階段がつらい、つまずく…は「ロコモ」のサインかも?

一生自分の足で歩くために、50代から始めるロコモ対策

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一生自分の足で歩くために、50代から始めるロコモ対策

階段がつらくなったり、ちょっとした段差でつまずいたり……。50代は、これまでになかった体の変化が気になり始める世代です。その陰に潜んでいるのが「ロコモ」のリスク。ずっと自分の足で歩くために、今から始めたい対策を医師の満尾正さんに伺いました。

先の話じゃない!50代は早めにロコモ対策を

​花咲かずなり / PIXTA

「ペットボトルの蓋が開けられなくなった」「片脚立ちで靴下をはこうとするとフラつく」など、身体機能の衰えを感じることはありませんか?

アンチエイジングに詳しい医師の満尾さんは、ハルメク世代の筋力や骨の変化についてこう解説します。

「筋肉量や筋力は30~40代頃から少しずつ低下し始め、50歳以降になるとその低下がより目立つようになります。また、骨密度も40代後半から徐々に低下していきます。特に女性は閉経後、女性ホルモン(エストロゲン)の減少によって骨密度の低下が加速するため、運動器の衰えが顕著になります」

運動器とは、骨や筋肉、関節、神経などが連携して体を支えたり動かしたりする「カラダを動かす器官」の総称。

「まだ大丈夫」と運動器の衰えを放置していると、知らないうちにロコモティブシンドローム(運動器症候群)が進行し、立つ・歩くといった日常動作が難しくなる可能性があります。そうなると、将来的な要介護リスクも高まることに…。

人生100年時代。ずっと自分の足で歩くために、早いうちからロコモ対策を始めましょう。

フレイルの要因の一つがロコモ、ロコモの要因の一つがサルコペニア

​elise / PIXTA

ロコモティブシンドローム(以下、ロコモ)は、加齢や運動不足、運動器疾患などによって移動機能が低下した状態ですが、同じような用語に「フレイル」と「サルコペニア」もあります。

まずはそれぞれどういう意味で、どう違うのか確認していきましょう。

■フレイル:虚弱・加齢による心身の衰え
フレイルとは、「加齢により心身が老い衰えた状態」のことで、「虚弱」を意味する英語「Frailty(フレイルティ)」が語源。要介護状態の前段階と位置付けられています。

「フレイルの特徴は、筋力や体力の低下といった身体機能の低下だけでなく、気分の落ち込みや意欲の低下など精神的・心理的な衰えも含まれることです。筋力の低下、栄養不足、慢性疾患、人との交流の減少、うつ状態など、複数の要因が重なって起こります」(満尾さん)

心身共に機能が低下することで、さまざまな社会生活上の不具合や健康障害を招き、要介護への危険度が高くなると言われています。

■ロコモ:運動器の障害
ロコモとは「ロコモティブシンドローム」の略で、「運動器の障害により移動機能が低下した状態」と定義されています。

移動機能とは、立つ、歩くといった動作のこと。つまりロコモとは、筋肉の衰えや関節の病気などによって、立ったり歩いたりしづらくなった状態をいいます。バランス能力の低下によって転倒しやすくなり、骨折して介護が必要となる危険性が高い状態もロコモです。

「加齢に加え、運動不足や肥満、痩せすぎ、骨粗鬆症、変形性膝関節症、腰部脊柱管狭窄症など、運動器の疾患も原因になります」(満尾さん)

日本整形外科学会では、ロコモを次の3段階に分けて定義しています。

  • ロコモ度1:筋力やバランス力が落ち、移動機能の低下が始まっている状態。
  • ロコモ度2:移動機能の低下が進み、自立した生活が困難になるリスクが高まっている状態。
  • ロコモ度3:移動機能がさらに低下し、社会参加に支障をきたしている状態。

