50代の不調に潜む「かくれアレルギー」#2

食べ慣れた「あの食品」で突然の呼吸困難!? 身近に潜む「かくれアレルギー」の謎

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食べ慣れた納豆や手作りパンケーキで、突然の激しい体調不良が発症!? その裏には意外な「真犯人」が隠れていました。食後数時間経って襲う異変と過去の体験のつながりや、粉の中に潜む謎のアレルゲンなど、身近な食のミステリーを専門医が解き明かします。

教えてくれるのは、アレルギー専門医・鈴木慎太郎さん

すずき・しんたろう アレルギー専門医・指導医。昭和医科大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギー内科学部門准教授/昭和医科大学医学部医学教育学講座准教授。専門分野は、食物アレルギー、アナフィラキシー、薬剤アレルギー、産業衛生、消化管アレルギー、喘息、呼吸器疾患など。著書に『その不調、「かくれアレルギー」が原因かも』あさ出版(刊)

食材だけじゃない?食後の運動や添加物に潜む意外な罠

mattsu / PIXTA

前回解説した「大人のかくれアレルギー」。今回は身近な食に注目し、食べ慣れた納豆やパンケーキで突然起きる不調の真相を解き明かします。

成人の食物アレルギーは、子どもに多い「原因となる食べ物を食べるだけで発症するタイプ」だけでなく、さまざまな要因やその組み合わせで発症する特殊型が多いことが特徴です。

食べ物そのものだけでなく、食後の運動や鎮痛薬の服用、飲酒、職業上のアレルゲンへの曝露、虫刺され、食品の保存状態、食品添加物、吸入アレルゲンとの交差反応なども、発症の引き金となるため注意が必要です。

例えば、小麦は食べただけでは症状が出なくても、食後に運動をするとアナフィラキシーを起こすことがあります。

また、症状が現れるまで時間がかかるものがあるため、直前の食事だけでは原因を見逃しやすい傾向があります。

食材そのものではなく、食品添加物や、原材料として目立たない成分が原因となることもあります。健康食品やハーブが、アレルギーに関連した臓器障害を引き起こすことも知られています。甲殻類と昆虫食、ダニとの交差反応など、「虫」が関与するアレルギーにも注意が必要です。

このように、食べものそのものがアレルギーの原因でないこともあります。

原因不明の症状があり、アレルギーが疑われる場合は、発症前に食べた物だけでなく、そのときの行動や食料品の保存状況、職業、事前の屋外活動なども含めて振り返ることが大切です。

【体験談】食べ慣れた納豆で突然呼吸困難…翌朝襲った異変

shige hattori / PIXTA

50歳の男性Dさんは、若い頃からサーフィンを続けている海好きです。ある日の夕食も、焼き魚や味噌汁、納豆など普段と変わらない献立でした。

食後に体のかゆみを感じたものの気にせず就寝。しかし翌朝、全身にじんましんが現れ、動悸や息苦しさも出現。立ち上がった際に突然意識を失い、救急搬送先でアナフィラキシーと診断されました。原因は、普段から食べていた納豆による、時間差で起こるアレルギーでした。

【納豆アレルギー】食べてから「ゆっくり」発症する特殊なアレルギー

sky&sun / PIXTA

納豆アレルギーは、大豆そのものではなく、納豆特有のネバネバ成分によって起こるアレルギーです。

原因として注目されているのは、納豆の粘りのもととなる「ポリγグルタミン酸(PGA)」です。この成分に体が過敏に反応することで、じんましんや呼吸困難などの症状が現れます。

納豆アレルギーの特徴は、食べてすぐではなく数時間から半日ほど経って症状が現れることがある点です。そのため原因に気づきにくく、診断が難しい場合もあります。

主な症状

  • 全身のじんましん
  • 皮膚のかゆみ
  • 動悸
  • 呼吸困難
  • 血圧低下
  • 意識障害(重症例)

など

意外な伏線!クラゲに刺されていた過去

この症例がわかりにくいのは、納豆を食べてすぐに症状が出るとは限らない点です。数時間から半日ほど経って発症することがあるため、原因が納豆だとは気づきにくいのです。

さらに、納豆アレルギーには意外な特徴があります。それは、過去にクラゲに刺された経験が関係している可能性があることです。クラゲの毒に含まれる成分と、納豆の粘り成分には似た構造を持つ部分があると考えられています。

