エッセー作品「限界野菜」甲斐てい子さん
通信制 山本ふみこさんのエッセー講座第3期第6回
エッセー作品「試される」栞子さん
随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から山本さんが選んだエッセーをご紹介します。今月の作品のテーマは「白いシャツ」です。栞子(しおりこ)さんの作品「試される」と山本さんの講評です。
エッセー作品「試される」栞子さん
試される
証明写真が必要になった。メールに添付して送るので、写真のデータを準備しなくてはならない。
この時点でこんがらがるほど、最近の諸々の手続きにうとくすごしてきた。
スマホはなんとか使えるし、検索はできる。というわけで、すぐに手順を調べるも、理解が追いつかず、結局近所の写真館へお世話になることとする。
今まで、ややこしそうなインターネットやスマホの手続きは全て家族だのみだった。
あとから説明をフンフンと聞くだけですごせてきたのに。
夫は単身赴任中、次男もこの春就職で家を出て、思いがけない生まれて初めての一人暮らしを進行中。
自ら解決するしかない。連絡すれば助けてくれるだろう家族も、皆一人で生活と向き合っている。
今回ばかりは誰にも頼らず、一人で立ち向かうことに決めたのだ。
ところでこの状況、一体何を試されているのか。
物事に直面すると考える。何かと大げさに受けとめがちなくせのようなものだ。
はりきって下調べしたわりに、早々とてっとり早い道を選んで写真館へと走る。
年末の混雑した店内をウロウロしていると、若い店員さんが声をかけてくれ、あっという間にカメラの前にすわることに。
十数年ぶりに写真館のお客となる。
「もう少し肩の力をぬいてみましょう。」
「体が左に傾いていますね、まっすぐに。」
「右の口角が少しさがりぎみなので、意識して引き上げてみましょうか。」
1枚の写真をとてもていねいに撮ってもらい、ややこしいと思っていた手続きまで教えてもらって無事に完了した。
助けてくれる人はいるのだ。声を上げなければ、何で困っているのかもわかってはもらえない。
今回の教訓。
苦手意識を持たず何でもまずはやってみること。いくつになっても、知識は増やせる。
これからの課題。
肩の力をぬくこと。体の傾きを意識すること。右の口角を上げること。
出来あがった写真は、自然な笑顔で、いつもよりやさしい顔にうつっていた。
山本ふみこさんからひとこと
共感しながら読みました。
「この状況、一体何を試されているのか」
「助けてくれる人はいるのだ。声を上げなければ、何で困っているのかわかってもらえない」
ほんとほんと、と思いました。
このような日常の、なんでもない状況をとり上げて書くと、そんな事ごとが決してなんでもなくはないのだということが浮き彫りになります。
ごく身近で描かれるのを待っているきらめきを見つけるのは、書き手の楽しみではないでしょうか。 ![]()
通信制 山本ふみこさんのエッセー講座とは
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。
現在第4期の講座開講中で、次回第5期の参加者の募集は、2022年6月に雑誌「ハルメク」6月号の誌上とハルメク旅と講座サイトで開始予定。
募集開始のご案内は、ハルメクWEBメールマガジンでもお送りします。ご登録は、こちらから。
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ハルメク旅と講座
ハルメクならではのオリジナルイベントを企画・運営している部署、文化事業課。スタッフが日々面白いイベント作りのために奔走しています。人気イベント「あなたと歌うコンサート」や「たてもの散歩」など、年に約200本のイベントを開催。皆さんと会ってお話できるのを楽しみにしています♪
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