ロコモ予防啓発のための任意団体「ロコモチャレンジ!推進協議会」の調査では、ロコモ度1に該当する人は50代女性で42.1%、60代女性では51.8%と報告されています。

「便利な移動手段の多い現代社会では、日常生活に支障はないと思っていても、実はロコモの状態になっていたり、すでに進行したりしているケースが少なくないので注意が必要です」(満尾さん)

■サルコペニア:筋肉量と筋力の低下
サルコペニアとは、筋肉量が減り、体の機能が低下した状態を指します。ギリシャ語で筋肉を意味する「サルコ(sarco)」と、喪失を意味する「ペニア(penia)」が由来です。

筋力が落ちて日常生活に影響が出ている状態で、例えば「握力が落ち、ペットボトルの蓋が開けられなくなった」「手すりがないと階段を上れない」などが症状として挙げられます。

「握力が低下している(男性28㎏未満、女性18㎏未満)、または歩行速度が1.0m/秒未満で、検査によって骨格筋量の低下が認められる場合、サルコペニアと診断されます」(満尾さん)

サルコペニアはロコモの原因の一つとなる状態で、加齢や運動不足、タンパク質不足、病気などによって筋肉量や筋力が低下することで起こるとされています。

この3つの用語は、似ているようで少しずつ違います。

「フレイルは心身全体の衰えを表す概念。ロコモは骨・関節・筋肉・神経など運動器の障害による移動機能の低下を表します。そしてサルコペニアは、筋肉量と筋力が低下した状態を指します。サルコペニアはロコモの大きな原因の一つであり、またロコモによって活動量が低下するとフレイルが進みやすくなるなど、この3つは互いに深く関係しているのです」(満尾さん)

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そして、この3つの状態の中で、50代女性が特に気を付けたいのが「ロコモ」です。

「フレイルやサルコペニアは主に高齢者で問題となりますが、ロコモは年齢にかかわらず起こり得ます。特に女性は更年期以降、女性ホルモンの減少によって骨密度が低下しやすくなる他、筋力やバランス能力も少しずつ衰えていきます。その結果、階段がつらい、つまずきやすいなど、気づかないうちに移動機能の衰えが進むことがあります」(満尾さん)

ロコモは早い段階で運動や栄養改善に取り組めば進行を抑えられる可能性があります。一方で、対策を行わず運動器の衰えが進むと、ロコモ度2・3へ進行し、将来的に要介護のリスクが高くなることが知られています。

まずは、以下のチェック項目を確認してみましょう。

​mono / PIXTA

<あなたは大丈夫?ロコモチェックリスト>
□片脚立ちで靴下がはけない
□家の中でつまずいたりすべったりする
□階段を上がるのに手すりが必要である
□家のやや重い仕事が困難である(掃除機の使用、布団の上げ下ろしなど)
□2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難である(1リットルの牛乳パック2個程度)
□15分くらい続けて歩くことができない
□横断歩道を青信号で渡りきれない

これらはすべて、骨や関節、筋肉などの運動器が衰えているサイン。1つでも当てはまればロコモの心配があります。

ただし、運動器は自分の意思で動かせ、鍛えられる器官です。該当する項目があった人はもちろん、該当する項目がなかった人も、健康な骨と筋肉を育てる対策で、ロコモの予防・改善に取り組んでいきましょう。

今日から始めたいロコモ対策3つの柱

​polkadot / PIXTA

ロコモの予防・改善の3つの柱は「栄養」「運動」「社会参加」です。

■対策1:必要な栄養をしっかり取ろう
体は毎日の食事をもとに作られています。主食・主菜・副菜のバランスの良い食事を、毎日3食きちんと取るよう心掛けましょう。

「特に取るべき栄養素はタンパク質です。筋肉のもとになるので、肉・魚・卵・大豆製品などを積極的に食べましょう」(満尾さん)

