エッセー作品「限界野菜」甲斐てい子さん
通信制 山本ふみこさんのエッセー講座第8期第4回
「枯れ葉のような虫」佐々木はとみさん
随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から山本さんが選んだエッセーをご紹介します。第8期4回目のテーマは「あれ?」。佐々木はとみさんの作品「枯れ葉のような虫」と山本さんの講評です。
「枯れ葉のような虫」佐々木はとみさん
枯れ葉のような虫
昨年の7月1日。朝刊を取りに行くと、ポスト近くの塀に枯れ葉が付いていた。しかし、塀に顔を近づけてよく見ると、えっ、大きな虫? 触らずにそのまま家に入る。
何となく気になり、スマホを持ち、玄関先の塀を見るとまだいたので、写真を撮った。
家の中へ戻り、写真を見ながら、「枯れ葉のような虫」と調べた。枯れ葉のような蛾が何種類もいることがわかった。自分で撮った写真をもう一度よく見ると、2匹くっついている蛾のようだ。さらに調べてみると、それは「モモスズメ」の交尾だった。夜行性と書いてあったので、日中は動かないかな? と思いながらも、洗濯が終わった後にも、掃除が終わった後にも、そーっと見にいった。お昼ご飯を食べた後に見にいった時にもまだ動かずに止まっていた。
掃除をしながらふと思った……。
きっと、剛(亡き次男)が彼女を連れて帰ってきたのだなーと。もう22歳だからね。
その後、買い物へ出かけて帰ってきた時には、モモスズメはいなくなっていた。
なんだかちょっと、淋しくなった。
ある日、洗濯物を取りこんでいたら、服に天道虫がくっついていた。きっと、剛が帰ってきたと思う。
ある日、庭の水やりをしていた時には、蝶が飛んできた。あっ! 剛が帰ってきたと思う。
夏には、蝉が家の塀で「ミーン、ミーン」とうるさく鳴いていた時に、剛は小さいときに「お母さん、お母さん」とうるさかったと思い出し、帰ってきたとアピールしているな! と思う。
そんなふうだから……、淋しくないよ。大丈夫。
でも、今度はいつ帰ってきてくれるだろう。楽しみに待っている……。
山本ふみこさんからひとこと
触らずにそのまま家に入る。
そーっと見に行った。
なんだかちょっと、淋しくなった。
淋しくないよ。大丈夫。
この4センテンスは本作を支える情景描写です。
効いています。
なんでもないように見えていて、じつは少しもなんでもなくない要(かなめ)。作者が立ちどまって観察したことで生まれた4場面です。観察したのは、目の前で起きていることだけではありません。自らの胸のうちも、ていねいに。
剛さん、たびたびお母さまのもとに帰ってこられるのですね。守っておられるのですね。
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通信制 山本ふみこさんのエッセー講座とは
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。
現在、次回9期のご参加者を募集しています。(抽選制)
詳しくは雑誌「ハルメク」9月号、またはハルメク365イベント予約ページをご覧ください。
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