エッセー作品「限界野菜」甲斐てい子さん
通信制 山本ふみこさんのエッセー講座第9期第1回
「お土産」富山芳子さん
随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から山本さんが選んだエッセーをご紹介します。第9期1回目のテーマは「塩」。富山芳子さんの作品「お土産」と山本さんの講評です。
「お土産」富山芳子さん
お土産
旅行にでかけると、たいていなにかしらお菓子や土地の漬物といった土産を買って帰る。ただ、この頃は買って帰っても家族にあまり喜ばれない。この前は、留守番していた夫に「もう、買ってこなくていい」と云われた。それでもなにかしら買うのは、なにか旅行の記念を、という気持ちからかもしれない。そんな残りものが冷蔵庫のなかや、棚の隅にあったりする。そんななかで、最近おおいに喜ばれた土産がある。「塩」だ。
ツアーで五島列島に行ったとき、いろんな観光地を巡ったなかに海辺の小さな製塩所があった。そこで売られている塩は目の前の海から取り込んだ海水を大きな桶のなかで、ただただ煮詰めて出来上がったものだ。ちょっと舐めさせてもらうと、いい味がする。塩辛さだけでなく、複雑な奥深い味がする。これなら誰にも気軽にもらってもらえると、家族だけでなく友人にもと幾袋か買って帰った。珍しいことに、食べつくしたとき、夫にもっと買ってくればよかったな、と云われた。
以前、夫とふたりでツアーに参加してヨーロッパのチロル地方に行った時、土地の小さな雑貨店で瓶入りの塩を買ったことがある。海のないその地方で売られているのは岩塩で、土地の人が日常で使うものだった。いい味がした。食べきったあと、都内の店でさがしたが、みつからなかった。その土地にしかないものだったのだろう。
塩というとすぐに漬物が思い浮かぶ。自分にとってなによりなつかしい食べ物というと、真夏に毎日祖母が漬けていた丸茄子の漬物だ。我が家の畑で穫れた丸茄子を一度に何十個も漬けるが、単に塩をまぶしただけのものではない。時々前に使った漬け汁を、囲炉裏で大きな鉄鍋を使って灰汁をとりながら煮返し、すっかり冷ます。その漬け汁を使って漬ける。暑い夏の日の食卓に、大鉢にぷりぷりした瑠璃色の茄子が盛られてだされると、何個も食べてしまう。我が家の夏の食卓に欠かせないものだった。茄子と塩だけで作る美味である。
山本ふみこさんからひとこと
何より丸茄子の漬けもの、食べたい……。
塩の肩をもつ。
ものを美味しそうに描く。
お土産を、たのしく書く。
これについて、学んでゆきたいと思いました。……つくづくと。
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通信制 山本ふみこさんのエッセー講座とは
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は講座の受講期間の半年間、毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。
■エッセー作品一覧■
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