エッセー作品「限界野菜」甲斐てい子さん
山本ふみこさんのエッセー講座 第9期第4回
エッセー作品「私だけのごちそう」高山美年子さん
随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクのエッセー講座。教室コース 第9期の参加者の作品から、山本さんが選んだエッセーをご紹介します。今月のテーマは「なぜ」です。高山美年子さんの作品「私だけのごちそう」と山本さんの講評です。
エッセー作品「私だけのごちそう」高山美年子さん
私だけのごちそう
食べ物の好き嫌いは千差万別である。
どんなに美味しいと勧められても、嫌いなものは嫌い。
逆に、皆がそっぽを向いても美味しいと思うものは譲れない。
そこには理由なんてないと思う。
(フ二ャ~となった瓦せんべいは、おいしいな)
そう思ったのは小学生の時だった。
子どもの私には、お土産でいただいた瓦せんべいへ興味が湧かなかった。
パリッとしていてビスケットのようでもあるが、薄くて甘くて茶色い。やっぱり苦手だ。
ところが数日が過ぎ、空腹だった私は、袋の中に残っていた瓦せんべいを、食べてみようと思ったのだ。
(おや?何かが違う。固くない。何?どうした?)
恐る恐る口に入れてみる。恐る恐る噛んでみる。
グニャ~としていて噛み切れない。でも、癖になる。美味しい。
この瓦せんべいを作った職人さんには失礼だが、パリッとしていなくて美味しい。
それから、瓦せんべいを見つけると、袋の口をゆるめに締めて充分湿気を吸わせる工夫をした。
もちろん、母にはみつかった。
「誰、袋の口をちゃんと締めないのは」
と。
(はいはい私です。美味しく育てている最中です)
と心の中で返事をした。
これまた実家でのはなしである。
冬になると、居間にはこたつと火鉢があった。
火鉢は暖を取るだけではなく、やかんで湯を沸かしたり、餅を焼いたり、するめをあぶったり、万能だ。
仕事終わりの義兄は、よく火鉢であさりを焼いたり豚足をあぶったりしていた。
酒のつまみを焼いて一杯飲んでいたのだ。
私はいつも話し相手になって、そのつまみをちゃっかり頂戴していた。
そのせいだろうか、大人になると、酒豪と呼ばれるようになっていた。
つまみをあぶっている横で、大好物の湿気た瓦せんべいをあぶってみた。
これが大正解だった。フニャ、がパリッとなる。
でも、本来のパリッとではなく芯のあるパリフニャになる。
これが、たまらなく美味しい。
義兄におすそ分けしようとしたが、ことわられた。
山本ふみこさんからひとこと
瓦せんべいを「美年子ver.」に育てるというくだり、おもしろいですね。さいごには、フニャ・パリッver.も登場して……、お見事です。
(やってみよう、食べてみよう)と思いました。おお、なんて素敵。
結びの1行、効いています。
山本ふみこさんのエッセー講座(教室コース)とは
随筆家の山本ふみこさんにエッセーの書き方を教わる人気の講座です。
月1本のペースで書いたエッセーに、山本さんから添削やアドバイスを受けられます。
募集については、今後 雑誌「ハルメク」誌上とハルメク365イベント予約サイトのページでご案内予定です。
■エッセー作品一覧■
ハルメク旅と講座
ハルメクならではのオリジナルイベントを企画・運営している部署、文化事業課。スタッフが日々面白いイベント作りのために奔走しています。人気イベント「あなたと歌うコンサート」や「たてもの散歩」など、年に約200本のイベントを開催。皆さんと会ってお話できるのを楽しみにしています♪
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