女優・永作博美さん
女優・永作博美さんインタビュー

公開日:2020年10月23日

特別養子縁組がテーマの映画「朝が来る」で気付いた事

女優・永作博美!全てを持つ女性が幸福とは限らない

女優・永作博美!全てを持つ女性が幸福とは限らない

映画、ドラマで活躍している永作博美さん(50歳)は、主演はもちろん助演でも輝ける演技派女優として人気です。そんな永作さんに、最新主演映画「朝が来る」の役作りの話から、女性の幸せについて、そして私生活の話までインタビューしました。

50歳の永作博美が考える、親子関係や女性の幸せ

女優・永作博美さん

女優・永作博美さんが主演する映画「朝が来る」は、辻村深月さんの同名原作を河瀨直美監督が映画化したミステリータッチの人間ドラマです。子どもができない佐都子(永作博美)と清和(井浦新)の夫婦が、特別養子縁組により、男の子を迎えます。しかし、数年後、生みの親が「子どもを返して」と訪ねてくるという物語。

永作博美さんは、子どもができずに悩む日々から、親になってからの葛藤、そして生みの親である少女との再会など、ヒロイン佐都子のさまざまな思いをとても細やかな演技で見せていきます。そんな永作博美さんに、佐都子の女性像から、親子関係、女性の幸せなどのお話を聞いてきました。

※特別養子縁組:生みの親と法的に親子関係を解消し、養親と養子が実の親子と同じ関係を結ぶ制度

演技派女優・永作博美が、悩みまくって挑んだ難役

映画『朝が来る』

―佐都子は、仕事も順調で、夫とも仲が良く、何不自由ない生活をしているように一見見えますが、子どもができずに悩んでいました。悩みも含めて、等身大で共感できる人物でしたが、永作さんは佐都子をどのような女性として捉えていますか?

永作博美さん(以下、永作博美)
とても難しい役でした。佐都子は、台本を読んでも読んでも裏の顔が見つからない女性。何事も自力で解決できる知性があり、弱点がないから人間味が出しにくい人物なのです。とにかく「目の前にあることを一つ一つやっていけば、きっと佐都子になれる!」と信じて演じていました。

一番重要なのは、息子が養子であることが佐都子の心に少し隙間を作っていることかなと。自分が産んだ子ではないという事実が、彼女の心にひっかかっていると感じたので、そこを忘れないようにしました。

―佐都子は、養子を迎えることをきっかけにいろいろな壁にぶつかりますよね。

永作博美

永作博美
たぶん、それまで彼女の人生はそれほど困難に直面することはなかったんだと思います。何でもそつなく、うまくできていた人だから。でも子どもができないことから始まり、養子縁組をするべきか否か、生みの親が「子どもを返して」と言ってきたことにどう対処すべきかなど、次から次へとクリアできない難題が現れて「ついに佐都子に人生の正念場が来たか!」という感じです。

彼女みたいに何でもできる人でも、揺らいだり、決断ができなかったりすることがある。これをどう乗り越えるかで、彼女の人生は変わると思ったので大切に演じました。

養子の生みの親は中学生。若い女性の望まない妊娠に思うこと

映画『朝が来る』

―生みの親である中学生の少女のエピソードが強烈でした。大好きな同級生の彼氏と一線を越えたことがきっかけで中学生で妊娠したひかりは、とても幼い生みの親でしたね。

永作博美
そうですね。ひかり本人の性格もありますが、思春期の難しい時期に妊娠という大きな問題に直面し、とても不安だったと思います。人生経験も浅く、なかなか周りの声に耳を傾けられない年でもありますが、母親とのコミュニケーションをきちんと取れていなかったので、もっと彼女の心に寄り添い、声に耳を傾けてあげる人物がいたらと思いました。

出産した我が子を養子に出してから、生活が荒れ始めるのが映画で描かれますが、彼女みたいな子を支える制度があればいいですし、そういう社会になってほしいです。

仕事ができて、いい夫がいて、母になることが幸福とは限らない

永作博美

―仕事は順調、経済的にも安定し、夫も優しく、母親にもなれた佐都子は、傍から見たら、何でも持っている幸福な女性に見えますが、この映画を見て、幸せはそれだけでは測れないと思いました。

永作博美
本当に、何でも持っているからいいかというと、そうではないですよね。逆に持っていることで負担が増えるということもあるわけです。子どもを授かることに関しても、本来ならばとても喜ばしいことなのに、社会に目を向けると、とても耳に入れたくないような親子のつらい報道がありますし……。

人には器があり、その器に入りきれないほど抱えてはいけないんじゃないかと思います。でも人は欲しがりだから、あれも欲しい、これも欲しいと貪欲に思ってしまう。ただ、それを手に入れてから「自分では支えきれないほど重かった」ということもあるわけです。

永作博美

―欲望の赴くままに、手に入れて、たくさん抱え過ぎて整理できないことはありますよね。

永作博美
でも「無理だ」と思ったとき、そこで人は助けを求めたり、反省をしたりするんですよね。ひかりはそういう意味では、まだ若く小さい器しかないのに、「やっぱり我が子を取り戻したい」と佐都子に訴えて……。彼女には他にも理由があったのですが「取り戻した後どうするの? 育てていけるの?」と思ってしまう。彼女は先のことを考えられないんです。器以上のものを求めてしまっていたんですよね。 

―ひかりが「子どもを返して」と突然現れたとき、見ているこちらも佐都子と同じくらい驚きましたけど、生みの親のひかりと再会したことで、佐都子は、我が子が養子であることに対して抱いていた心のひっかかりに変化が現れますね。

永作博美
心のどこかで血のつながりのあるのが真の親子なのではないかという考えがあったから、息子との間にちょっと隙間があったんですよね。でもひかりの存在がいい意味でその隙間を埋めてくれましたね。最初は戸惑ったし、そこに至るまでいろいろありますが……。

今回、佐都子を演じて、周囲からは完璧に見えている人でも、何かしら抱えているものがあると言うことを知りました。何でも持っているのに寂しい感じがしたり、満たされなかったり……。生きている限り、誰もが何かしら抱えている。みんな一緒なんですよね。

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■映画情報

『朝が来る』

『朝が来る』
(2020年10月23日より全国ロードショー)
監督・脚本・撮影:河瀨直美
原作:辻村深月『朝が来る』(文春文庫)
出演:永作博美、井浦新、蒔田彩珠、浅田美代子ほか
(C)2020「朝が来る」Film Partners

■永作博美プロフィール
ながさく・ひろみ 1970年、茨城県生まれ。94年ドラマ「陽の当たる場所」で女優デビュー。映画、ドラマに多数出演。吉田大八監督作『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(2007年)の熱演が高評価。数々の映画賞の主演・助演女優賞を受賞し、演技派女優の地位を確立。直木賞作家・角田光代のベストセラー小説を映画化した「八日目の蟬」では日本アカデミー賞主演女優賞を受賞している。


取材・文=斎藤香 写真=泉三郎 編集=鳥居史(ハルメクWEB)

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