エッセー作品「限界野菜」甲斐てい子さん
通信制 山本ふみこさんのエッセー講座第8期第3回
エッセー作品「おかずがおどる」横山利子さん
随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から山本さんが選んだエッセーをご紹介します。第8期3回目のテーマは「反面教師」。横山利子さんの作品「おかずがおどる」と山本さんの講評です。
「おかずがおどる」横山利子さん
おかずがおどる
息子が中学1年のときだった。朝、いつものように弁当を詰めたり目玉焼をつくったりとバタバタしていた。息子が入ってきて言う。
「弁当のおかず、おどるんだよ」
「え、なに」
と思ったが忙しさにかまけそのままスルーしてしまう。そして見直しも反省もせず同じように弁当をつくり続けた。玉子焼と鮭の焼いたもの、あとは茶色い煮物と梅干である。
変化したのは娘が中学に入ってから。娘はいち早く気づいたらしい。私に弁当をまかせてはダメだということに。「弁当はワタシがつくる」と宣言したのだ。
中学では友だち同士で机をくっつけてお昼を過ごしているらしい。みんなの弁当を見たり、友だちから聞いたりして知識を仕入れてきた。土、日にスーパーに行くときは必ずついてきて、これがいい、あれがいいとカゴに入れた。
私はそのころ頑なに冷凍食品を買わなかった。それなら手作りすればいいのだがそれもしなかった。食卓はいつも見映えも悪く、味も……。そして大方の家庭がそうではないことに気がついていなかった。
娘は友だちに味見させてもらった冷凍食品を「これおいしいんだよ」とカゴに入れる。おかずの仕切りにする色とりどりのアルミ箔。チェックや水玉模様もあった。弁当箱もかわいいものを買わされた。
朝、娘は出来上がったおかずを詰めていた。私はブロッコリーとホーレン草のおひたし担当である。娘は玉子焼も四角い玉子焼器で上手につくれるようになっていた。
私が息子の分の弁当を詰めていると「お母さん、そんなにゆるゆるではダメだよ。おかずとご飯が混ざっちゃうよ。ワタシ、お兄ちゃんのもつくるから」と言い、それから娘は兄の分まで弁当をつくり、それは高校卒業まで続いた。
お盆や正月に家族が集まると必ずこの話が出るのだ。
「母さんの弁当ヒドかったな。おまけにおかずが飛び跳ねてさ。でもミーコ(妹)がつくってくれるようになってほっとしたよ」
と兄ちゃん。
私の料理苦手は何年経っても良くなることがない。
娘は、私を反面教師としたのだろうか。結婚と同時に仕事を辞め、50代になった今も専業主婦一直線で夫と2人の子の弁当作りに日日工夫しているようである。
山本ふみこさんからひとこと
このたびの課題「反面教師」に対して、自らを反面教師の立場に置いた書き手は少なかったのです。
「横山利子」はきっぱり反面教師になってみせましたね。
潔さにこころをつかまれました。
タイトルもうまい!
そうしてなんて素敵なご家族でしょう。
これが自然に伝わりますね。
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通信制 山本ふみこさんのエッセー講座とは
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。
次回募集については、2024年8月頃、雑誌「ハルメク」誌上とハルメク365イベント予約サイトのページでご案内予定です。
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