特別連載〜こころがたり 花の来た道〜

横山タカ子さん第2回|母から娘へ受け継がれるきもの

雑誌「ハルメク」

「ハルメク」で2018年5月号から『信州・四季の手遊び』を連載中の料理研究家・横山タカ子さん。9月5日放送の『梅沢富美男のズバッと聞きます!』に出演、反響を呼びました。特別に雑誌記事からインタビューをお届けします。今回は、きもののお話です。

横山タカ子さんの着物
義母が遺したきものを娘の真知子さんと広げる横山さん。「これ、私に譲って」(真知子さん)、「もうちょっと私に使わせて」(横山さん)。きもの好きな母と娘にとって、幸せなひとときです。
【目次】
  1. 2人の母が 遺したきもの
  2. 100年物の もんぺで庭仕事
  3. 虫食いのきものを 着続けてくれた娘

2人の母が 遺したきもの

料理研究家・横山タカ子さんは「年に300日は、きもの」と言うほど、きものを普段着に過ごしています。

洋服が一般的になった今、あえてきものを着続けるのには実母と義母、2人の母が遺したきものを受け継ぎたいという思いがあるから。

その思いは今、娘さんへと引き継がれています。

 

取材や講演、イベントなどで全国各地を身軽に駆け回る横山さん。時には長時間のフライトで海外へ、ということもあるのですが、装いはいつも決まってきもの姿です。

「きものは苦しくて疲れそう、なんて思われがちですが、実際はその逆。夏は涼しく冬は暖かいし、帯は体幹を支えてくれるので体がラク。この年齢になって、余計にきものから離れられなくなりました」

横山さんは40年近く、ほぼ毎日きもので暮らしています。寝るときは、パジャマではなく浴衣。妊娠中もずっときもので過ごしていたそう。結婚前、OL時代は洋服派だった横山さんがきもの派に転じたきっかけは、実母と義母、2人の母からたくさんのきものを受け継いだことでした。

2人の母ともに毎日さらりときものを自分で着付け、日常的にその姿を目にしていたという横山さん。誰に教わったわけでもなく、自然ときものの着方は身についていたと言います。「特に『着てみなさい』なんて母たちから言われたことはありません。『こんなに美しいきものがたくさんあるなら、もったいないから着なくちゃ』と、単純に自分からそう思ったんです」

2人の母亡き後、受け継いだきものは、留袖、付け下げ、紬、銘仙など合わせてたんす1棹分。義母のさかゑさんは無地や落ち着いた色み、実母の安子さんは銘仙など派手な色柄が好み。横山さんは「きものを見れば、どちらの母のものなのかすぐにわかるんですよ」と笑います。

横山タカ子さんの着物
「きものを着るのが気恥ずかしい人は、まずは家に親しい人をお招きするときに着てみるといい練習になります」と横山さん。着ているのは、旅行先のタイで2万円ほどで仕立てたきもの。
横山タカ子さんの着物
銘仙好きだった実母のきもの。「若い頃はよく着ましたが、今は娘にバトンタッチしました」(横山さん)

 

100年物の もんぺで庭仕事

横山タカ子さんの着物
きものの上からもんぺをはいて、料理に使うホオバを取りに、中庭へ。

 

着付けでハードルを高く感じがちなのが「帯」。横山さんは滑りやすい前結び用の帯板を使い、鏡で見ながら前で結んでくるりと後ろに回すのだそう。「作り帯にすると日によって結び方を変えられないし、私は体にあまりなじまないんです」。シュッシュッと帯を結ぶ音がテンポよく響き、10分で着付けは完了。

「みなさんがきものを『大変なもの』と思うのは、美容院のきちんとした着付けの印象があるからでしょうね。日常着としてのきものは、型にはまることなく、自分が心地よく着られればいいんですよ」

