、進むべき方向を決定づけてもらう。その迷いのない「心地よさ」に、人は救われるのかもしれません。
もちろん、こうした診断自体は素晴らしいきっかけになり得ます。ただ、その結果を「絶対的なルール」として受け止めてしまうと、かえって自分自身の可能性を狭めてしまうことにもなりかねません。
仮に「あなたに合う色はこれ」「骨格に合うのはこの形」と、今まで選ばなかったものを提案されたとしましょう。それを機に、新しい扉を開くのはとてもよいことです。しかし、真面目な方ほど「正解」を守ろうとするあまり、たとえば「似合う色は紫」と言われたら、紫色の服ばかりを選んでしまう……といったことも起こり得ます。
50代のおしゃれは「正解」だけではうまくいかない
本来、ファッションはもっと自由で、その日の気分やTPOに合わせてさまざまな色や形を楽しめるもののはず。なのに、「私にはこれしかない」と決めつけてしまうのは、あまりにもったいないことではないでしょうか。
また、骨格診断などの「型」も便利な指標ですが、私たち人間の身体や魅力は千差万別です。数種類のパターンだけに当てはめようとするには、一人一人の個性はあまりに豊か過ぎるとも言えます。
大切なのは、診断結果に縛られるのではなく、それを「ひとつのヒント」として賢く活用する距離感です。なぜなら、診断が教えてくれるのは、あくまで「今のあなたの外見」に調和するものだからです。そこには、「あなたがどう生きたいか」「未来の自分はどうありたいか」という、一番大切な「意志」までは反映されていません。
物理的に「似合っている」ことと、その人の生き方として「魅力的である」ことは、似て非なるものです。
ファッションには、理想の未来をたぐり寄せる力があります。その主導権を、外部による診断だけに委ねてしまうのは、ファッションの持つ最大の効力を手放しているのと同じかもしれません。
今の立場、内なる想い、そしてこれから目指す未来。そのすべてを含めた「あなた自身」に根ざした装いこそが、本当の意味での「似合う」であり、揺るぎない信頼をまとうということなのです。
損する服とは「着古した服」や「TPOに合わない服」

ファッションは未来を切り拓く力になる一方で、ひとつ間違えると未来の可能性を損ねかねないものでもあります。無頓着に「損する服」を着ていたばっかりに、知らないうちにチャンスを逃している可能性すらあるのです。
では「損する服」とは、どんな服か? 最も基本的なことからお伝えすると、たとえ仕立てがよくても、「着古した服」では、くたびれた印象になってしまいます。必要不可欠な「清潔感」が失われていることもあるでしょう。
服は本来、着る人を引き立てる「輝き」を持っています。しかし、着古された服にはその力が残っておらず、着る人を「生気のない、疲れた人」に見せかねません。その意味で、私は古着やビンテージの服なども、ビジネスシーンではおすすめしません。
また、その場の空気感とちぐはぐな「TPOに合わない服」も、あなたの価値を下げてしまう「損する服」です。ビジネスシーンで華美過ぎる装いは、相手の集中力を削いでしまいますし、逆に、華やかなパーティでリクルートスーツのような装いでは、その場を楽しんでいる余裕がないように見えてしまいます。
服選びひとつで「信頼感」は変わっていく
このように、「どう装うか」はシーンによって正解が変わります。しかし、多くの方は失敗を恐れて「無難」な選択にとどまっているのが現状でしょう。これは裏を返せば、シーンごとの「さじ加減」を知ることで、「無難」や「適切」の枠を超えた、洗練された大人の装いができるようになるということでもあります。
目指すべきは、「信頼をまとい、未来を切り拓く服」を選ぶこと。
たかが服、されど服。
装いひとつで未来が大きく拓かれることもあれば、逆に閉ざされることもある――。まずはこの事実を、心に留めていただければと思います。
次の記事では、「安いから」で服を買うと失敗しやすい理由や、50代から本当に必要な“信頼される服選び”のポイントをお伝えします。
もっと詳しく知りたい人は
『信頼を着る: 第一印象で選ばれる女性の「装い戦略」』長友妙子・著(三笠書房)