そのため、クラゲに刺されたことをきっかけに体が反応しやすい状態となり、その後、納豆アレルギーを発症するケースが報告されています。

つまり、アレルギーの原因は直前の出来事だけとは限りません。何年も前の出来事が、思いがけず現在の症状につながっていることもあるのです。

対策の基本は、原因となる納豆を避けることです。

納豆アレルギーは食べてから症状が現れるまで数時間から半日ほどかかることがあるため、「昨日の食事は関係ない」と思い込まず、前日まで含めて食事内容を振り返ることが大切です。

【納豆アレルギー】食べてから「ゆっくり」発症する特殊なアレルギー

Sorapop / PIXTA

40代の女性Iさんは、休日にパートナーへ手作りのパンケーキをふるまうのを楽しみにしていました。

ある日、長期間保管していたミックス粉でパンケーキを作ったところ、食べ始めて間もなく、パートナーに涙や鼻水、まぶたや唇の腫れが出現。さらに咳や喘鳴、呼吸困難も現れ、救急搬送先でアナフィラキシーと診断されました。原因は食品成分ではなく、ミックス粉の中で繁殖したダニと判明しました。

【体験談】手作りパンケーキで搬送!パートナーを襲った呼吸困難

PicStyle / PIXTA

パンケーキ症候群は、ダニに汚染された小麦粉やミックス粉を食べることで起こるアレルギー反応で、正式には「経口ダニアナフィラキシー」と呼ばれます。

開封後の小麦粉やミックス粉を常温で長期間保存していると、室内のダニが入り込み、粉の中で増殖することがあります。そのダニの存在を知らないうちに一緒に食べてしまうことで発症します。

特徴的なのは、加熱してもダニのアレルギー成分が完全には壊れにくいことです。そのためパンケーキやお好み焼きなど中身がふわっとした料理の場合、中に残っているダニのアレルゲン成分によりアレルギー症状が現れることがあります。

主な症状

  • くしゃみ、鼻水、涙目
  • 口唇やまぶたの腫れ
  • じんましん、皮膚のかゆみ
  • 咳、喘鳴
  • 呼吸困難
  • 血圧低下、意識障害(重症例)

など

パンケーキ症候群が見つけにくいのは、原因となるダニが肉眼ではほとんど見えないためです。そのため、粉の見た目やにおいに異常がなくても発症することがあります。

また、ダニが混入した小麦粉やミックス粉を食べても症状が出るのは一部の人だけです。特に、ダニアレルギーやぜんそくを持つ人では発症しやすいことが知られています。

この病気の特徴は、小麦粉そのものではなく、保存中に混入・増殖したダニが原因になることです。

その結果、小麦アレルギーと間違われることも少なくありません。

普段の食生活の中に原因が隠れているため、食品の保存状況を含めて振り返ることが診断の重要な手がかりになります。

「パンケーキ症候群」を防ぐ鉄則の保存方法

パンケーキ症候群の予防で最も大切なのは、粉製品の保存方法を見直すことです。

小麦粉やホットケーキミックス、お好み焼き粉などは、開封後そのまま戸棚に置かず、密閉容器に入れて冷蔵庫や冷凍庫で保存しましょう。湿気や高温を避けることで、ダニの繁殖を抑えることができます。

また、「もったいないから」と長期間保存した粉を使い続けるのは避けたほうがよいでしょう。大容量の商品よりも、短期間で使い切れる量を購入するほうが安全です。保存期間が長くなった粉は、思い切って処分しましょう。

特にダニアレルギーやぜんそくのある人は注意が必要です。家族にダニアレルギーの人がいる場合も、粉製品の保存方法を見直しておくと安心です。

パンケーキ症候群は、食品そのものではなく不適切な「保存方法」が要因となるアレルギーです。日頃のちょっとした工夫が、重いアレルギー反応を防ぐことにつながります。

※症状や効果には個人差があります。気になる症状がある場合や長引く場合は、自己判断せず医療機関を受診してください。
※本記事は、書籍『その不調、「かくれアレルギー」が原因かも』より一部抜粋して構成しています。


次回の記事では、「朝起きると咳や鼻水…」風邪じゃない?寝具に潜むアレルギーの真犯人を紹介していきます。

■50代の不調に潜む「かくれアレルギー」をもっと読む■
#1:「年のせい」は誤解?2人に1人が持つ「かくれアレルギー」
#2:食べ慣れた物でなぜ?突然起きる「アレルギーの謎」
#3:「朝起きると咳や鼻水…」寝具に潜むアレルギーの真犯人

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