庭仕事をするときも、もちろんきものです。いつものきものの裾をサッとたくし上げ、上からもんぺをはきます。愛用のもんぺは義祖母から譲り受けたなんと100年近い年代物です。ところどころ見える継ぎはぎの跡に、代々の横山家の女性たちの働きぶりがうかがえます。

このように受け継がれてきた横山家のきものは、横山さんから娘の真知子さん(47歳)、そして孫たちへと継承されています。

「10代の頃は穴のあいたデニムをはいて、ずいぶんパンキッシュな格好をしていた」という真知子さん。「どんなに奇抜な服装をしていても、母は何も言いませんでした。もちろん『きものを着てみたら』なんてこともなし」

 

虫食いのきものを 着続けてくれた娘

横山タカ子さんの着物
横山さんが嫁ぐ際に持ってきたウールのきもの。虫が食った穴を、真知子さんは小花の刺繍で繕って着ています。
横山タカ子さんの着物
汗ジミのある白い半襟は、真知子さんがミシンで刺繍。「アクセントにもなってかわいいでしょ」(真知子さん)

 

真知子さんの転機は、海外留学中の出来事でした。

「他の国の友人たちが自国の民族衣装を着て解説をしてくれたのに、私はきものを着られないし、何も知識がなかった。情けなかったですね」

一念発起し、母である横山さんのきもの姿を見て着付けを覚え、祖母たちが遺したきものや帯、小物を並べては色柄合わせのセンスを磨きました。今では、地元新聞できものの魅力を発信する連載を担当するほどに。古くなってほつれたり穴があいたりしたきものを刺繍でおしゃれに繕う方法や、色柄の大胆な合わせ方などを提案し、連載は若者を中心に人気を集めています。

「代々受け継いだきものをアレンジして着こなすという愉しみ方は、娘に教えてもらうことが多い」と横山さん。横山さんがお嫁入りのときに持ってきた虫食いのあるウールのきものを真知子さんが小花の刺繍を施して着ているのを見たときは「私の思い出を大事に着続けようとしているその姿勢がうれしかったの」と振り返ります。

 中学生と高校生の孫2人も、真知子さんの着付けを見よう見まねで覚え、お正月や桃の節句にはすすんできものを着ているのだそう。3世代がきもの姿でそろい、華やぐ横山家のお正月。横山さんは「みんなどんなきものを選ぶのか楽しみね」と目を細めます。

 

横山タカ子さんの着物
黒紫の留袖は、もともとターコイズブルーだったもの。「年齢的に似合わなくなったので染め直して、今はお出掛け用に活躍しています」(横山さん)
きもの姿の母と娘のツーショットは、外国人旅行者の多い長野市内では注目を集め、声を掛けられることも。「突然着付けのアドバイスをくださる方もいて、びっくりしますが、ありがたいです(笑)」(真知子さん)

 

横山タカ子さんのプロフィール

よこやま・たかこ

1948(昭和23)年、長野県大町市生まれ。長野の郷土食の知恵を生かした家庭料理や保存食を提案。NHK「きょうの料理」などテレビ・ラジオで活躍。年300日は着物で暮らし、古き良き生活の知恵を取り入れたライフスタイルも人気を集めている。新著に『信州四季暮らし』(地球丸刊)など。

 

取材・文=小林美香(ハルメク編集部) 撮影=安部まゆみ

※この記事は、「ハルメク」2017年12月号で掲載された『こころがたり花の来た道 料理研究家 横山タカ子さん』を再編集、掲載しています。

雑誌「ハルメク」について、詳しくはこちら

 

もっと、横山タカ子さんを知りたい方へ

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連載担当者の執筆する、編集部コラムでも横山タカ子さんについてご紹介しています。

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創刊22年目、50代以上の女性誌売り上げNo.1の生活実用情報誌。前向きに明るく生きるために、本当に価値がある情報をお届けします。健康、料理、おしゃれ、お金、著名人のインタビューなど、幅広い情報が満載。年間定期購読誌で自宅に直接配送します。https://magazine.halmek.co.jp/

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