もの忘れが増えてくる50代…見逃せないサインとは?

医師に聞く! MCI(軽度認知障害)を正しく知って、脳を守る

医師に聞く! MCI(軽度認知障害)を正しく知って、脳を守る

公開日:2026年05月29日

 医師に聞く! MCI(軽度認知障害)を正しく知って、脳を守る

物の名前が出てこなかったり、約束を忘れたり…。50代はもの忘れが気になってくる世代。だからこそ知っておきたいのが『認知症の分かれ道』と言われるMCI(軽度認知障害)についてです。将来の脳のために今できることを、認知症診療医に伺います。

今野裕之さん(ブレインケアクリニック名誉院長)
監修者
今野裕之
監修者 今野裕之 ブレインケアクリニック名誉院長

教えてくれた人:今野裕之(こんの・ひろゆき)さん


医療法人社団TLC医療会ブレインケアクリニック名誉院長、一般社団法人日本ブレインケア・認知症予防研究所所長、医学博士。順天堂大学大学院卒。老化予防・認知症予防を専門とする。日本大学附属板橋病院・薫風会山田病院などを経て2016年にブレインケアクリニックを開院。各種精神疾患や認知症の予防・治療に栄養療法やリコード法を取り入れ、患者一人一人に合わせた診療にあたる。著書に『最新栄養学でわかった!ボケない人の最強の食事術』(青春出版社刊)などがある。

MCI(軽度認知障害)は認知症の分かれ道

国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター発行「あたまとからだを元気にする MCIハンドブック」より

Q1.MCI(軽度認知障害)とはどういったものでしょうか?

A. 「脳の機能が健常な状態」と「認知症」の中間の段階をMCI(軽度認知障害)といいます。MCIは認知症と違い、若干の認知機能低下が見られるものの自立した生活を送ることができ、適切な対策によって健常な状態に戻る可能性があります。

現在は65歳以上の約8人に1人が認知症、約7人に1人がMCIといわれています。

Q2. 年齢を重ねれば、もの忘れが多くなるなどの変化は誰にでも起こると思います。「加齢によるもの忘れ」と「MCI」「認知症」は、具体的に何が違うのでしょうか?

A. 加齢によるもの忘れとMCI、認知症は似ている部分もあるので、見分けがつきにくい場合もあります。ただ、それぞれに原因や症状、進行の仕方などに違いはあります。

加齢によって脳の機能が衰えてきても、MCIの段階で対策を行えば、認知機能が改善したり、認知症の発症を遅らせられる可能性があります。

MCIは認知症との分かれ道。将来の脳の健康を守るためには、MCIの早期発見、早期対策が大切と言えるでしょう。

MCIのサインを見逃さないで

わたなべりょう / PIXTA

Q3. MCIや認知症への備えは何歳頃から意識するとよいのでしょうか?

A. 認知症と聞くと「自分はまだまだ先」と思いがちですが、脳は30 歳台をピークにだんだん萎縮していき、50歳頃から徐々に認知機能が低下すると言われています。
自立した生活を長く続けるカギは、脳の変化にいち早く気づくこと。まずは、以下のMCIのサインを確認してみましょう。

■MCIのサインチェックリスト

bee / PIXTA

<普段の生活で見られるサイン>
□何度も同じことを尋ねる
□物の名前が出にくくなった
□よく知っている人の名前がすぐ出てこない
□約束を忘れることが増えた
□前日食べたものを思い出せない
□新しい家電の使い方を覚えるのに時間がかかる
□意欲が低下して趣味や外出に消極的になった
□身だしなみに気を使わなくなった
□薬の服用を忘れる頻度が増えた

<家事で見られるサイン>
□部屋が散らかるようになった
□決まった料理ばかり作るようになった
□料理の味付けが以前と変わったと家族に言われる
□賞味期限切れの食べ物が増えた
□同じものを何度も買ってしまう
□請求書の支払いを忘れるなどお金の管理が難しくなった

<外出先で見られるサイン>
□仕事でミスが増えた
□突然電車の乗り継ぎがわからなくなったことがある

1つでも当てはまる場合は、脳の機能が低下してきている可能性があります。自分で対策できる今のうちに、MCIの対策を始めましょう。

50代から始めたい!脳を守る3つの対策と、脳を刺激する活動

タカス / PIXTA

Q4. 50代からのMCI対策で、まず意識したいことは?

