公開日:2021/12/15
「50代からの女性のための人生相談」は、読者のお悩みに専門家が回答するQ&A連載。今回は62歳女性の「入院中の母親の今後」についてのお悩みに、介護・暮らしジャーナリスト、太田差惠子さんが回答します。
入院中の母の今後のことについて。
母は一人暮らしをしていました。これから退院しても、入院前のように母一人で生活するのは難しい状況です。
きょうだいは知らん顔をしていて、私一人の負担が大きいです。
病院にはいつまでも置いてもらえず、退院しても行き先がない。どうしたものでしょうか。
(62歳女性・JYさん)
お一人暮らしの母親が入院。退院後の生活についてのお悩みですね。
JYさんの言う通り、いつまでも病院で入院を続けることはできません。早い段階で、退院の話が出てきます。
これまで介護保険を利用しておられなかった場合は、主治医に確認の上、入院中に申請しましょう。親の暮らす地域を管轄する地域包括支援センターか、役所の介護保険課で手続きします。
その上で、今後の行き先としては大きく3つの選択肢があります。どの程度、母親が身の回りのことをできるか、できないかによって検討しましょう。
何とか身の回りのことをできる程度に回復されているなら、1が第一候補だと思います。在宅に戻ってもらい、介護保険の居宅サービスを利用します。
場合によっては、介護保険の住宅改修サービスを使い、退院前に、玄関や水回りに手すりを付けるなど工事をすれば安心感は高まります。
ただ、同居家族もいないし、「母親一人ではムリ!」という状況なら、2か3を検討しましょう。
一般的に、急性期の症状が安定すると退院となりますが、例えば脳血管疾患などでリハビリが必要であれば「回復期リハビリテーション病棟」に転院できます。
その他、自宅に安心して戻れるように支援する「地域包括ケア病棟」というところもあります。「回復期リハビリテーション病棟」の入院条件は細かく決められているのに対し、「地域包括ケア病棟」は医師が認め、空きがあれば最長60日間入院できます。
いずれも、転院を希望する場合は、主治医や病院の医療ソーシャルワーカーに相談してみましょう。
一方、3の施設入居ですが、特別養護老人ホーム(特養)などの公的な施設にすぐに、というのは難しいと思います。かと言って民間の有料老人ホームを急いで探すと失敗しかねません。
ここは冷静に、いったん「老人保健施設」という介護保険施設への入居を検討してはどうでしょう。
施設といっても3か月ほどの期間限定の入居で、リハビリを受けて自宅に戻ることを支援するところです。特養と同様の公的な施設ですが、短期間だけ入居するところなので、待機者はそれほど多くなく、比較的スムーズに入居できると思います。
2や3を選択すると、2~3か月程度の時間を稼げるので、その間に、親の状態は回復するかもしれません。
それでも一人暮らしが難しそうなケースでは、その間に家族で介護する体制を築いたり、あるいは本格的な施設入居を検討したりするといいでしょう。
きょうだいは知らん顔をしておられるとのことですが、今後の方向性について話し合えればベターです。
話し合いが難しい場合も、「家族での介護は困難だから施設を探します」など、メールや手紙などで大切なことは報告しておくことをおすすめします。あとから、「勝手なことをして」などと責められたり、「好きで介護してるんだろ」と言われたりすることを避けるためです。
手を出さないけれど、口だけは出す“きょうだい”もいるので(特にお金が絡む場合は)注意が必要です。
おおた・さえこ 介護・暮らしジャーナリスト、NPO法人パオッコ理事長、AFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定)。京都市生まれ。1993年頃より老親介護の現場を取材。取材活動より得た豊富な事例をもとに「遠距離介護」「仕事と介護の両立」「介護とお金」 等の視点でさまざまなメディアを通して情報を発信する。著書に『親が倒れた!親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと』(翔泳社)など多数。最新刊は『子どもに迷惑をかけない・かけられない!60代からの介護・お金・暮らし』(翔泳社)。
構成:渡邊詩織(ハルメクWEB)
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