実母との同居体験談

2023年10月23日

58歳ユミさん体験談!38年ぶりの実母との同居

実母との同居体験談!遠慮がないからこそモメる

50代で実母と同居した女性の体験談を紹介します。実母との同居は、義母より遠慮がない分トラブルも激しくなる傾向があるようです。

実母と同居を始めた結果、激しいバトルが待っていた

実母との同居体験談1

嫁姑は他人だから理解し合えなくても当然。だからこそ「どうせなら自分の娘と同居したい」と思う母親世代は少なくないだろう。だが娘も50代ともなると、「今さら実母と同居するのはつらい」という声もあがる。実母は、義母より遠慮がない分、バトルも激しくなる傾向があるようだ。

子も巣立って平和に暮らしてきたのに……

実母との同居体験談2

東京郊外に暮らすユミさん(58歳)は、同い年の男性と結婚して30年。28歳の娘は都心の会社に通いきれず一人暮らしをしている。25歳の息子は同居しているものの、不規則な仕事のため帰って来たり来なかったり。

「みんな大人になったので、好きなように暮らしていますね。夫も夕飯がいらないことも多いし、すっかりラクになりました」

ユミさんは家で洋裁関係の仕事を続けている。若い頃、家では作業がしにくいだろうと、夫が庭に小さな工房小屋を作ってくれた。家族を送り出すとその「小屋」にこもるのが日課だった。

「娘がいなくなって部屋はあいたんですが、やはり小屋にこもった方が仕事がしやすいんですよ」

夫とは大きなケンカをしたこともなく、ずっと友達感覚で平和に暮らしてきた。

「ところが2年前、私の父が亡くなって母が一人になってしまった。兄夫婦が同居を始めたんですが、母は義姉と折り合いが悪くてうつ状態になって……。夫が、かわいそうだからここへ来てもらえばいい、と言ってくれたんです」

母親と暮らすのは実に38年ぶりで不安は的中

実母との同居体験談3


ユミさんはためらった。彼女は大学進学してから一人暮らしだったため、母と暮らすのは実に38年ぶり。いくら実母でも、今さらスムーズに生活できるとは思えなかった。

「私自身、母に対してはあまりいい感情を持っていなかったんです。だから義姉が折り合いが悪いというのもよくわかった。母はちょっと特殊な人で……。まあ、平たく言えば支配欲が強い。しかもその裏に自分が一番でないとイヤというワガママなお嬢さんみたいな性質が見え隠れするから、周りが振り回されるんです」

それでも母を見捨てるわけにもいかないと情にほだされたのが運の尽きだった。2階の娘の部屋をと思ったが、母もその時点で83歳。階段を使うのはつらいだろうとリビングの隣にあった小部屋を片付けて母の部屋にした。

「母はやってくるなり、『ここが私の部屋?狭いわね』って。最初に言うセリフがそれかと、がっくりきました。リビングは好きに使っていいからととりなしましたが、イヤな予感がしましたね」

それ以降、ユミさんはストレスフルな日々を送らざるを得なくなる。

娘をアゴでこき使う実母にイライラ

実母との同居体験談4

引っ越してきたその晩、母はユミさんの料理を食べて、「料理はあまりしないの?」と言い放った。どうやら味つけが気に入らなかったらしい。さらに、「私は朝ご飯は7時半。パンとサラダと卵料理でいいから」と言った。

「うちは朝食はそれぞれ勝手に作って食べるんですよ。母には、元気なんだから自分でやってと言いました。すると親に向かってどうとかこうとかぐちゃぐちゃ文句を言い出した。これには夫も、その日祖母を迎えようと帰ってきていた娘もドン引き状態。みんなそそくさと自室に引き揚げました。『うちで暮らすなら、うちのルールにのっとって生活してほしいんだけど』と母に穏やかに言ったら、『親をないがしろにするのね、へえ』と嫌味」

今思えば、母は兄一家に追い出されたという負い目があったのかもしれないとユミさんは言う。だから「置いてもらう」のではなく「来てやった」という体面を保ちたかったのではないだろうか、と。

「私に対して高飛車に出ることで、自分の存在価値を認めてほしいと思っていたのかもしれません。当時はそこまで思い至らないから、かわいくない年寄りだと心の中で思っていました」

ユミさんが「小屋」で仕事をしていても、勝手にドアを開けて「お昼ご飯はまだ?」と言う。お茶くらい自分でいれればいいのに、ユミさんがいれるまで待っている。仕事に集中して昼食を取り忘れることもあったのに、母がうるさくて気持ちが乱れた。

足腰も丈夫で元気な母は、落ち着くと地域のサークルなどに顔を出すようになった。

「母が家にいない時間があるとホッとしました。ところがあの性格ですから、あちこちでケンカしてくるみたいで……。帰ってくると人の悪口ばかり。聞いているとうんざりしてくるので、『お母さんにも悪いところがあるんじゃないの』と言ったら、抗議のハンスト。食べないんですよ。夫が心配して医者に行こうと声をかけたくらい。私が言うことを聞かないから、すねているだけなんですけどね。この年になっても親に支配されるなんてまっぴらですよね」

元気な母を預かってくれるのは高級な老人ホームだけだ。そんなお金はどこにもない。ユミさんは時間をかけて、どうしたら母が希望するような生活を送れるか話し合っていこうとしたが母はそれを拒絶。

2年経過し、それぞれのペースをつかんで暮らす

実母との同居体験談5

「あれから2年、最近、ようやく私も母に慣れてきたところですね。母も自分の朝食くらいは作るようになりました。サークル活動も、今はあまりケンカしなくなったみたい(笑)。夕飯は私が作ったものがイヤなら自分で作ってと突き放しています。たまには一緒にお茶くらい飲まないとかわいそうかなと思って、そういう時間をとるんですが、やっぱり最後は『おまえはもっと優しい子だと思っていたのに』と言われてムカッとくる。そんなことの繰り返しです」

老いて子のいいなりになる親を見るのもせつないが、老いてなお子を支配してくる母と一緒に暮らすのも大変である。

38年ぶりの同居生活、「本音を言えばしたくなかった。別に暮らしていた方が母には優しくできたと思います」とユミさんは言う。それでも今さら別居はできない。いつまでこんな暮らしが続くのだろうとユミさんは顔を曇らせた。

取材・文=亀山早苗

※本記事は2020年11月の記事を再配信したものです
 

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亀山早苗
亀山早苗

東京生まれ。明治大学卒業後、フリーランスのライターとして雑誌記事、書籍の執筆を手がける。おもな著書に『不倫の恋で苦しむ男たち』『復活不倫』『人はなぜ不倫をするのか』など。最新刊は小説『人生の秋に恋に落ちたら』。歌舞伎や落語が大好き、くまモンの熱烈ファンでもある。

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