海原純子さんが説く、幸福度を高める法則

年を重ねて「幸せな自分になる」ヒント

公開日:2023.05.17

38年前、日本で初めて女性の心と体を診療するクリニックを開設した海原純子さん。以来、心身にストレスを抱える人たちに寄り添い、ラクに幸せに生きる方法を伝えてきました。70代を迎えた海原さんに、「年を重ねて幸せになる」ヒントを伺いました。

海原純子(うみはら・じゅんこ)さんプロフィール

海原純子(うみはら・じゅんこ)さんプロフィール

1952(昭和27)年神奈川県生まれ。医学博士。心療内科医、産業医。昭和女子大学客員教授。19歳から24歳までクラブの専属歌手活動で生活費を捻出して東京慈恵会医科大学卒業。メジャーデビューするも医師となり音楽活動を封印。99年に活動再開。2019年にジャズアルバム「RONDO」、21年にコロナ禍で音楽と医療をつなげる試みとしてジャズアルバムとトークCDの2枚組「Then and Now」をリリース。

若々しさの秘訣は「新しいことへ挑戦」すること

若々しさの秘訣は「新しいことへ挑戦」すること

※インタビューは2022年4月に行いました。

いつまでも若々しくいたい……そう願う人は少なくありません。では「若々しさ」とは何でしょう? 体力など健康面のことを言っている人もいれば、肌や姿勢など外見のことを思い浮かべる人も多いでしょう。それらも若々しさのカギですが、「気持ちの若々しさがとても大事」と海原さんは語ります。

「気持ちの若々しさってどんなことかというと、『新しいことに挑戦できる』『失敗できる』それから『初心者になれる』、この3つだと思うんです。子どもって好奇心旺盛で毎日毎日、失敗しながら新しいことを学んでいきますよね。それが一番の若々しさです。

だけど年を取ると、自分の知っている範囲の中で物事を判断して行動しようとするから、いつも経験者で、想像力も好奇心も狭まってしまう。その一方で、経験や知恵を年を取るほどに熟成させて深めることができるんですね。それは若い人にはできないことです。

だから私たちの世代は、これまでしてきたことを熟成させる一方で、新しいことや自分が初心者であることもやってみる……深めるものと新しいものを両方持つと、すごく素敵な年の重ね方になるんじゃないかと思います」

「年だから」と、自分で自分にケリをつけないで

「年だから」と、自分で自分にケリをつけないで

そうは言っても、新しいことをするのは大変、と思われるかもしれません。海原さんは「小さなことでもいいんです」と話します。

「一番簡単なことだと、買い物をするときいつもと違うスーパーマーケットに行ってみる、いつもの道とはちょっと違う道を通ってみる。すると、そこでまた新しいものに出合ったりします。

私の場合は、仕事でも違う分野のことを少しずつ勉強したり、本を読んだりするし、音楽でも新しいピアノのコードを学んだりして、いつもちょっとずつ新しいことを取り入れています。実は知らないことってまだまだいっぱいありますから。

今はインターネットもあるので、活用してみると新しいことにたくさん出合えますよね。先日、ハルメクでオンライン講座をしたときは80代の方も参加されていて素晴らしいなと思いました。

新しいことをしようとすると、『もう年だから』と自らブレーキをかけてしまったり、『そんなことをして何になるの?』というまわりの声が聞こえてきたりするかもしれません。そんなときは自分で自分にけりをつけないでほしい。

もう年だから、と自分にレッテルを貼る人がよくいますが、そのとたんに“もう年の人”になってしまいます。レッテルを外して、自分を磨き続けることの素晴らしさを忘れないでいただきたいですね」

自分の老いを受け入れて生きることも大切

自分の老いを受け入れて生きることも大切

一方で、海原さんは「年を取ること、自分の老いを受け入れて生きていくことは、とても大変なことだと思う」と語ります。

「若い頃はいろんな未来の可能性があったけれど、年を取るにつれ未来がどんどんなくなっていくし、こうしたいと思っても、体が思うように動かなかったりするものです。だからといって終活をしていればいいかといえば、それも寂しいと思うんですね。

老いを受け入れて、自分なりに折り合いをつけながら、なお自分が今持っているものに目を向けて、そのときできることをやっていく。それが幸せに年を重ねる力になると思います」

どんな状況でも幸せに自分らしく生きるために「自分の持っている強みに気付いてほしい」と海原さんは言います。

自分の強みに気付いて磨きをかけて幸せ度をアップ!

自分の強みに気付いて磨きをかけて幸せ度をアップ!

「私には強みなんてない、と思うかもしれませんが、本当にそうでしょうか?ポジティブサイコロジーという心理学の分野では、人間の強みを30種類近く掲げています。例えば、きれいなものをきれいと感じる心は審美眼という強みの一つ。

あなたが花を見て、このピンク色がきれい、とふと感じたら、それは審美眼をお持ちなんです。まわりの風景、空、鳥、草花……きれいだなと思うものを写真に撮ってもいいし、絵に描いてもいいし、言葉にしてもいい。そうやって自分の強みを生かしていくと、心が元気になり、ストレスを受けても回復していくことができるとされています。

他にも、辛抱強くやり続ける忍耐力、思いやりや誠実さも強みです。これらはみなさんお持ちではないでしょうか。

そして好奇心。WEBサイトを見ようと思うのは好奇心ですから、みなさんお持ちだと思います。ふと、これをやってみようかなと思う、その『ふと』を大事にすることが、本当の自分らしさにつながります。『ふと』を大事にしながら、自分の強みに気付いて磨きをかけると、幸せ度は確実にアップしていくはずです」

海原さんには好きな昔話があります。

一人の老人が砂漠でナツメヤシの種を植えていると、そこを通りがかったお金持ちが「一生懸命植えても、その実がなるまでおじいさんは生きていませんよ」と言います。すると老人は、こう答えるのです。

「そんなことはわかっています。でも私も誰かが植えてくれたナツメヤシの実を食べて育ったんです」

「私たちの世代には、後の世代に何かを残したいという気持ちがあると思います。残すのは別に物じゃなくてもいい。こうして自分らしく素敵に年を重ねてきた、という生き方を伝えることも大事なのではないでしょうか」

幸せ度を高める2つの法則

幸せ度を高める2つの法則

3:1の法則

嫌な気持ちが1つ浮かんだらほっとすることを3つ見つける

最近のポジティブサイコロジーの研究では、ネガティブな気持ちが生まれたら、無理に否定しなくても、ポジティブなことを3つ見つければいいといわれています。「コーヒーがおいしい」「空がきれい」「猫をなでる」など小さなことでよいのです。

スローの法則

五感を使って、ゆっくりじっくりとその瞬間を味わう

五感を使ってゆっくりじっくりと物事を味わう充実感から生まれる楽しみは、心をポジティブにさせるといわれています。夜明けの空をゆっくり眺める、鳥のさえずりや雨音にじっくり耳を傾けるといった時間を一日の中に意識的につくりましょう。

取材・文=五十嵐香奈(ハルメク編集部) 撮影=高山浩数
※この記事は雑誌「ハルメク」2022年6月号を再編集、掲載しています。


【動画】海原純子さん:気にしすぎをやめる心の練習

「人に言われたことがいつまでも心にひっかかる」「予定通りにいかないとイライラする」――。そんな「気にしすぎ」な性格に苦しんでいませんか?「気にしすぎ」をやめるための心の整理の仕方や心をラクに、幸せに暮らすためのヒントをお伝えしていきます。

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