家好き・旅行嫌いの私が50代で「行けるうちに行こう」と思えた3冊
人間って怖い。でも私も?50代主婦が読む手を止められなかった小説3選
噂する人の残酷さにゾッとしたはずが、「もしかして私も?」とドキッとする。母の愛と執着、人の欲望や本性にも心を揺さぶられて――。50代の本好き主婦が、秋の夜長に夢中で読みふけった小説3冊を紹介します。
INDEX
噂を楽しむ私も「怖い側」だった? 『ファイア・ドーム』辻村深月・著

「あの誘拐事件の“ほんとうの話”、聞いた?」(上巻帯より引用)
「ここだけの話」「本当の話」。そんな言葉に身を乗り出して噂を聞いてきた自分が、後ろめたくなりました。
25年前に起きた百貨店受付嬢の誘拐殺人事件。被害者家族について流れた噂は、少しずつ事実を変えながら、いつしか「本当にあったこと」のように広がり、次の事件へとつながっていきます。
「どうして、そんなふうに事実と変わってしまうの?」
そう思いながらも、噂によって人生を狂わされた人たちの誤解がとけるのか、その先が気になり、ページをめくる手が止まりませんでした。
「噂は、軽薄で残酷な娯楽だ」(下巻帯より引用)
この言葉にドキッとしました。
噂を流す人の無責任さや怖さばかりに目を向けていたけれど、「本当はどうだったの?」と知りたくなる私自身も、噂を消費する側なのかもしれない。そんな人間心理の複雑さと、噂に翻弄される人々の切なさに胸が苦しくなりました。
上下巻の大作ですが、最後は「読んでよかった」の一言。秋の夜長に没頭したい小説です。
母の愛はどこから執着になる? 『人魚の眠る家』東野圭吾・著

東野圭吾さんの訃報を聞いて、真っ先に思い出した一冊です。再読して、やっぱり涙が止まりませんでした。
プール事故で娘が「脳死に近い状態」になった夫婦。母親は、夫の会社が研究する最新技術を使い、娘を自宅で看る生活を選びます。
装置を付けた娘は車いすに座り、時には笑顔のように見える表情を見せることも。
高額な費用をかけて回復の見込みがない娘を生かし続けていいのだろうか。
「……子供のために狂えるのは母親だけなの」(本文より引用)
終盤のこの言葉からの結末に、号泣してしまいました。
若い頃に読んでいたら、「そこまでして生かし続けるの?」ともっと冷静に見ていたかもしれません。でも50代になった今は、正しいか間違っているかでは割り切れない母親の気持ちに強く引っ張られました。
愛しているから手放せない。
娘を失いたくないと願う母親の愛は、執着なのか。読み終えても、私はまだ答えを出せません。
東野圭吾さんの作家デビュー30周年記念作品。私の中では、東野圭吾作品のベスト3に入る一冊です。
欲望の先で真実が覆る『ハウスメイド』フリーダ・マクファデン・著、高橋知子・訳
高額な報酬。夢のような豪邸。感じのいい奥様。
刑務所から出たばかりの主人公ミリーにとって、ハウスメイドは願ってもない仕事です。
ところが、与えられた寝室は鍵が外側についている屋根裏部屋。奥様は次第に不安定になり、ミリーをかばってくれるのが、ハンサムで優しい旦那様で、次第に……。
「えー、お決まりすぎませんか?」と思った矢先、物語が大転換します。
きっとこういう展開になるだろう、という思い込みが、そこにあった伏線を丸ごと見逃してしまった。その歯がゆさもこの作品の面白さでした。
何も考えずにただ先を知りたくてドキドキしながらページをめくる。読み進めるほど、それぞれが抱える欲望も見えてきます。 そんな振り回される読書は、がんばる毎日からの最高の気分転換になります。
そしてこの作品は単なるどんでん返しのミステリーではなく、最後には友情や親子愛も見えてくるところが印象に残りました。
非日常に全振りする贅沢時間。同世代におすすめしたい一冊です。
まいこ
4人の子を育てる専業主婦から、実母の介護と看取りを経て、資格取得など迷走しながら50代からSNSに挑戦。Instagram(@maiko_books)で「50代読書主婦の惚れる言葉に出会える本紹介&選書」をテーマに、がんばる女性を応援する本や書店の売れ本情報を紹介している。
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