エッセー作品「限界野菜」甲斐てい子さん
通信制 青木奈緖さんのエッセー講座第6期第1回
エッセー作品「母の庭」加藤三和さん
「家族」をテーマにしたエッセーの書き方を、エッセイストの青木奈緖さんに教わるハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から青木さんが選んだエッセーをご紹介します。加藤三和さんの作品「母の庭」と青木さんの講評です。
「母の庭」加藤三和さん
「母の庭」
草引きをした。少し暖かくなってきたかと思ったら、小さなスペースが青々としてきた。
庭と呼べるほどの場所ではなく、駐車スペースと花壇の間の土がむき出しの所だ。
そこをめがけて、草が一斉に生えてくる 。
ツンツンとスコップで根を起こして引いていった。
いつの間にか、草引きはいつもムキになってしまう。
母も「腰が痛い」「あー、腰が痛い」と言いながらよく庭の草を引いていた。
一昨年から母の具合が悪くなった。もう9年施設でお世話になっていた。
ずっと病んでいたけれど、とうとう主治医から、
「このまま弱っていくと思います。いつまでとはまだ言えませんが」
と話があった。それでも打てる手は打とうと検査を受けたり、入院もした。
丁度、コロナ禍であった。
もう長くないと言われても、帰省どころか面会すらできなくなった。
許可が出るのは病院へ行く時だけだった。
昨年の秋、主治医と施設との計らいで、看取りとして面会をさせてもらえた。
車に乗れるうちに、少しだけならと、外出の許可も出た。
もう自力で立てない母を車の助手席に乗せて、せめてもと自宅の周りをドライブした。
ほとんど言葉も出なかった母が庭の前に車を止めると、「なつかしいなぁ」、「よう草引きしたなぁ」とつぶやいた。
思い入れのある庭を見て、真っ先に思い出すのが草引きなのがなんとも母らしく思えた。
今年2月13日、母は88年の人生を閉じた。
亡くなった後、自宅に戻った。
思いを寄せてくれた最後の人を亡くした庭には、色あせてきた山茶花が精一杯咲いていた。
青木奈緖さんからひとこと
著者の気持ちを直接表現するのではなく、むしろ感情を抑えて、淡々と情景描写を重ねることでお母様を亡くされた悲しみが描かれています。「主を亡くした庭」にはなんとも言えない寂しさと余韻が漂うものですね。
タイトルも、簡潔でぴったりです。
ハルメクの通信制エッセー講座とは?
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回家族の思い出をエッセーに書き、講師で随筆家の青木奈緖さんから添削やアドバイスを受けます。講座の受講期間は半年間。
ハルメク365では、青木先生が選んだ作品と解説動画をどなたでもご覧になってお楽しみいただけます(毎月25日更新予定)。
■エッセー作品一覧■
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