特集|岸惠子さんに学ぶ。「自分らしく生きる」心得

岸惠子さん「50代、60代これからが華という時代」

公開日:2021.06.15

更新日:2021.06.16

今の私だからこそ書けた大人の恋の物語です

今の私だからこそ書けた大人の恋の物語です

ーベストセラーとなった小説『わりなき恋』。パリを拠点に置く、国際的ドキュメンタリー作家・伊奈笙子(69歳)と、世界を股にかけて活躍する、妻子ある日本企業のエリート・九鬼兼太(58歳)の、6年にわたる大人の恋の物語です。『わりなき恋』に岸さんが込めた思いを伺いました。(雑誌「ハルメク」2013年8月号インタビューより)

『わりなき恋』を世に出して2か月がたちました。4年という歳月をかけて幾度も書き直したり、大幅に推敲したりしたので、まだ私の中には作品がどっしり居すわっています。何かをすんなり諦めたり、失敗からカラッと立ち直ることはできるのですが、自分が編み出したものはずっと芯に残ります。

今の日本では、テレビでも映画でも、若い人か年寄りの話が多いでしょう。若い人たちはかわいくて、スタイルがよくて、でも、みんな同じように見えてしまう。彼ら彼女たちが登場する物語は、それなりにいいものもあるけれど私には物足りません。

一方で、高齢者の話題になると一気に孤独死や人間の残骸かと思われるような映像ばかりが出てくる。そういう現実はあるにしても、それではあまりにも暗すぎる。人生の終盤に虹が立つような華やぎがあってもいいんじゃない?

男も女も、年齢とともに体も精神も変わっていくものです。そうした中で、若さから遠ざかった人たちにも、それなりの情熱があるはずだ。それを書いてみようと、思いました。

すばらしい作家はたくさんいらっしゃるけれど、私よりずっとお若い。これは長いこと生きてきて、しかも、世界の動きに身をさらしたことがある私だからこそ書けたという自負はあります。

恋に倫も不倫もない、私の人生そのものがモデル

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