A.糖尿病、高血圧、肥満(メタボリックシンドローム)、脂質異常症などの生活習慣病を遠ざけることです。生活習慣病は認知症と深くかかわっていて、これらの疾患があると、認知症のリスクが高まると報告されています。

  • 糖尿病……糖尿病の人は、血糖値が正常な人と比較して、約2.1倍アルツハイマー型認知症になりやすいことがわかっています。
  • 高血圧……40~64歳の中年期に高血圧の人は、高齢期に認知症になりやすく、血圧が高くなるほどその危険が高くなることがわかっています。
  • 肥満(メタボリックシンドローム)……中年期では肥満の人ほど認知症になりやすいことが多くの研究でわかっています。肥満の指標にはBMI(求め方:体重[kg]÷身長[m]÷身長[m])があり、日本人ではBMI25以上が肥満と定義されています。
  • 脂質異常症……中年期に総コレステロール値が高いと、認知症の中でも特にアルツハイマー型認知症を発症する危険性が高くなります。

健康診断などで生活習慣病のリスクを指摘されている人は、減塩(1日6g未満が目安)、バランスの良い食事、適度な運動などを心掛け、これらの病気を遠ざけていきましょう。

Q5. 脳によい栄養素もあると聞きます。身近なものだとどういったものがありますか?

 fotokuro / PIXTA

A.脳は酸化ストレスに弱いと考えられ、アルツハイマー型認知症患者では、脳内に酸化物が増加していることがわかっています。そのため野菜や果物、魚などの抗酸化、あるいは抗炎症作用をもつ食品や栄養素が、認知症発症予防に有効と考えられています。

ビタミンやミネラルなど必須栄養素以外の成分では、緑茶に含まれるカテキンや、ウコンに含まれるクルクミンなどのポリフェノール類の多くは抗酸化作用や抗炎症作用があるため、意識して摂りたい栄養素です。緑茶を毎日飲む、クルクミンを含むスパイスを食事に加えるといった習慣を意識すると良いでしょう。

また、一般的な食事に含まれていない成分ですが、ミツバチ産品のプロポリスにも抗酸化・抗炎症作用が報告されており、動物実験ではアルツハイマー型認知症の脳内に蓄積するタンパク質「アミロイドβ」による炎症を抑え、学習・記憶障害を抑制するといった結果が報告されています。

食事では、偏らずにいろいろな食品を食べている人(多様性の高い食事をしている人)ほど栄養状態が良く、認知機能低下が抑制されたという報告もあります。旬の味覚を取り入れるなどして、様々な食品を食べるように気をつけてみてください。

Q6. 認知症予防では運動も大切と聞きます。どんな運動をどれくらいするのがおすすめですか?

kou / PIXTA

A.運動は、有酸素運動と筋トレの組み合わせが効果的です。

有酸素運動はウォーキング、水泳、ダンス、ジョギング、サイクリングなどの中から自分に合うものを選びましょう。筋トレは、ジムで機器を用いて負荷をかけるような運動はもちろん、自分の体重を負荷にして行う自重運動などでもOK。自重運動はスクワットや腹筋運動などが取り組みやすいと思います。

運動の頻度はまず、「定期的な運動習慣」と呼ばれる週3回を目指しましょう。運動の量は、週合計2時間以上が一つの目安です。

高齢者を対象とした調査でも、定期的な運動習慣は認知症になる危険性を低くすることが報告されています。

定期的な運動をしている人は、していない人に比べて認知症発症リスクが31%低いことが示されています。また、ウォーキングよりハードな運動(早歩きなど)を週3回以上継続している人は、運動をしていない人に比べて50%も認知症発症リスクが低いことがわかっています。

運動をすることで脳の血流量が増加したり、神経細胞が増えるといわれますし、「神経栄養因子」と呼ばれるタンパク質が増え、脳の容積も大きくなることがわかっています。

簡単にできる運動でも、認知機能低下や認知症の予防につながりますし、生活習慣病の予防にも役立ちます。体力のある50代のうちに、運動を習慣にしておくのがおすすめですよ。

Q7. 脳の健康を守るために、他に日常生活で取り入れやすい活動はありますか?

Ushico / PIXTA

A.脳を刺激する活動を取り入れましょう。興味を持っていることなどを活かして頭と心を動かすのも、脳にとって良い刺激になります。

<脳を刺激する活動の例>
・トランプや脳トレゲーム
・外国語学習
・文章の音読
・暗算
・音楽(カラオケ・楽器を演奏する)
・創作活動(絵を描く、書道、編み物、金継ぎなど)
・囲碁、将棋、麻雀

こうした活動の中から「やってみたい」と思えることを始めてみるのもおすすめです。

今野さんは認知症予防についてこう話します。

「認知症の予防では、『これさえやれば大丈夫』というものはありません。食事や栄養に気を使い、運動する習慣を作る――。そうした日常での積み重ねが、脳の健康を支える唯一の方法です」(今野さん)

今の生活を維持し、自立した毎日をより長く続けるために、元気な50代のうちから脳を守る対策を始めていきましょう。

※文中の情報は2026年5月現在のものです。

■取材協力:山田養蜂場 健康科学研究所

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