公開日:2022/05/18
「50代からの女性のための人生相談」は、読者のお悩みに専門家が回答するQ&A連載。今回は52歳女性の「離れて暮らす親の介護」についてのお悩みに、介護・暮らしジャーナリスト、太田差惠子さんが回答します。
父88歳、母84歳。共に要介護2ですが、自宅介護を希望しています。
両親と同居している姉は父と仲が悪く、また金銭感覚がルーズです。
私もなるべく頻繁に見に行きたいですが、仕事をしながら貯金を切り崩して生活しているため、週に一度が限界です。なんとかしなくてはと思うのですが、理想形がわかりません。
どのように計画して進めていけばいいか、道筋を教えてほしいです。
(52歳女性・にこにこくにこさん)
要介護2のご両親は、にこにこくにこさんの姉と3人暮らしなのですね。しかし、姉と父親が不仲……ご心配ですね。
にこにこくにこさんが、こんなふうに悩んでおられるということは、「姉」のことをあまり信頼できないということなのかもしれません。
お悩みの文面だけではわかりませんが、ご両親は介護保険のサービスを利用されているでしょうか。サービスを利用されていると仮定し、担当のケアマネジャーとの窓口は姉が担っておられますか。
もし、姉に対し「頼りにならない」「任せられない」という思いがあるなら、にこにこくにこさんがキーパーソンになってはいかがでしょう。
介護の現場では家族側の責任者のことを、「主たる介護者」とか、「キーパーソン」と呼びます。厳格な定義があるわけではありませんが、ざっくり下記のような意味で使われています。
要介護者のそばで、身体的・精神的なケアを行う人
本人や家族間の意見を調整し、医療や介護の専門職との窓口になる人。本人の判断力が不十分な場合は、代わって決断する人
平たく言えば、主たる介護者は「中心になって介護する人」、キーパーソンは「大事なことを決める人」という感じです。
比較的、元気な配偶者や子どもと同居している場合は、その者が担うケースが一般的です。けれども、負担が集中しないよう、同居家族がいてもキーパーソンを別居の子が担うというやり方もあります。
今の時代、体の弱った親の一人暮らしも多いので、キーパーソンのみで主たる介護者は不在というパターンも珍しくありません。
姉が気分を害さないように、言葉を選びながら提案してみましょう。「お姉ちゃんにばかり負担をかけるのは申し訳ないから『キーパーソン』は任せて」と。「医師やケアマネさんとのやりとりは、私が担うよ」の方がわかりやすいかもしれませんね。
現在、通院はご両親だけでできているでしょうか。もしそうなら、月に1回くらいは同行し、心身の状況を聞くと、現状を把握でき、今後も相談がしやすくなります。
一方、介護の方はケアマネジャーが月に1回は自宅を訪問してくれていると思います。そのときに顔合わせを。窓口役なら、直接やりとりできるので、姉を挟むより時間調整がスムーズです。そして、親にとって、必要なサービスを入れることができます。
ケアマネジャーには、ざっくばらんに家族の現状を伝えておきましょう。姉と父親が不仲であることも言っておくと、様子を見守ってくれると思います。あまりに仲が悪いようなら、要介護度が進むと施設介護も選択肢となるかもしれません。そのときも、にこにこくにこさんがキーパーソンになっている方が、話が早いでしょう。
現在、「仕事をしながら貯金を切り崩して生活」とのこと。ケアマネジャーにはそのことも話しましょう。そうすれば、にこにこくにこさんの負担を軽減できるように介護サービスをプランニングしてくれるでしょう。通いの回数を減らすこともできるかもしれません。
どうか、あまり無理をし過ぎないでください。いずれ自分自身にも老後はやってきます。そのために、体力とお金を残しておくことは大切です。世の中、“不仲な親子”は少なくありませんし、これまでにケアマネジャーも対応したことがあると思います。うまく支えていく方法を一緒に考えてくれるでしょう。
ただし、中には、“打てば響く”の逆をいくケアマネジャーもいます。そんなときは、ケアマネジャーは変更可能なので別の人にお願いすることも検討を。その場合は、地域包括支援センターで相談してみてください。
おおた・さえこ 介護・暮らしジャーナリスト、NPO法人パオッコ理事長、AFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)。京都市生まれ。1993年頃より老親介護の現場を取材。取材活動より得た豊富な事例をもとに「遠距離介護」「仕事と介護の両立」「介護とお金」 等の視点でさまざまなメディアを通して情報を発信する。著書に『親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと』(翔泳社)など多数。最新刊は『子どもに迷惑をかけない・かけられない!60代からの介護・お金・暮らし』(翔泳社)。
構成:渡邊詩織(ハルメクWEB)
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