公開日:2022/07/20
「50代からの女性のための人生相談」は読者のお悩みに専門家が回答するQ&A連載。今回は61歳女性の「元気な93歳の母のために今からできる、今後の備え」についての悩みに、介護・暮らしジャーナリスト、太田差惠子さんが回答します。
実母(93歳)、夫と私(ともに61歳)の同居3人家族です。
現在母は、年相応のもの忘れ程度で認知症の症状もなく、食欲もあり元気です。ただ、最近「圧迫骨折で腰が痛い」と言い、めんどくさがって外出を嫌がります。
外出が減ってしまったので、足腰の衰弱が心配です。
今後、どのような状態で老いていくのか想像できませんが、介護の認定手続きのタイミングや、住宅介護や施設介護の費用、相談窓口について、そろそろ知っておくべきかな?と感じています。
今後の備えのために、どのように動き出せばいいかわかりません。
(61歳女性・まこさん)
93歳のお母様は、腰痛などはあるものの、自立した生活を送っておられるようですね。素晴らしいことです。
しかし、このところ外出が減っており、心身機能の低下を心配され、「介護の準備」について、行動を開始するタイミングについてのご相談です。
93歳という年齢と足腰の痛みのことを考え合わせると、そろそろ介護保険の申請を検討してもいいタイミングだと思います。
一度、最寄りの「地域包括支援センター」で相談してみましょう。地域包括支援センターは、住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるように、高齢者本人や家族からの相談に対応する公的な機関です。
住所地ごとに管轄が決まっているので、役所に住所を伝えて担当のセンターの所在地を教えてもらいましょう。相談は無料です。
できれば、お母様ご本人と一緒に地域包括支援センターに行ってみましょう。
お母様が行くことを拒むようなら、センターのスタッフに自宅まで来てもらうこともできます。
もし、センターのスタッフが「まだ介護保険の申請は不要」と判断しても、要支援・要介護になることを予防するためのサービス利用について提案してくれる場合もあります。体操教室や日中に集うサロンを実施する自治体は多いです。
また、介護保険の申請をしなくても、日帰りで介護を受けられるデイサービスや、住まいの危険な場所に手すりを付けたり、段差を撤去したりする住宅改修などを利用できるところもあります。
介護保険を申請して認定がなされれば、さらに幅広いサービスを利用できるようになります。
将来的に、高齢者施設へ入居することも想定しているなら、少しずつ情報収集を始めましょう。
地域にある高齢者施設に直接電話をして「見学させてください」と見学予約を取ってから訪れましょう。実際に見て、施設のスタッフと話してみることで、施設とはどういうところかイメージができるようになります。
施設によっては、昼食の試食をできるところもあります。もちろん、入居費用についての説明も受けられます。
差し迫っていない段階での見学は、焦らず冷静な目で見ることができる利点があります。複数の施設を見学し、比較してみてください。
在宅から施設に移るタイミングに正解はないものの、まこさんご家族にとってベストなタイミングが見えてくると思います。
おおた・さえこ 介護・暮らしジャーナリスト、NPO法人パオッコ理事長、AFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)。京都市生まれ。1993年頃より老親介護の現場を取材。取材活動より得た豊富な事例をもとに「遠距離介護」「仕事と介護の両立」「介護とお金」 等の視点でさまざまなメディアを通して情報を発信する。著書に『親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと』(翔泳社)など多数。最新刊は『子どもに迷惑をかけない・かけられない!60代からの介護・お金・暮らし』(翔泳社)。
構成:石丸繭子(ハルメクWEB)
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