また、タンパク質と併せて、エネルギー源となる炭水化物や脂質も一緒に取ることが大切です。

「エネルギー不足になると、体は筋肉の中のタンパク質を使ってエネルギーを生み出そうとするので、結果的に筋肉が減ってしまいます。ごはんやパンといった主食も抜かずに食べましょう」(満尾さん)

さらに、骨を強くするにはカルシウムも不可欠です。乳製品(牛乳、ヨーグルトなど)、小魚・魚介類、大豆製品などを、1日3回の食事でこまめに取るのがポイントです。

「カルシウムを効率良く吸収するためには、ビタミンDやビタミンKも同時に取ることが大事です。ビタミンDは魚類やキノコ類、 ビタミンKは納豆や青菜などに多く含まれます」(満尾さん)

なお、筋肉と骨の健康維持では、ミツバチ産品のローヤルゼリーも注目されています。ローヤルゼリーは、骨の形成や筋肉に関わる細胞との関係について研究が進められており、さまざまな研究結果が報告されています。

■対策2:2つの運動を続けよう

​polkadot / PIXTA

日本整形外科学会では、ロコモの予防・改善につながる運動として、次の2つの運動を推奨しています。

◎バランス能力をつける「片脚立ち」

  1. 姿勢をまっすぐにして立った状態で、片脚を床につかない程度に上げます。
  2. 左右とも1分間で1セット。1日3セットを目指しましょう。

転倒しないように、必ずつかまるものがある場所で行うのがポイントです。

◎足腰の筋力をつける「スクワット」

  1. 足を肩幅に広げて立ちます。
  2. お尻を後ろに引くように、2~3秒間かけてゆっくりと膝を曲げ、ゆっくり元に戻ります。
  3. 5~6回で1セット、1日3セットが目安です。

膝がつま先から前に出ないようにするのがポイント。支えが必要な人は十分注意して、机に手をついて行いましょう。楽にできる人は回数やセット数を増やしてもOKです。

■対策3:前向きに社会と関わろう

​ヤナギ / PIXTA

「ロコモになると動くのが億劫になり、活動量が減ってしまいます。活動量が減ると食欲も出なくなり、十分な栄養を摂取できません。すると、体重や筋肉量がさらに減り、ロコモが進行してフレイルの状態になるリスクが高くなります。こういった悪循環を『フレイルサイクル』と呼びます」(満尾さん)

フレイルサイクルに陥らないためには、食事や運動の他に、自分から積極的に外に出て、前向きに社会に関わっていくことが大切。孤立すると人は精神的に落ち込み、気力を失ってしまいます。家族や友人とおしゃべりしたり、趣味を通じて人と交流を持ったり、ボランティアに参加したりなど、自分に合った活動を探してみましょう。

満尾さんは、「食事・運動・社会参加の3つの柱は、それぞれに影響し合っているので、どれか1つだけではなく、バランス良く生活の中に取り入れることが大切です」と話します。

家族や友人と楽しくおしゃべりしながら食事を取る、栄養補給に手軽な健康食品なども活用してみる、すき間時間に「片脚立ち」や「スクワット」をする――。そんなちょっとした行動がロコモ対策につながっていきます。

ロコモは早めに気づいて対策を始めれば改善が期待できます。一生、自分の足で元気に歩き、はつらつと暮らしていくために、ロコモのセルフチェックや対策の3つの柱をさっそく試してみてくださいね。

■取材協力:山田養蜂場 健康科学研究所

■監修者プロフィール:満尾正(みつお・ただし)さん​

満尾クリニック院長・医学博士。北海道大学医学部卒業。ハーバード大学外科代謝栄養研究室研究員、救急振興財団東京研修所主任教授を経た後、キレーション治療とアンチエイジングを中心としたクリニックを開設。日本キレーション協会代表、米国先端医療学会理事、日本抗加齢医学会評議員。「125歳まで元気に生きる(小学館)」「食べる投資(アチーブメント)」など著書多数。

HALMEK up編集部

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